43 黒い石と覚悟の意志
王宮の応接室に関係者が集められた。
まず調査を指示した師匠ことクルデウス卿、調査を行った僕とセフィリアさん。
今回容疑をかけられたテイラン先輩。
そして参考人としてブラニカさんとエムルライド教授。
査察官の人も来ているが、こちらの紹介は割愛する。
「クルデウス卿、捜査に協力するのはやぶさかではありません。
しかし子供にやらせるのはお遊びが過ぎませんか?」
最初に口を開いたのはエムルライド教授だった。
「お遊びというのは否定せぬ。
そう何度もあることでは無い。
もう少しこの年寄りの道楽につきあってくれぬかの。」
師匠はいつも通り優しげな笑みを浮かべながら答えた。
「卿にそういわれては、付き合わざるを得ません。
分かりました、手短にお願いしますぞ。」
教授が納得したところで本題に入る。
「まず最初にはっきりさせておきたいことがあります。
ブラニカさん、いつもしているペンダントはどうしました?」
ブラニカさんは明らかに動揺した声色で答えた。
「今朝、ちょっとゴタゴタしていて、その時に無くしたみたいね。
家を探せばあるかもしれないわ。
それがどうしたの?」
「そのペンダントならこれですよ。
真っ黒になってますが、形は変わっていないですよね。」
僕は証拠品の中から、黒い石をブラニカさんに見せた。
その瞬間、彼女は一瞬だけ大きく目を見開いた。
「違うと思うわ。
今朝までは確かに持っていたわ。」
完全に声が震えている。
「事件の直後、僕と会っていますよね。
その時、あなたはペンダントをしていませんでした。
ブラニカさんは気を落ち着かせたいときは、ペンダントをいじる癖があるんですよ。
あの時はペンダントの代わりに、服を掴んでいましたよね。」
「・・・。」
ブラニカさんは目を閉じて沈黙している。
「正直に話してください。
いったい何があったんですか?」
「オキス、ブラニカは関係ない。
追求するのなら僕にしてくれ。」
堪えきれなくなったテイラン先輩が口を挟む。
「いいのよテイラン。
所長を殺したのは私です。
病気の母も今朝息を引き取りました。
もう隠す意味なんて無いんです。」
「ブラニカ!」
テイラン先輩が叫ぶ。
容態が悪いとは聞いていたが、まさかこのタイミングでブラニカさんの母親が亡くなるとは。
ブラニカさんは、かなり切羽詰まっていたのだろう。
「なんだこの茶番は。
犯人が自供したんだ、私は帰ってもよろしいか?」
教授が師匠の方を見る。
「待ってください。
本題はこれからです。」
教授に帰ってもらっては、せっかくのお膳立てが無駄になってしまう。
「これ以上何があるというのだ?
私とてそう暇では無いのだぞ。」
教授が怒気を孕んだ声を出す。
「当日の皆さんの動きを順序立てて確認していきましょう。」
この場において、展開を読んでいたかのごとく、相も変わらずニコニコしている白髭の老人がいる。
さあ、期待に添えるよう最後の詰めの時間だ。
今回は助っ人無しで事件解決無双が出来るかも。




