241 追跡の話でつい咳き込んだ
エストファーン大主教のアポは、あっさりととることが出来た。
そして僕達は大聖堂へ向かう。
「そういえばジェイエルもここで試しの剣を抜いたんだよね?」
僕はジェイエルに聞いた。
「ああ、だいぶ幼い頃だった。
そもそもレプリカを抜いたのが、隠れん坊で教会に忍び込んだのが始まりだった。
それから本当に・・・色々あったな。」
感慨深そうな顔をする。
隠れん坊でそんなところに隠れられたら見つけられないと思うんだけど。
「俺の遊び仲間はとんでもない奴ばかりだったからな。
教会の中に隠れようが、穴を掘って土に埋まっていようが、確実に追跡してくる。」
僕の考えを読み取ったのか、そんなことを説明するジェイエル。
というか、どれだけ人外の遊び相手なんだ。
それと土に埋まるって意味が分からない。
隠れん坊で地中に隠れる奴がいるのか?
その話をエリッタはうんうん頷きながら聞いている。
えっ、その頷きはどういう意味?
土の中に隠れるのは当たり前?
それともジェイエルならありそうだよねっていう意味?
僕がエリッタにその真意を聞こうとした時、大聖堂に到着する。
そこにはエストファーン大主教が立っていた。
「お久しぶりですジェイエル様。
再びお目にかかれたことを神に感謝します。
それにエリッタ殿も。
そちらの方は?」
隠れん坊の話で聞きそびれていたけれど、エストファーン大主教はジェイエルと面識があるようだ。
まあ、勇者選定の試しの剣がここにあるんだから当たり前か。
そして大主教は僕に目を向ける。
「お初にお目にかかります、アグレトと申します。」
僕は名前を名乗る。
役職を言わなかったのはわざとだ。
「アグレト・・・様。
なんと、レイネスの代表にお越しいただけるとは。」
アグレトがレイネスの代表だという情報が外に出るのは、特には制限していない。
だから知っていても不思議では無い。
そして大主教は世俗の情報から遠いところにいないことは確かだ。
「お忙しいところ申し訳ありません。
エストファーン大主教に伺いたいことがあり参りました。」
僕は用件を伝える。
「私で答えられることがあれば。
さあ、ご案内いたします。
お話は中で伺いましょう。」
僕達は中に案内される。
その時、ふと外が騒がしいことに気が付いた。
もしかしたらクルセイダーズに動きがあったのかもしれない。
だとしても、ここにいる僕達に出来ることは無い。
僕は大主教から話を聞くことを優先することにした。
どんな無双隠れん坊だったんだろう?




