第七幕 第四場
老婆を助け出したとき、火事を未然に防ぎ命を救ったという事実が気分を高揚させ、わたしは自分が予知夢を見ることができると、うっかり口を滑らせてしまった。せっかく秘密にしていたというのに、これで頭のおかしい人間だと思われてしまう。
しかし以外にも老婆はわたしの話をすんなりと信じてくれた。状況が状況だけに、予知夢であらかじめ未来を知っておかなければ助けられない、だからあなたの話はほんとうだわ、とのことだった。
ひとまずわたしはほっとし、この話は内緒にしてね、と告げた。だが噂好きの老婆から秘密が漏れるのは早かった。ほどなくして周囲の人々から、わたしが予知夢で未来を知ることができる人間として、噂されるようになった。
そのせいでわたしは家族からその真偽を問いただされることになり、しかたなしにその事実を認めた。はじめは半信半疑だった家族も、わたしが予知夢を見た日にその内容を伝え、それが現実で起こると両親は信じてくれるようになった。さらに妹にかんして言えば、感激した様子でわたしのことを夢占い師と呼びはじめてしまう。
それからというもの、わたしは予知夢を見ると、それを家族に伝えるようになった。するとその情報はその日のうちに、周囲の人たちに知れわたり、そしてそれが現実で起きると、わたしの噂はどんどんとひろまっていった。
しだいにわたしはまわりの人々から、驚嘆の目で見られるようになっていた。そしていつのまにかわたしは夢占い師と呼ばれるようになっていた。
ある日、夢占い師の噂を聞きつけた新聞記者が、わたしを取材しにやってきた。その頃のわたしは周囲からちやほやされて得意げになっていた。なので取材をこころよく引き受け、自分の名声が国じゅうにひろまるのを期待していた。
だが世間の反応は冷たかった。妄想、虚言、自作自演の工作、イカサマ師などといった心ないことばが浴びせられた。それはわたしの自尊心を深く傷つけた。だからわたしは世間を見返してやろうと、だれもがわたしを認めてくれる予知夢を見る機会を待った。
そして待ち望んでいたとある予知夢を見た。わたしは自分を取材しにきた新聞記者に連絡を取ると、予知夢の内容を伝えた。それは三日後にロンドンを中心とした、大きな地震が起きるというものだった。
その内容が新聞に載ると、世間はわたしをあざ笑った。妄言女の戯れ言だのと、馬鹿にされたが、わたしはそれを意に介さなかった。どうせあとで笑うのはわたしのほうだ。
そして三日後、地震は起きた。するとたちまちこの件は国じゅうにひろまり、わたしは夢占い師として一躍有名人となった。




