94 点睛を欠いた転生
僕が帝国の民族服の男に向かって叫ぶと、僕の方を見た。
その顔は明らかに警戒している表情だ。
「誰だ?」
男は僕達の存在にはとっくに気がついていたはずなのに、今頃そんなことを聞いてくる。
女は剣に手をかける。
「いつの間にかずいぶんと大きくなったみたいだけれど、啓介だよね。
もしかして今は魔神ギスケとか呼ばれてるのかな?」
僕はそう問いかける。
彼はますます警戒しているようだ。
「誰だと聞いている。
お前達のような子供に見覚えは無いんだけどな。」
確かに見覚えは無いだろう。
なんと言っても転生前の話なのだから。
「あの雪山の噴火の時、助けに行ったよね。
恩人にその言いぐさは酷いよ。
今は僕が年下になったようだけど、誰だか分からない?」
そういうと彼は凍り付いた表情を見せる。
「ギスケ様・・・。
この方々は?」
女がギスケと呼ばれた男に話しかける。
しかし男はしばらく黙っていた。
「まさか、アンタもなのか?」
啓介、今は魔神ギスケと呼ばれている男は僕のことにようやく気がついたようだ。
「僕もというのは若干違うよ。
僕は転生、啓介は召喚による転移だよね。」
僕の母、先代魔王が召喚したのは前世の知人だった。
僕が命を救い、そして僕ともう一人が死ぬ原因となった人物だ。
「そういうことじゃ無い。
彼女も転生してるんだよ。
記憶は残っていたが、感情が抜けて別人みたいになってたんだ。」
彼女・・・。
「はぁ?」
僕はみっともない声を出してしまった。
「は、はっはっはぁ、そうか、そうなのか。
畜生、二人ともこっちに来てたのか。
何だよ、酷ぇよ。」
啓介は泣きながら笑っている。
器用な奴だ。
「俺はアンタが死ぬまで生きろと言ったからここまで来たんだ。
責任はとってもらうぞ。」
確かにあの時に言ったな、そんなこと。
だけど、それよりもまずは確認したいことがある。
「啓介、彼女が・・・転生って、まさかこっちにいるの?」
「ああ、今は魔王の娘だ。」
啓介がさらにと衝撃的なことを言ってくれた。
「はぁ?」
またみっともない声を出してしまった。
ちょっと待って欲しい。
状況を整理しよう。
彼女のことは、いったん置こう。
まずはお互いの持っている情報を交換することが大切だ。
うん、情報大切。
気がつくと周りが無双戦力だらけになっている。




