200 地面にいるのは人面か?
私はすぐに先頭の部隊に対して、後退の命令を出した。
そして地中のゴーレムに対して警戒を促す。
先ほどと同じようにゴーレムが地中から姿を見せる。
不意打ちで無かった分だけ対処はとれているけれど、被害は抑えきれない。
ゴーレムの登場によって、陣形が崩され押し返されていく。
こうなると永劫の回帰を再度使用しても結果が変わらない。
部隊を後退させつつ何とか陣形を組み直すことには成功した。
配下の幹部達が優秀なおかげだ。
しかしゴーレムの出現によって、かなり分の悪い状況になった。
場合によっては撤退も考慮に入れる必要があるかも知れない。
帝国軍の戦況はどうなっているんだろう?
陣形は立て直したものの、相変わらずゴーレムと味方の兵が入り乱れている。
そのため味方の魔術師部隊の支援攻撃が難しくなっている。
私の精密攻撃なら乱戦でも味方に当てずにゴーレムの足下を削れるけれど、そんな魔法が使えるのはごく一部の精鋭だけだ。
側面を攻撃していたコボルト部隊が損耗率50%を超える。
コボルト部隊には戦線離脱の指示を出す。
オーガの部隊を優先的にゴーレムと戦わせる。
ゴーレムにまともにダメージを与えられるのは、上位の騎士とオーガの部隊ぐらいだ。
その間にクルセイダーズが押し返してくる。
完全に状況が逆転していた。
私はクルセイダーズの主力に広域魔法を連射する。
それが功を奏し、敵軍の陣形に乱れが生じる。
何とか押し切られる状況は阻止することが出来た。
『アリス姉ちゃん、被害は増えるけどもっと後退した方が良い。
たぶん次が来る。』
また、ゴーレム?
この辺り一帯にも埋めてあるんだろうか?
私はルディンの助言に従って後退の指示を出した。
魔領軍はまだ無傷の予備兵力を残している。
いったん撤退して、部隊を再編した方が良さそうだ。
『ごめん、アリス姉ちゃん。
相手の作戦が読み切れなかった。』
「ルディンは悪くないわよ。
私の指示がもっと早ければ、もう少し被害が少なくなっていたはず。」
勝ちを急ぎすぎた。
私の大失態だ。
『違うんだ。
この後に・・・。』
ルディンが言いかけたところで、ふと空が曇る。
異様な気配を感じて空を見上げると・・・それは雲では無かった。
「あれって・・・神鳥!」
私は呆気にとられてしまった。
おびただしい数の神鳥の群れが太陽を覆い尽くしていたのだ。
もはや時間を戻したところで、負けの時間を引き延ばすことしか出来ない。
私は自分の敗北を悟った。
大群無双だった。




