冬の社交界の始まり
お茶会は情報交換をしたり・・婚活の場で有ったりもする・・らしい(≧▽≦)
この国の麗しの貴人が集まって、オホホウフフと笑いさざめいている。
今日も今日とて、聖女様のオマケとして宴会?いやいやお茶会に招かれているのだが、本日のお茶会は以前開催されたホールではなかった。
なんと!贅沢にもお茶会室と言う専門の部屋が有るのだそうなのだ、本日のイベントは其処で開催されている。ホールよりも狭いが、十分広い所だ・・参加人数も以前よりも少ないし。今日は上位の貴族しか招かれないらしい、王室主催のお茶会だからだそうで、公爵・侯爵・辺境伯爵ぐらいまでかな?よく知らんが女官長がそんな事を言っていたような記憶が微かにする。
しかし・・参加者の貴族の小父さん・小母さん達の横幅が半端ない。
もしもし、小父さんの肩パット、アメリカンフットボール顔負けの幅ですよ?
英王室の何だっけ?王妃様をとっかえひっかえした挙句、死刑にしたあの王様?あの時代の服に似ている。でもチ〇コピースはしていない様だ、そこまで裾は短くない。小母さんは例によって半魚人、お金持ち程ヒダヒダの数が増える様だね。
会場に入って早数分・・
『自分のタッパは小さいし、華奢に見えるだろうから、庇護欲ビ~ムでも出して適当にトンズラしよう』
・・・と、詩乃は、そう計画を立てていた。
******
先日、女官長から<これなら良いでしょう>と渡された贈り物のうちの、王妃様からの木箱の中身は詩乃の好きそうな、派手でも無いが地味でも無い感じの上等な生地だった。色は各種揃っていて、ドレスの他・幾種類の小物まで作れそうな量だった。
『良かった~ドレス本体じゃなくて』
此方のドレスは苦手だし、リメイクするのも2度手間だしね、フリルを取るだけで大仕事だもの。暇を持て余していた詩乃は、喜んで自作する為に裁縫室に籠ったのだった。
それが本日の衣装・・異世界風ドレスなのである。
このところ、寒い時には雪も降っている事だし・・と、12月の白いひげのプレゼントお爺さん仕様で作ってみた。深紅とは言い難い深い赤色(鼻血が出た後の乾いた様な色)のワンピースは、面倒くさいのでメイド服と同じ型紙で作ってはいるが、飾りを変えてアレンジしてあるので気付くまい。
首元と手首の所に白い毛皮の様なフワフワを付けてあるし、髪は肩口まで伸びて来たので白いフワフワがワンポイントに付いているカチューシャでまとめてある。
何とあざとい衣装である事か、元の世界だったら大笑いされている自信が有るが、此処は異世界問題ない。以前のお茶会のハプニングの事も有るし、かなり覚悟を決めて出陣とあいなった訳だが・・・。
******
暇である、高位の貴族はお行儀がいいのか、前の様に囲まれて鑑賞される事も無く、絶賛ボッチ状態である。下位の者から話しかけるのはマナー違反との事なので、黙って突っ立っているのだが・・ヒソヒソ話もない、これがガン無視って奴なのか?壁を背中に背景と化し、ひたすら時間の過ぎるの待っているのだが。
『う~ん、流石にノイズ流石が五月蠅いね、このところ平民とばっかり過ごしいたから忘れていたよ』
ノイズ避けに造った<オニキス>を数個服に隠し縫い込んである、これで余裕で防げると思っていたが、此処にいるのは王国の重鎮達だった、伊達じゃなく魔力は強いのだろう。わざと魔力を当ててくる輩もいる、喧嘩売ってんのかごらぁ!と、内心思ってはいるが、微笑んで無視を決め込む。②と大魔神よりは威力が弱い、大した事では無い。
「やあ、楽しんでいるかね?」
お爺様?と言いたくなるような、(あれだ、羊たちの何とかって言う怖い映画に出ていた・・米国の俳優さんに似ている)方が話しかけて来た、さりげなく背中を向け魔力から詩乃を庇ってくれる。
年寄りっ子の詩乃のハートにズキューンときた、なんて素敵なお爺様!!笑顔で、軽く膝を折りカーテン何とかの挨拶をする。
お爺様は何とか公爵様(聞き取れなかった)で、冬の社交界の時期にしか王都に来ないそうだ。自分の領地がどんに素敵な所か、色々面白く自慢話をしてくれる。自分の土地や領民に、愛情を感じて大事に思っているのが伝わって来て心地よい。
聖女様に習った事と随分と違う様に聞こえる。
「貴族 しゃま 王都いつも いる 違う?」
「いいや、違わないよ。ほとんどの貴族は領地を見る事無く過ごしている、彼らの関心事は王宮の勢力図だけだからな」
「平民 守る 誰しゅる? 魔獣 危険 あぶな」
「第2王子が今、軍の編成を変えているところだ、魔術具の開発も進んでいるし、お嬢さんの心配はいらないよ」おじい様がそ言うと、目線を入り口の方に向けた。
②が聖女様をエスコートして会場に入って来た、後見人だからの特権なのだろう・・微笑む聖女様の目はドヨ~ンとしているが。
すかさず①が腰巾着を引き連れて自ら寄っていった、積極的になっているね?
「どちらの王子も有力貴族の令嬢が母親だ、王妃様は御子を授かれなかったからね。後ろ盾の力も拮抗しているし、王太子の座はまだ決定されていない。聖女様を伴侶に得た者が王座に手をかけるのだろう」
・・難儀なものだね、聖女様も・・ガンバ!
①と②が合流して、またまたノイズ祭りになって来た、真夏のセミの大量発生の様だ。
・・?・・何だろう、この嫌な感じは?
不安に思って、キョロキョロ周りを見渡していると、魔術師長の銀ロンが目に入った。彼の眉間には深い皺が寄せられていて、何だか蠅の足でも挟めそうだ、昔の文豪でそんな人いなかったっけ?
腕を組み難しい顔をして聖女様御一行を睨んでいる、あそこに混ざれないのでオカンムリなのか?恐いのか誰も魔術師長に近寄ろうとはしない、賢い選択だ、銀ロンの周囲8メートルに無人の空間が出来上がっていて不可侵領域の様だ。
それでも詩乃は聞きたい事があったので、公爵様にお願いして紹介して貰った。
召喚時をノーカンしたら、2度目ましてなんだけどね。
「何だ異界の小娘、まだ王都におったのか」
知り合いも居ないのに、いったいどこに行けというのか?酷い言い草にかなりムッと来たが、今はそれどころではない。
「私 ノイズ 聞 してオロ?①のノイズ 変 耳 くスグたい 変 感じ」
皮膚感覚も異様なのだ、何か妙に生暖かく、はっきり言ってHな感じだ。
①から感じる妙が一番強いが、周りの腰巾着のノイズもイケない感じだアウト!
「この世界 人 ココロ あらツル 魔術 使う イケナい しナイカ?」
ハッとして、聖女様を思わず振り返る、銀ロン魔術師長様。
「王宮内で魔術を使うには、魔術庁の承認と認可がいる。人体に作用するような魔術は禁忌だ、師長である私が許可を出すはずがない」
眉間の皺はもはや山脈と化し、背中からゴゴゴ・・と音がしそうだ。
銀ロン曰く。
①は王宮に籠って腰巾着の貴族ばかり相手にしているので、これと言って誇れる業績が無い。功に焦った①が禁忌に手をだし、安直に聖女様と自分の支持者を集めようと画策したに違いない。②が軍関係で一派を形成して、平民まで巻き込み勢力を伸ばしてきているのが邪魔なのだろう・・と。
①と②の争いなんぞ、どうでもいいが聖女様は嫌でも巻き込まれてしまう。
怪しげな魔術を使って<魅了?>状態にするなど、異世界の悪役のお約束イベントではないか!
「良く知らせてくれた異界の小娘、微弱な魔力は私の様な強大な魔力を持つ者にとっては、感知しにくいものなのでな」
自分の不手際とは認めたくないらしい。
「聖女様 あぶな だぃ じょブ か?」
「私を誰だと思っている、稀代の魔術・・」
ハイハイ、もういいから、さっさとあれらを如何にかして。
いつまでも演説をぶっている銀ロンにヤキモキして、腰を押して(背中に届かないから)聖女様の傍に行くように押し出した。
・・あぁ~~この行為が、貴族様的にはアレだったらしい。
詩乃の隙を狙っていた、若手中心のボンボン共に囲まれた。
明らかに(アレされているような、桃色な脳味噌持ちな感じ)挙動の可笑しな者もいる。①の腰巾着の2軍落ちのメンバーか?
魔術師長に無礼だとか、何故①に挨拶をしないのか・・とかね?絡んで来た。
高齢の貴族達は傍観している、これから聖女様がどう動くのか観察でもする気だろう。①がニヤニヤと解りやすく此方を見ている、これはあれか?可愛いそうな小動物を助ける俺様、①って凄く良い奴じゃん!聖女様見て見てアピールってやつかしら?今時そんなベタな設定、小学生にも<無いわ~>って言われるよね。
詩乃は優雅にボンボン達にカーテンシーをして、ゆっくりと御馳走の並んだテーブルに近づいた。何をする気だ?ボンボン達に緊張が走る。
勿体ないお化けが出ますからねぇ~下手な事はしませんよ。
詩乃はテーブルのご馳走の中でも存在感のある、高級そうなガラスのボウルに恭しく盛られたマンダリンオレンジ・・(まぁミカンだが、この辺は寒い地域だから高級品なのだろう)を、2っ手に取るとおもむろに放り投げた・・上に。
<年寄りっ子名物~~お手玉~~~>
おおぅ、貴族達は一斉に注目をする。
<相手の出端を挫くには、相手の思いがけない事をすると良いんだよ>
友達の、喧嘩嫌いな智美ちゃんが教えてくれた方法だ。うん、上手く行きそう。
ポン・・ポン・・ポン・・ポン・・リズムが大事なんです。
一番近くで見ていたボンボンに、もう1個投げろと目で指令を出す。
彼は周りをチラっと見てから投げてよこした、うん、良いタイミングだ、割と良い奴そうだね君。ポンポンとリズム良くミカンをお手玉する、此処では大道芸の人とかいないのかな、もしかしてこれで喰っていけるかな?最後には6個のミカンをお手玉?ジャグリングか?して、優雅にカーテンシーをして締めく
くった。因縁をつけて来たボンボン達は毒気を抜かれていたし、他の貴族達からも何故だか盛大な拍手を貰って、詩乃は悠々と隅の方に退場していった。
聖女様はにこやかに笑っていた、グッジョブってやつだな。
①は、唖然としていた、自分のちょっと良いところ!を見せる事が出来ずに大いに不満げだった。②は、顔は笑っていなかったが、目が笑っていた・・大魔神?知らん。銀ロンは何か用事が出来たのか、いつの間にかお茶会室から消えていた。銀ロンも間が悪いね、君の活躍は聖女様に必ず報告しておくからね、無理だろうが頑張れ婚活。
隅に掃けて、貴族達の意識から外れた詩乃は、
『疲れた、もう2度とお茶会には出ないぞ』
そんなことを思いながら、人目に付かない椅子に座ってため息をついた。
「お疲れさま、一息入れてお茶でもどう?」
突然顔の前にお茶のカップとお菓子が差し出されて驚いた、さっきミカン投げのアシスタントをしてくれた男ではないか。ノイズが全然聞こえなかった、魔力が弱いのか?それではこの会場には居られないだろうし・・隠すのが上手いのか。思わず眉間に皺が寄ってしまう、銀ロンの真似ではないが。
「そんなに警戒しないで、毒なんて入っていないから、王室主催のお茶会でそんな事が有ったら大事件でしょうが」
クスクス笑って、断りもせず詩乃の隣に腰を掛けた。
『何だかな~、変なのが付いて来ちゃったよ』
・・あぁ、お茶は美味しいです、喉が乾いていたし。
座っている場合はどう挨拶するんだろう、とりあえずビールを飲んでいる大人みたいにカップを上げてみた。女官長に習った様な気がするが、忘れた。
「だいぶ淑女の生活にも慣れてきたようだね、初めて君と会った時には驚いたよ」
?不思議な顔をする詩乃に。
窓を開ける真似をして、腕を伸ばして手のひらを上に向け、カモンカモン・・・
『あぁ!お布団の白騎士さん』思い出した詩乃が、パアァと笑顔を向ける。
「君が何もない部屋で、泣いているのを見て驚いたよ。あんな隅の暗い下働き見習いの部屋で、可哀想に後見人は何をしているのかと腹が立ったものだ」
おもむろに、丸っこいお菓子をフォークで刺して詩乃の口に入れる。
『むぅ、餌付けですか?』
モクモクお菓子を食べる詩乃、ぺっ出来ないし、しょうがないね。
お菓子を口に入れ込む神殿騎士の布団さんと、それをモクモクと食べる自分を、周囲の貴族がどう見ているかなど、微塵も考えていない詩乃だった。
お茶会にミカンは有るのか?此処では有るのです!
口封じには・・お嬢様には・・R15
お子様には、お菓子を口に突っ込むのが効果的(笑)(≧▽≦)




