60 大岩が多いわ
「オキス、他にどのぐらいあるか分かるか?」
エランが確認してくる。
僕は魔力探知を洞窟の奥へ向けた。
かなりの反応が返ってくる。
そしておかしな場所を発見した。
「かなり沢山散らばってますね。
それと山みたいな巨大な魔力の塊の反応がありました。」
「魔物か?」
「分かりません。
動いてはいないようです。」
「もしかしてお宝の塊!」
エリッタは諸手を挙げて喜ぶ。
「ふむ・・・危険だな。」
エランは危険な気配を感じているようだ。
「えーなんで。
お宝の塊だよ。
行くだけ行って確かめてみようよ。
オキスも見てみたいでしょ。」
「興味はありますが、何があるかわからないし。」
この洞窟の違和感が僕を警戒させる。
何か嫌な感じがするのだ。
「ほら、興味があるんでしょ。
何があるかどうか確かめに行くんだから問題なし。」
エリッタは先に進みたいようだ。
エランは腕組みをして考えている。
「分かった、慎重にな。
いつでも引き返せるように、退路は意識しておけよ。」
先に進むことになった。
そして先へ進むと、魔晶石が所々に散らばっている。
「まだまだいっぱいあるね。」
エリッタはずっとニヤニヤしている。
僕は警戒しながら進んでいく。
「ん、出口か?」
奥の方に外の光が差し込んでいる場所がある。
慎重に進む。
そしてあっけなく外に出てしまった。
光に目が慣れるのを待つ。
そして辺りを見回すと、ここは断崖絶壁に囲まれた窪地だった。
「ここから直接出られそうには無いな。」
エランが絶壁を見渡す。
見たところ、ここは登れそうに無い。
窪地はかなり広い。
東京ドームよりは大きいだろう。
そして八メートル級の大岩がいくつか落ちていた。
「・・・。
あの岩からですね、魔力が流れてくるのは。」
「ちょっと調べてみようよ。」
僕達は窪地の中に進んだ。
大岩を確認してみる。
よく見ると何か見覚えがあるような模様だ。
「なにか亀の甲羅みたいな模様ですね。」
「ああ、そうだな。
さすがにこんな大きな亀がいたら大変だけどな。」
エランが笑いながら答える。
「いいじゃん、大きい方が。
アタイだったらペットにするよ。」
エリッタはそう言うと、岩に乗ってを足でゴツゴツ叩く。
「おい、エリッタ。」
「なに?エラン。」
「ペットが動き出したぞ。」
そう言うとエランは大剣を抜いた。
僕は岩から離れる。
エリッタは慌てて飛び降りる。
「どうする?ペットにするなら今のうちだぞ。」
「冗談、とっととずらかろう。」
僕達は洞窟の入り口を確認する。
「ちっ、他にもか。」
大岩だと思っていたのは亀の魔物だった。
全部で五匹、既に洞窟までの直線ルートはふさがれている。
僕は魔術回路を編む。
亀の魔物は僕達に狙いを付けた。
そのうちの一匹が、大きさからは想像できないほどの速度で突っ込んでくる。
僕達は散開する。
その瞬間にエランが剣で亀の手に一撃を入れ、エリッタは頭に鉄串を放つ。
「弾かれた。」
エランとエリッタが同時に言う。
ヤバい、無茶苦茶堅い。
突撃してきた亀は、そのまま岩壁にぶつかる。
轟音と共に揺れが生じる。
無駄だと思ったのか、エランは大剣を背中に提げる。
僕達は洞窟に向かって走り出す。
洞窟までのルートを塞いでいる亀の魔物が僕達に狙いを定めた。
僕は雷撃魔法を放つ。
亀の魔物はびっくりして動きを止めた。
良しと思ったのもつかの間。
魔法に集中していたせいで、段差に足を取られよろける。
「オキス、危ない。」
僕はエリッタに突き飛ばされた。
次の瞬間エリッタが吹っ飛ぶ。
「ぐっ。」
エリッタが地面に叩きつけられた。
別の亀の魔物が突進を仕掛けてきていたのだ。
エリッタは動かない。
さっきの亀の魔物がエリッタに狙いを付けている。
僕は再び魔術回路を編む。
「エラン、エリッタを連れて先に洞窟へ。
僕が足止めをします。」
「オキス、囮なら俺がやる。」
「僕じゃ素早くエリッタを運べません。
早く。」
「くそ、すぐ戻ってくる。
子供を囮に使った卑怯者とは言われたくないからな。」
僕は電撃魔法を放つ。
エリッタを狙っていた亀の魔物の動きが止まる。
エランはエリッタを抱えて走った。
彼らは間に合いそうだ。
僕も洞窟へ走った。
しかし亀の魔物が突進してくる。
このままだと避けきれない。
僕は魔導力を発動させた。
身体能力が向上する。
回避に全力を向け、何とか避けきった。
亀の魔物はそのまま洞窟の入り口付近に突っ込む。
次の瞬間、轟音と共に・・・洞窟の入り口が崩れたのだった。
四面楚歌を無双中。




