第二幕 第三場
ルイス・ベイカーが車を走らせてしばらくすると、大通りを抜けて住宅街へと進路を変えた。そのためわたしは不安を覚えた。
「ちょっとベイカー」わたしは声を大にする。「いったいどこを走っている。エイトに向かっているんじゃないのか?」
「エイトに行く前にきみに見せたいものがあってね。そこへ立ち寄る」
「いったいどこへ立ち寄るつもりだ?」
「『夢占い師』の家だ」
わたしは聞き慣れぬことばに眉をひそめた。「夢占い師?」
「そうだ。夢占い師が住んでいた家に立ち寄る。あともう少しで到着するはずだ」
ほどなくしてベイカーはとある家の前で車を停めた。ベイカーは車をおりると、わたしにもおりろと手でジェスチャーしてくる。わたしはうんざりといった様子でため息をつくと、しかたなしに車をおりた。
「見たまえロリーナ。ここが夢占い師の家だ」
ベイカーが目の前にある家を指し示した。庭に大きな木が生えているだけの、なんの変哲もないレンガ造りの赤い家だ。その家は二階建てで、ほとんどの窓はカーテンで覆われていた。ゆいいつ傾斜した屋根から突き出た出窓にカーテンはかかっていなかったが、そこからだれかが顔をのぞかせている様子はない。留守なのだろうか?
「ベイカー、わたしここにつれてきた理由は何?」
「アリスの救うために必要な情報を与えようと思ってね」
「必要な情報って何よ?」
「昔この家には夢占い師と呼ばれる女が住んでいた。その女は未来を知ることができた。なぜならば彼女は予知夢を見ることができたからだ。そのため彼女は周囲の人々から夢占い師と呼ばれていた」
要領を得ない返答にわたしは顔をしかめた。「そいつはすごいですね。でもそれがアリスを救うこととなんの関係があるのよ?」
「きみは疑問に思わなかったかね」ベイカーが問いかける。「きみやアリスは共有実験に向けて万全を期すために、じゅうぶんな訓練を積んだ。にもかかわらずアリスの共有実験は失敗に終わり、彼女は意識不明になってしまった」
「……たしかにおかしいわね。本来ならそんなことは起こりえない」
「実験の失敗の原因、それはここに住んでいた夢占い師が関係していると思われる。彼女の名前は——」