221 遠いところで問い詰められる
僕はオキスとして命を失った後のことを師匠とエリッタに話した。
「何が『今は信じてもらえないかな?』だ!
ずっと騙して・・・。」
エリッタが掴みかかってくる勢いだ。
「まあ、そう言ってやるな。
お前は嘘が下手だからの。
私でも同じように黙っていただろう。」
師匠が僕に援護射撃を送る。
「エリッタ、すまない。
リプリアの調査した結果によると、レイネスにも神の使徒が紛れ込んでいるようなんだ。
だから話せなかった。」
僕はエリッタに謝った。
ところがそれが火に油を注ぐ結果となった。
「つ・ま・り、リプリアには本当の事を話していたってことかい?」
凄むエリッタ。
「いや違う。
リプリアは僕が話す前から気が付いていたんだ。
察しが良くて僕が驚いたぐらいで・・・。」
僕は正直に弁解する。
「あー、鈍くて悪かったな!
どうせアタイはリプリアみたいに色んな事に気が付けないさ。
あー、畜生。」
エリッタがますます荒れる。
だめだ鎮火できない。
「ふぉっふぉっふぉ。」
師匠がニヤニヤ笑っている。
追加の援護プリーズ。
「ええと、神の使徒の件に関しては、いくつか対策を立てておいたから。
戻る頃には首尾の報告があると思う。」
僕は無理矢理に話題をシフトさせる。
「アタイの知らないところで、色々やってたんだ?」
マズイ、引き戻される。
「本当にごめん。
これからは協力してもらうから。」
「当たり前だ。
アタイ抜きで上手くなんていかないんだからな。」
完全に静まったわけでは無いけれど、エリッタの矛先が僕に突きつけられるのは回避した。
「それと師匠、現在の状況を確認させてください。」
僕は現在の戦況を確認する。
ブリデイン王国は、戦闘が激化する前に銃や弾薬を少しずつ製造していった。
そのおかげでクルセイダーズの侵攻が激化した後もある程度は戦況を有利に進めることが出来た。
しかし長期戦になり、既に備蓄は尽きかけていた状況だったのだ。
ところが師匠は、上手く情報を操作し、弾薬はまだ大量にあるかのように振る舞った。
そのおかげで、敵の侵攻がいったん止まることになった。
銃を戦闘に用いたことにより、かなりの損害をクルセイダーズが被ったからだ。
けれど、しばらくすればクルセイダーズは戦力を増強しつつ、再び攻め込んでくるだろうと師匠は予測している。
王国が優勢なのにこちらから攻めない状況が続けば、弾薬不足なのはいずれ看破されてしまう。
そして僕達が持ってきた弾薬によって、ジリ貧なのがバレる前に体勢を整えることが可能になったということだ。
相変わらず師匠は策略無双だった。




