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魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された  作者: 空雲
3章 冒険の始まりと動き出す王国
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57 地図とチーズ

 フェイメル村から一時間ほど歩いた場所にフェイステラ渓谷はある。

 瘴気が漂う場所なので、渓谷内に人の住居は無い。

 そういった場所に抵抗力の無い人間が長くいると体力が奪われ、下手をすると衰弱死する。

 瘴気は人間に害悪をなすが、逆に人間が利用するための魔晶石を生み出すものでもある。

 野生動物を魔物化させたりもするけれど。

 フェイステラ渓谷には瘴気を吸収しやすい石が多いので、魔晶石を採掘するには打って付けの場所となっている。


 こういう場所を探索する冒険者には、瘴気に対する抵抗力が要求される。

 抵抗力が無い者は、冒険途中であっという間にリタイアすることになる。

 魔術師の場合は元々瘴気に対する高い抵抗力を持っている。

 それ以外の人間は定期的に瘴気に触れて耐性を付けるしか無い。

 僕の場合はそもそも魔族なので、全く問題無しどころか調子が良くなるぐらいだ。 

 エランやエリッタは経験者だけあって、渓谷の瘴気の濃度なら数日過ごしても大丈夫だということだ。


 僕達はフェイメル村に一泊した。

 酪農が中心の村だ。

 牛の数は数えるのを諦めるほどいた。

 バターやチーズの生産では王国でもトップクラスだ。

 街で食べたものの中に、この村で生産されたものがあるのかもしれない。


 この村の近くには魔物が出る危険地帯がある。

 しかし村までやってきたことは今のところ無いという。

 一応の棲み分けは出来ているようだ。


 宿泊のついでに情報収集を行った。

 特に注意するべきは魔物の動向だ。

 事前に集められる情報をきちんと集めることによって、危険を最小限にすることが出来るのだ。

 村にある酒場で他の冒険者達から話を聞いた。

 もちろん僕はノンアルコールの果実ジュースを頼んだよ。

 それから特産のチーズが美味しかった。


 話を戻そう。

 そもそもフェイステラ渓谷にはそれほど強い魔物は住んでいない。

 しかし集団で襲ってくる昆虫系の魔物の巣が所々にあり、気をつけなければいけないポイントになっている。

 うっかりテリトリーに踏み込んでしまうと、攻撃を受けることになる。


 彼らの話によると、半年ぐらい前から魔物達の動向が変わったとのことだった。

 昆虫系の魔物は、魔晶石が採掘されるポイントから離れるように巣の場所が移動しているという。

 冒険者にとってはありがたい事なのだけれど、やはり不気味と言えば不気味だ。


 さらに不気味なのは、渓谷の川に住んでいる亀の魔物だ。

 クルタトルという種類で、こちらから手を出さない限り襲ってこない比較的大人しい魔物だ。

 体長は1メートル前後の個体が多く、怒らせるとすごい勢いで突進してくる。

 甲羅だけで無く皮膚も硬いため、倒すのは容易ではない。

 その亀の魔物は百匹前後はいたはずなのに、一年ほど前から忽然と姿を消したらしい。


 その他には、怪しいローブの男が目撃されているという証言もあった。

 何が怪しいかというと、右腕からニョロニョロと植物のような物を生やしているというのだ。

 正体を確かめようとした冒険者もいたけれど、すぐに逃げられてしまい分からず仕舞いだ。 

 しかし誰も実害を受けていないので、もし出会っても関わらずに済ませれば問題ないと言うことだ。


 情報を得た僕達はフェイステラ渓谷に出発した。

 魔晶石を採掘する冒険者が多いので、分かりやすい道が出来ている。

 渓谷にはいくつかの洞窟があり、瘴気の濃度が濃くなっている場所がある。

 そういった場所を探すと純度の高い魔晶石が手に入るのだ。

 瘴気がある限り魔晶石は周期的に生成されるので、枯渇することは無い。


 渓谷の入り口まで到達した。

 僕達は村で購入した地図を広げる。

 魔晶石が採れる洞窟の位置を記した物だ。

 村人は冒険者相手に上手く商売をしている。

 まずは手近なところから回ってみることにした。


 そして最初の洞窟に到達した。

 洞窟の中は真っ暗闇かと思ったら、内部が微妙に光を放っている。

 瘴気と岩が反応して出る光のようだ。

 僕のように暗視能力の無い人間にとっては、かなりありがたいだろう。


「多少は見えるみたいですね。」


「ああ、だがこれだけだと心許ない。

 明かりは必要だ。」


 そう言うとエランがランタンを取り出そうとした。


「これを使ってください。

 こちらの方が取り回しが楽です。」


 僕は腰に下げていた自作の白熱電球ランプを渡した。


「これは・・・魔道具か?

 ずいぶん高額(たか)そうな物を持ってきたな。」


「いえ、魔力は使っていません。

 僕の自作の品です。」


 エランは使い方を確認した。


「ほお、面白いな。

 使わせてもらおう。」


 準備は万端だ。






 村は酪農無双だった。


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