95 酷薄な告白
僕は今、トルポップの村の跡地であるクレーター前にいる。
目印としては申し分ない。
待ち合わせスポットとしてはこれ以上無いぐらいに有用だろう。
しかし目の前にいる前世の知人と、ここで待ち合わせをした記憶は無い。
「俺は今ギスケという名で通っているんだ。
だからそっちで呼んでくれ。
それと隣にいるのはイリン、俺の護衛だ。」
前世の知人はそう言う。
なんでギスケになったのかは謎だけれど、確認しなければならないことが多すぎるのでそこはスルーしよう。
僕達も名前を名乗った。
そして僕は重要な告白をしなければならない。
「たぶんすごく重要な情報をやりとりすることになると思う。
だからその前に、みんなに言っておかなければならないことがあるんだ。
それを話しておかないと、今後に支障を来すと思う。」
僕はそう言った。
みんなは黙って僕を見る。
「僕は先代魔王アストレイアの息子なんだ。
そしてたぶん父親は勇者ジェイエルだと思う。」
ジキルとパメラは驚きの表情を見せた。
嫌悪の感情が出ていないのは救いだった。
リーフはポエッとして話が通じているのか今一よく分からない。
イリンは驚きよりも困惑の表情だ。
そして魔神ギスケは渋い顔をしている。
「まあ彼女が現魔王の娘に転生しているんだから、それもありか。
とにかく、こっちではオキスって呼べば良いんだな。
父親は勇者か、馬鹿みたいな話だな。」
ギスケの反応はアッサリしていた。
僕は続けて話す。
「母は僕を人間の国で暮らせるようにするために、父親を選んだんだ。
瘴気が無くても活動可能な元魔王種の血を利用してね。
どうやって勇者を口説き落としたのかは分からないけれど。」
そしてこれも言っておかなければならない。
「魔王種が誕生するためには、一万を超える人間の魂が必要になるんだ。
つまり僕は帝国の人間の犠牲の上に生まれたんだ。」
僕はジキルとパメラの方を向いた。
そして二人に言う。
「僕は勇者に退治されるべき存在なのかもしれない。」
僕のその言葉に対してジキルが怒った顔を見せる。
「オキスが魔王の息子だろうと、生まれるのに犠牲があったなんて関係ない。
だって望んでそうなったわけじゃ無いんだ。
僕はそんなことで君に剣を向けたりはしない。
友達に剣なんて向けるものか。」
希望の家にいたときも、ジキルがこんな感情的にものを言ったのを見たことが無かった。
「私も同意見よ。
希望の家に魔王の息子が混ざっていたぐらいなによ。
伝説の冒険者だっていたんだから、大した問題じゃ無いわ。」
パメラは少し赤い目をしながら言った。
それを見ていたギスケがニヤニヤしている。
「俺は誰の子供だろうと関係ない。
問題は今後の話だ。
出来れば敵対はしたくないが、お互いの目的がハッキリしないと協力も出来ない。」
ギスケは先の話が重要だという。
確かにその通りだ。
「そうだね。
僕の目的を言っておいた方が良いのは確かだよね。
元々は魔領に戻って色々なことを確かめるっていうものだったんだけど。
今の僕の目的は・・・。」
そして僕は告げる。
「いずれこの世界に襲来する神を倒すことだよ。
魔王アストレイアに召喚された魔神ギスケにも関係がある話なんだ。」
「おい、ちょ・・・。」
ギスケは二の句が継げなかった。
目標はゴッドスレイヤー無双。




