幕間 その三
気がつくとわたしはベッドの上だった。たしかわたしは家の前で倒れたはず。なのにわたしはここにいる。どういうことだ?
……いや、それよりもいま夢の内容をたしかめるのが大事だ。あきらかにいまの一九三五年ではない未来の夢だった。こんどの夢ではわたしはふたたびアリス・キャロルとなっていた。アリスは成長し、そして父の親友であるルイス・ベイカーの誘いにより、超能力解明のための国家プロジェクトに参加することになった。研究施設はロンドン郊外にあるエイトと呼ばれる施設。アリスはそこにある宿舎に住み込みで研究に協力することになるが、そこでロリーナ・ベルと出会うことになった。
ロリーナ・ベル。ひとつ前の夢ではわたしはこの少女の夢を見ていた。そのときの発言から推測するに、その夢のできごとはまだ先のようだ。
どうやらアリスとロリーナのように人の心を読むことができる人間を共感者というらしく、さらにはいくつかのタイプに分けられるらしい。人にふれることで心が読めるふたりは、接触タイプというらしく、様々な実験がおこなわれていた。
「気がついた?」不意に部屋の戸口から女の声が聞こえた。
わたしは上体を起こし、薄暗い闇に目を凝らした。だがしかし、女のうっすらとした輪郭の人影しか見えてこない。
「心配だったのよ」女は言った。「あなたったらまた倒れてしまうんですもの。ここまで運びいれるのに苦労したわ。まさか同じ日に二度も運ぶことになるとは思いもしなかったわよ」
「……すいません。また迷惑かけたみたいで」
「どうやらあなたは体の調子がよくないようね。だったらよくなるまでここにいなさい」
「えっ、ここにですか?」わたしはとまどってしまう。「ただでさえ泊めてもらっているのに、これ以上は——」
「遠慮しないでいいのよ」女はわたしのことばをさえぎる。「それにあなたは記憶喪失で行くところなんてないんでしょう。だったら記憶がもどるまでここで暮らすといいわ。その代わり困ったときはお互い助け合いましょう。それじゃあおやすみ」
女はそう告げると、わたしのまえから立ち去った。
記憶がもどるまでこの家で暮らす。この家には夢占い師という女がいた。女は予知夢を見ることができた。そしてわたしは未来の夢を見ている……。
いま確信した、わたしが夢占い師だ。でもどうしてアリスとロリーナ、このふたりの夢ばかりを見るの?
わたしはその答えが欲しくて、ふたたびベッドに横たわると眠りについた。




