幕間 その七
わたしは目を開けると、レイシー・レイクスの顔を見つめる。レイシーの記憶を探っていたが、それ以上先の記憶が見ることができない。おそらくは抑圧されてしまっているのだろう。レイシーと会話をおこなうことで記憶を刺激し、そこから連想させて記憶を探ってみよう。
「レイシー目をあけて」
レイシーはゆっくりとまぶたを持ちあげた。「……何かわかったの?」
「あなたは予知夢を見ることができたはずよ。思い出せる?」
「予知夢?」レイシーは思案気な表情になる。「……どこかで聞いたような気がするわ」
「あなたはある日、階段から落ちて頭を怪我したの。そのせいで雨が降る日に予知夢を見るようになったはずよ。あなたの左側頭部にある傷跡がその証拠」
レイシーはわたしの手を離すと、左手で側頭部にふれる。するとその顔色がみるみると変わっていく。まるで信じられないといった様子だ。
「たしかに傷跡がある」レイシーは呆然とした口調だ。「……そうだ、だんだんと思い出してきた。たしかにわたしは予知夢を見ることができた。だから夢占い師と呼ばれたんだわ」
「思い出してくれたようね。あなたはその予知夢の力で有名になった。けどある日突然、自殺して亡くなったのよ」
「わたしが自殺?」レイシーはいぶかしむような表情になる。「その話はほんとうなの?」
「一応記録では原因不明の自殺となっているけど、自殺した理由は思い出せるかしら?」
「自殺……死……」そつぶやくとレイシーは首を横に振る。「ちがう、自殺なんてしていない。まだよく思い出せないけど、たぶんわたしは殺されたような気がする。たしか犯人の名前は……エリック・ローランドという名前の銀髪の少年だったはずだわ」
レイシーのことばに、わたしは思わず目を丸くする。エリックがレイシーを殺害した。だがエリックがこれまで殺してきたのは敵兵と悪人だけのはず。そんな可能性はない……とは言い切れない。それはわたしがよく知っていたはずだ。このわたしだけが!
「……いったいどうして、そのエリック・ローランドという人物に殺されたの?」
「……わからない。どうしても思い出せない」レイシーは頭を抱える。「わたしは自分が殺されたのが無念で、死後もそれを嘆いていたような気がするわ」
「なるほど。それであなたはメアリーの夢のなかで助けを求めていたのね」わたしはふたたび両手を前に出した。「ならレイシー、わたしといっしょに真実を見つけましょう」
レイシーは小さくうなずくと、わたしの手を握った。
「気を楽にして。自分の死ということばから記憶を連想していけば、真実にたどり着けるわ」
わたしは深呼吸し心を落ち着かせると、レイシーとともにゆっくりと目を閉じる……。




