第七幕 第二場
わたしが病院を退院し家に帰ると、真っ先に妹が泣きながら駆けつけてきた。
「レイシー!」そう叫んで妹はわたしに抱きついた。「ずっと心配していたんだから」
妹はわたしの胸のなかで大声を出して泣いていた。わたしはその姿を愛おしく思い、妹の頭をやさしくなでてあげる。
「あなたはもうすぐ中学生なんだから、こんなことぐらいで大泣きしていたら笑われるわよ」
「それでもいい!」妹は泣きつづける。「だってほんとうにこわかったの。レイシーが頭からいっぱい血をだして倒れてて、わたし死んじゃったかと思ったわよ」
「ごめんね心配かけて。わたしはもうだいじょうぶだから」
妹をなだめながら、何やら既視感を覚えた。前にもこんなことがあったような気がする。そうあれはたしか……病院で見た夢だ。その夢とまったく同じ状況なのだ。家に帰ってくると、泣いている妹がわたしに抱きつく。そんな妹をわたしがなだめてあげる……。
不思議な偶然だな、とわたしは思った。夢が現実になるとは、おもしろいこともあるのね。あの夢は予知夢だったのかもしれない。
それから数日間、毎日のように夢を見たが、病院で見た夢のように、それが現実に起こることはなかった。あの夢だけが特別だったにちがいない。それもそのはずね、とわたしは思った。夢で見たことが現実になるなんて偶然、長い人生において一度か二度あるかないかの確率だろう。もう予知夢を見るという偶然はたぶん起こらないはずだ。
そして退院から一週間後の夜。その日は朝からずっと雨が降っており、夜になってもその勢いは止まらなかった。
わたしは雨音を聞きながら眠りにつくと、その日もまた夢を見た。こんどは親戚のおじさんが亡くなるという内容だった。起きてすぐになんていやな夢を見たんだ、とわたしは思った。人が亡くなる夢を見るなんて気分がいいものではない。たとえ本人が生きていたとしてもだ。
その日の夜、訃報が届いた。親戚のおじさんが亡くなったという話だった。その知らせはわたしを驚かせる。またしても夢が現実となった。
わたしは自分がこわくなった。こんな短期間で二度の予知夢を見てしまった。こんな偶然が確率的にありえるだろうか?
その日の夜、わたしはまた夢を見たが、それが現実に起きることはなかった。わたしは安堵した。偶然に偶然が重なっただけだと、自分に言い聞かせた。
それから数日後の雨の日の夜、わたしは眠りにつくと夢を見た。そして翌朝、その夢で見たできごとが現実で起きた。この事実にわたしはまたしても驚愕する。三度目の予知夢を見たことでわたしは確信する、自分は未来を予知することができる、と。




