216 神の意志は加味しない
僕はジェイエルに魔法的による治療では無く、外科的な方法を提案した。
「それはお前の世界の技術なのか?」
「はい。
ただし手術を担当するのは、僕がその手法を教える前から先進的にその技術を持っていた人物です。
ブレイトンという人物です。
転生者や転移者ではありませんけどね。
この前はトレンテで心臓の手術を行っています。
彼で駄目なら、他に人はいません。」
僕はジェイエルの呪いを解くためにブレイトンさんを推薦した。
「つまり呪いを解いてやるから、お前の手下になれということだな。」
ジェイエルは不機嫌そうに言った。
「指示には従ってもらいますが、手下というわけではありません。
アストレイアの願いを叶えるに協力して欲しいだけです。」
僕はそう言う。
アストレイアという言葉にぴくりと反応するジェイエル。
二人の間に具体的に何があったのかは知るところでは無い。
しかしジェイエルは未だアストレイアを思い続けているのは間違いないようだ。
悪いけれど、説得にはそこを利用させてもらう。
「相変わらずお前が世界を滅ぼすという予言は変わっていない。
だからオキスが死んだとは思っていなかったが・・・。
結局アグレトに名前が変わろうと、運命は同じだ。
それを無視して協力しろというのか?」
以前にジェイエルと会ったときにも同じような話をした。
それから時間が経ち、僕は明確に結論を出していた。
「クルセイダーズの状況は見てますよね。」
「ああ、見ているどころか、拠点を回って神の遺物をいくつか始末してきたからな。
彼奴等が危険な存在というのは分かっている。」
知らぬ間にそんなことをやっていたのか。
さすが先代勇者。
「クルセイダーズに対抗するには、異世界の武器を使うしかありません。
そしてすでに僕が持ち込んだ技術は、この世界に流出しています。
もう少し制限をかけるべきなのは分かっていますが、もはや時間がありません。
いずれ人間同士の争いに僕の武器が使われることになるでしょう。
しかしそれは人間の意思です。
神に隷属するよりはマシだと思っています。」
「それをお前が決めるのか?」
「決めるのはこの世界の人間ですよ。
僕は彼らの意思に力を与えるだけです。」
「お前は、自分が神になったつもりなのか?」
「僕はこの世界の神とは違います。
繰り返しになりますが、自分たちのことは自分たちで決めるべきだと考えています。」
「結局・・・そうなるのか。」
ジェイエルは勇者として生きていく過程で、人間の愚かさを散々見てきたのだろう。
「協力してもらえますか?」
僕はジェイエルに聞いた。
「いいだろう、既に後戻りは出来ないところに来ている。
ならば後は進むだけだ。」
こうして近接戦闘最強を誇る勇者ジェイエルが仲間に加わった。
手術が成功すれば恐らく、以前に戦ったときとは次元の違う強さを発揮するだろう。
仲間で無双、再び。




