ひとつひとつの選択が、全てを変えていく。
もし、全ての出来事が運命によって定められているのだとしても。
それを確認する術を持たない者には、至極関係のない話だ。
どうせ分からないのであれば、多少自分の良いように解釈したってきっとバチは当たらないだろう。
だからこの出会いも、私にとっては紛れもなく運命なのだ・・・。
キッカケは、あまりにも細やかで突然のことだった。
私はいつものように山の中を散歩をしていた。
すると、道に迷ったであろう1人の青年を見つけた。山菜を採りにきていたらしい。
心配になり声をかけようと近付こうとした。
次の瞬間、足に激痛が走る。
「どうしたの!?大丈夫?」
思わず悲鳴をあげた私を心配して、逆に向こうが声をかけてくる結果になってしまった。
「ああ、村の猟師さんの仕掛けた罠にかかってしまったんだね。外してあげるから、ジッとしてて。」
私は恥ずかしさと情けなさで今にもなきそうだった。
でも、これで話しかけるキッカケは出来た。
「ありがとう、ございます・・・。」
「・・・えっ。」
「狐が、喋った・・・?」
そう、私は狐。
喋るというとこは、勿論普通の狐などではない。
だが、今はそんなことは関係ない。
「あの、助けてもらったお礼に、道案内をさせてください!」
「えっ!?あっ、ありが、と、う・・・?」
喋ることに対しての説明を放棄して強引に話を進めたため、困惑しているのが手に取るように分かる。
だが、先ほども言ったが今はそんなことは関係ないのだ。
そう、関係ない。
どうせ、これ以降直接会うことはないのだから。
「さあ、こっちです!私に着いてきて!」
青年は何か言いたげだったが、私は振り切るように歩き出す。
罠にかかっていた足が痛む。怪我をしていたことをすっかり忘れていた。
しかし、少しでも一緒にいる時間が長くなると、何か良くないことになりそうで。
人と関わることに対する、未知なる恐怖。
私は必死で道なき道へ歩みを進めた。
「ありがとう狐さん。おかげで日没に間に合ったよ。」
「このあたりでは夜になると妖怪が出ると言われているから、山の中で1人で本当に危ないところだった。」
私も、その妖怪の1人です。
なんて、言えるはずもなく。
いや、喋る狐の時点で気付かない奴が居るのか?
「・・・コン。」
唐突に狐らしさを出してももう遅いとは思いつつ、踵を返した。
「本当にありがとう。」
「・・・また、会えるかな?」
「・・・!」
「・・・貸し借りは無し。だから、会うのはこれが最初で最後。もう、道に迷っちゃダメだからね!」
吐き捨てるように去ってしまった。
そしてめちゃめちゃ喋ってしまった。
完全に気付かれただろうが、どうせ会うことはもうないんだ。
と、思っていたのに・・・。