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幕間 その四

 目を覚ますと、窓から明け方のやわらかな日差しが差し込んでいた。わたしは体を起こすと、ベッドのへりに腰かける。


 わたしは未来の夢を見た。またしてもアリス・キャロルの夢だ。こんどの夢は前回の夢のつづきからはじまった。アリスとロリーナのふたりの研究が進み、こんどは夢を操るという興味深いものへと移行した。


 夢を操る共感者と予知夢を見ることができる夢占い師。何か因縁めいたものを感じる。これは偶然とは思えない。


 そういえばロリーナの夢を見たとき、ルイス・ベイカーが言っていた。アリスの実験が失敗した原因、それが夢占い師である自分にあると。いったいそれはどういうことだ?


 ……いや、ちょっと待てよ。たしがビル・グレイ博士が夢についてふたりに語っていたとき、夢占い師の話題がでてきたはずだ。たしかなんと言っていた?


『さらに我が国においても、二十年ほど前に夢占い師とよばれた女性がいた。夢占い師の名前はレイシー・レイクス。彼女は予知夢を見ることができ、周囲の人々を驚かせた。いまはもう亡くなってしまったが、彼女のおかげで——』


 レイシー・レイクス。それがわたしの名前だ!


 名前を取りもどせた。けどグレイの話どおりだとすると、わたしは未来では亡くなっている。いったいわたしの身に何が起きて死んでしまったの? 病気? 事故? それとも戦争に巻き込まれた?


 わたしに死の宣告が告げられた。あのときロリーナやアリスがグレイの話を止めさえしなければ、この身に起きるであろう運命がわかっていたはずなのに。けどあきらめるのは早い。だってわたしは未来を知ることができるんだ。だとしたら運命だって変えられるはず。


「おはよう」部屋の戸口から女の声が聞こえた。「よく眠れたかしら」


 わたしは戸口へと視線を向ける。そこには十代後半だと思われる少女が立っていた。少女は柔和な顔つきをしており、長い黒髪をうなじ付近で縛っている。身長はわたしよりも低く、華奢な体つきをしている。落ち着いた物腰からは、やさしそうな雰囲気が漂っていた。


「名前がわかりました」わたしは興奮気味に言う。「レイシー・レイクスです」


「えっ!」女は驚きの表情を見せた。「どうしてあなたはわたしの名前を知っているの?」


「えっ!」これにはわたしも驚いた。「あなたの名前は……レイシー・レイクス?」


「ええ、そうよ。もしかして知らず知らずのうちに名乗っていたのかしら、わたし」


 目の前にいる人物こそがレイシー・レイクス。だとしたらわたしはだれだ? 何かがおかしい。そう思っていると激しい頭痛が起こり、わたしの意識を混濁させる……。

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