84 未知の世界の道が開く
神鳥フローリアは死んだ。
ブリゲアンが賢者の杖を渡したオルドウルという魔術師も死んだ。
疲れた、しかしまだ戦闘は終わっていない。
僕は賢者の杖を構え直す。
さっきキャンセルを食らった渾身の魔法のせいで、僕の魔力の残量はかなり厳しい。
魔物達に異変が起きている。
死霊系の魔物の動きが突然ストップしている。
神鳥の魔法キャンセルの影響とは違う感じだ。
そのせいでゴブリンやオークが反転攻勢に出る機会を失っている。
魔物達は神鳥によって街の外に追いやられている状態だ。
奴らにとって戦況はかなり悪いはず。
さっさと撤退して欲しい。
この間に兵士達が陣形を組み直している。
街の中央への動線を防衛していた兵士達も参加し、全面攻勢に出るようだ。
冒険者達も動き始める。
兵士達が前進し、そのまま戦闘が開始されるかと思われたとき、再び状況が変化する。
突然、オークとゴブリンに混乱が生じたのだ。
何故か方々へ逃げ出し始める魔物が現れる。
街の方へ逃げてきた魔物達を迎撃する兵士と冒険者。
魔物達は何故か大混乱だ。
『ジキル兄ちゃんと、パメラ姉ちゃんだ!』
ルディンが嬉しそうに懐かしい名前を発した。
「もしかしてとは思っていたけど・・・。」
モーゼが海を割ったかのように、魔物達が倒れ道が出来る。
その道を歩いてくるジキルとパメラ、そして知らない女の子。
ジキルが軽く剣を振る。
熱したナイフで切られるバターのようにオークの鎧が裂ける。
かなり遅れて血しぶきが上がる。
パメラが踊るような動きをするたびに、ゴブリンの頭や腕がはじけ飛ぶ。
何、あの無双な人達?
まだ戦闘は終わっていない。
僕は賢者の杖の力で、自立回路ステージまで魔術回路を拡張する。
追加でルディンの構成支援能力が発動し、魔法が強化される。
散り散りになった魔物達をロックオンして、ホーミング機能付きの氷の刃を大量に放った。
逃げた先まで追尾して魔物達を切り裂いていく。
これで僕はガス欠だ。
兵士と冒険者の掃討作戦も始まり、あっという間に魔物達は壊滅した。
僕達は勝利したのだ。
『やっほぉー』
僕の隣でクルクル踊っているシーリ。
しかし歓声は上がらない。
辺りは静寂に包まれる。
何故かみんな勝ったという表情をしていない。
なるほどジキルとパメラのせいだ。
あんな非常識な無双をすれば、みんなビビる。
しかし、何かおかしい。
兵士や冒険者の僕を見る目も、何か恐ろしい物を見ているような目だった。
いや違う、きっと隣で空気を読まずに踊っている奴のせいだ。
そうだよね?
そんな寒い状況の中、一人の冒険者が叫ぶ。
「勝ったぞ!」
その一言で雰囲気が一変する。
上がる歓声。
助かった。
魔物に追い詰められたときよりもピンチだった。
あのまま冷たい空気にさらされ続けたらどうしようかと思ったよ。
そんな中、ジキルとパメラが手を振って駆け寄ってくる。
どうやら僕に気がついたようだ。
しかし、リプリアが警戒の姿勢をとる。
なるほど、味方っぽいとは言え、とんでもなく強い人間がこっちに向かってきたら、そりゃ警戒するか。
「お知り合いですか?」
リプリアが聞いてくる。
「うん、孤児院で一緒だった。
大丈夫、敵じゃないよ。」
リプリアは警戒を解く。
エリッタも若干の緊張が走っていたようだけれど、通常体勢に戻る。
希望の家を出て二年、僕は強くなった。
そして彼らも驚異的に強くなっている。
こんな異国の地で僕達は再会した。
希望の家無双だった。




