第三幕 第一場
わたしはいま中学校の職員室で、不機嫌な表情の担任の先生と向き合ってすわっている。いったいどうしてこうなってしまったのか、思い出すのもいやになる。
「いいですかアリス」先生が威丈高な口調で言った。「あなたはいったい何度問題事を起こせば気がすむんですか」
「先生」わたしはため息まじりに言う。「わたしが悪いんですか。悪いのはエイダたちですよ。あいつらは嘘をついてみんなをだましたんですよ。わたしはそれをインチキだとあばいただけなんですから、何も悪いことなんてしません」
「お黙りなさい!」先生はぴしゃりと言った。「あなたが騒ぎを起こしたせいで、クラスの輪が乱れてしまったのですよ。どうしてくれるんですか」
先生はわたしの言い分に耳を傾けることなく、一方的に説教をしてくる。そのせいでわたしは苛立ちをつのらせた。どうしてわたしの話を聞いてくれない。いや、最初から先生はわたしの話を聞く気がないだけなのでは。もしそうだとしたら、話すだけ無駄だ。たしかめないと。
わたしは不意をついて先生の手を取り握りしめた。
「何をするんですか」先生は顔をしかめた。「その手を離しなさい」
「……やっぱりそうだ。先生はわたしの話を聞く気なんてない。考えていることは自分の保身だけ。だからクラスのもめ事なんて関心はない。さっさと問題を終わらせたいだけじゃない」
先生は一瞬だけ顔を青ざめさせたが、すぐに額に青筋を浮かべて、わたしを罵りはじめた。それも汚いことばで。
先生のことばを聞き流していると、職員室にわたしの母がやってきた。おそらくは先生が呼び出したにちがいない。なんて余計なことをするんだろう。
「申し訳ありません」母はわたしたちのもとに来るなりそう言った。「娘がご迷惑をかけたそうで」
「まったくそのとおりですよ、キャロルさん。あなたは自分の娘に対してどのような教育をなさっているのですか」
先生が母に毒づくのをわたしは黙って聞いていた。どうしてこのような自己保身しか考えない人間が教育者になったのだろうか。自分を棚にあげて人を批判することしかできない。そんな人間が学校の教育者としてふさわしい?
……ありえない。そんなのまちがっている。
わたしは首からさげていた父の形見である十字架を握りしめた。
父のような人間になりたいわたしにとって、目の前にいる先生は真逆の存在だ。こんなわかりあえない人間がいるから、世のなかには争いが絶えないのだろうか。




