65 帰還しつつも話は聞かん
時刻は夕方となり、そろそろ日が暮れそうだ。
シーリのおかげで時間つぶしは出来たけれどね。
「いたぞ!少年は無事だ。
亀の魔物は・・・なんだあのグチャグチャは。」
上の方で叫ぶ声が聞こえた。
知らない声だ。
「オキス、くそぉ、やっぱり生きてやがったな。
今行くから待ってろよ。」
今度は知っている声だ。
岩壁にロープがかけられる。
そして飛び降りようかという勢いでエランが降りてくる。
最後はロープを省略して本当に飛び降りていた。
一目散に駆け寄ってくる。
「おい、本当に生きてるんだよな。
怪我は体は大丈夫なのか?」
「ええ、問題ありません。
多少手傷を負いましたが、魔法で治療しました。」
「信じられねえ奴だな。
あの糞ガメ共はどうなってるんだ?」
「同士討ちを始めてあの有様ですよ。
おかげで助かりました。」
エランは驚いたような表情から呆れた顔に変わる。
「とりあえずはお前が勇者だからって理由で納得しとく。
とにかく村へ戻るぞ。」
「エリッタは大丈夫ですか?」
「ああ、村に着いた頃には意識が戻った。
肋骨にヒビが入ったようだが、命に別状は無い。
それどころか、お前の救出についてこようとして大変だったぜ。
宿のベッドに縛り付けてやったけどな。」
文字通り本当に縛られてるんだろうな。
エランは続けて話す。
「糞ガメとの戦いに備えて、村から集められるだけ冒険者を集めてきたんだが肩すかしだったな。
悪いが、ここで発見した残りの魔晶石と引き替えに集まってもらったんだ。
その分、分け前は減るが我慢してくれ。」
「いえ、分け前とか気にしている状況では無いですから。
命が助かっただけでも行幸です。」
「そうだな。
本当に良かった。
動けるか?」
「はい、上へは自分で登れます。」
僕はロープを伝い岩壁を登った。
エランは巨大クルタトルの様子を確認すると続いて登ってきた。
上には十人ほどの冒険者が戦闘態勢を整えた装備で待っていた。
「少年は無事だな。
あいつ等はもう大丈夫なのか?」
冒険者がクルタトルを指さす。
「ああ、糞ガメ共は全員オダブツだった。
オキスが一人で全部やっちまいやがった。」
エランが答える。
「はぁ、あの巨大な亀を少年一人で!」
冒険者達がざわつく。
「ああ、気にするな。
あいつは試しの剣を抜いたんだ。
細かいことを気にしていたら身が持たないぜ。」
「試しの剣を抜いただって?!
勇者。
ああ、勇者か。」
なんだか勇者と言えば何でも許されるらしい。
便利かもしれない。
まあ魔王に単独でテロって暗殺してくるような存在だから、誰もが常識で測るのを放棄するんだろう。
もしかして民家でタンスを漁っても許されるんだろうか?
僕は冒険者の護衛に囲まれながら村へ帰還することになった。
出来るのか?勇者窃盗無双。




