88 噛みつかれた神
希望の家メンバーが物語の主人公のような冒険をしている一方で、もう一人のことも確認しておかなければならない。
「ルディン、色々聞きたいことがあるんだ。」
『うん、オキス兄ちゃん。
僕も色々なことを見てきたんだ。
話さなければいけないことが沢山ある。』
「まずオルドウルという人物についてだ。」
神鳥フローリアに乗ってきて、あっという間に退場した人物。
本来ならこれからの話のキーマンになるはずだった。
『あの人は帝国の学者で、魔術師でもあった人物だよ。
すごく頭のいい人だった。
単独で古代遺跡の最深部へ到達できるほど。』
「古代遺跡?」
『神の遺跡に似たものだけれど、違うのは封印を行う施設では無いこと。
中には神の技術で生み出された様々なものと、そして情報が詰まった遺跡なんだ。』
ルディンの話によると、古代遺跡は神がまだこの世界にいた時代に人間に命令して建造したものだという。
そこにあったものの一つが神鳥フローリアだ。
古代遺跡は神が残したセキュリティに守られている。
遺跡に入って戻ってくることが出来たのは、過去にたった一組のパーティーだけらしい。
十中八九、エリザさんと師匠のパーティーだと思う。
まともに攻略しようと思ったら、最強メンバーを揃えて挑まなければならない場所なのだ。
しかし賢者の杖を手にしたオルドウルは、魔法演算回路を作ることによって対策を行った。
なんとセキュリティ解除コードを割り出し無力化してしまったのだ。
敵の矢面に立って、そのまま矢を食らって即死する人物とは思えない有能さだ。
そして遺跡の情報管理室を発見したオルドウルは、神の時代の情報を知ることとなる。
情報によれば、そもそも魔族を作り出したのは神だったのだ。
神がいた時代、人間は神の奴隷だった。
そして神は遊び半分で人間を改造して魔族を作り出した。
魔族に改造された人達は、瘴気という環境下でしかまともに生きられない体となる。
魔族は各地の小さな土地に追いやられ、神のオモチャとされた。
また人間の能力を無理矢理引き出す実験も行われた。
それが神の残滓と呼ばれる能力だ。
魔族となった人間は瘴気を必要とする体にされてしまい、家族と離ればなれになることを余儀なくされた。
当然、神に対して怒りに駆られた者もいた。
そして魔族達は神に反乱を起こす。
しかし魔族達が神と戦うには致命的な問題があった。
神は魔力を無効化する能力を持っていたからだ。
魔族となって強力な魔法を使えるようになってはいたが、魔力を封じられたらそれまでだ。
勝負にすらならなかった。
神は神の世界から神鳥フローリアのような神獣を、空や大地を埋め尽くすほど召喚し魔族を圧倒した。
こうして魔族は神の奴隷として生きる以外の道を失った。
しかし魔族の中になんとしても神に一矢報いようとする者がいた。
その魔族は必死に考えた。
どうすれば神に勝てるのか。
神の力の根源はなんなのか、それを封じる方法が無いのかどうか。
そしてついに見つけ出す。
この世界と神の世界を繋ぐ装置の存在を。
魔族達は神に従順に従うふりをして機をうかがった。
神にとって魔族はオモチャであって驚異では無い。
だから油断した。
魔族達は装置のキーデバイスの在処を探り、そして盗み出すことに成功する。
僕達が神の遺跡と呼んでいる四つの遺跡を使い、世界を繋ぐ道を一斉に封印したのだ。
その後、この世界に残っていた神達は魔族と人間の手によって滅ぼされた。
それが古代遺跡に残っていた記録だった。
昔は神が無双していたらしい。




