19 ぐるっと回ってグルである
冒険者達がグルでは無いかという懸念は杞憂に終わり、ようやく町に戻って来ることが出来た。
グラマンさんからは危険な目に遭わせたことを謝られた。
別にグラマンさんが悪いわけでは無い・・・はず。
希望の家に帰ると、パメラから「心配させるんじゃ無いわよ」とジキルが殴られていた。
僕はうまく回避した。
グラマンさんから事情を説明されたカティアさんは、僕達に特に何も言わず、具が増えた豆スープを出しただけだ。
有名な冒険者エリザさんはどうしたのかというと、出かけてしまっているようだ。
その後、グラマンさんが町に帰ろうとすると、町の警備隊の人がグラマンさんに会いに来た。
どうやらチンピラ二人が捕まったらしい。
カイデウスさん達が捕まえたんだろう、さすがだ。
どうやら雑貨屋の商品を窃盗していた疑いもあるので、確認に来て欲しいとのことだ。
僕達にも事情を聞きたいので、明日迎えに来るという話だ。
次の日、警備隊の人が迎えにやってきた。
向かうのは町の警備隊の詰め所だ。
そこは拘置所を兼ねているので、チンピラ二人もそこに拘留されている。
詰め所が見えたところで、町長と擦れ違った。
警備隊の人が町長に挨拶をした。
その時、町長は険しい目で僕達を一瞥するものの、今回は何も言わずに通り過ぎた。
詰め所に到着すると、中が慌ただしい。
「どうしたんだろうね。」
ジキルが疑問を声にする。
ルディンは誘拐事件のこともあってか、過敏に怯えた表情をしている。
警備隊の人達は奥にある拘置所の方へ集まっているようだ。
僕達をここまで連れてきた警備隊の人も確認に向かう。
しばらくすると警備隊の人が戻ってきた。
「すまないが事情を聞くのは後になりそうだ。
犯人二人が死んでしまった・・・。
先に状況を調査しなければならない。」
「死んだ・・・。
何があったんですか?」
詳しいことはまだ分からないという。
血を吐いて倒れていたので確認したところ、心臓が止まっていたそうだ。
外傷は無いという。
僕達が到着する直前までは生きていたらしい。
治療院へ運び出されるチンピラ二人組。
僕達は呆然と見送るしか無かった。
二人が同じタイミングで血を吐いて死んだということは、魔法か毒によるものと考えるべきだろう。
自殺か他殺か、毒殺にせよ魔法にせよ、調べれば痕跡が残る。
なんにせよ調査待ちだ。
そんなことを考えていると、ふとルディンが見当たらないことに気がつく。
「あれ、ルディンがいない。どこに行ったんだろう?」
ジキルが辺りを見回す。
詰め所の外に出て確認してみたが、見つからない。
「もしかしてグラマンさんの所へいったのかな。」
そういえばさっきの騒ぎの中、ルディンが怯えていたのを思い出した。
さすがに希望の家までは距離があるので、手近なところでグラマンさんの所へ避難した可能性がある。
僕達は警備隊の人にルディンがいなくなったことを話し、グラマンさんの雑貨屋へ向かうことにした。
警備隊の人も辺りを捜索しておいてくれるそうだ。
雑貨屋に向かう途中、真面目で冷たそうな風貌の男に声をかけられた。
「もしかして君たちはオキス君とジキル君ですか?」
「はい、僕がオキスです。ええっと、あなたは?」
「申し遅れました。
私は町長の秘書をしておりますエクバイヤと申します。
町長から話を伺っておりまして。
町長はあなた方のことを大変心配されていました。」
僕はルディンを探しているので急いでいることを告げると、その場を後にした。
エクバイヤさんは何か言おうとしていたようだが、それどころでは無かった。
そして雑貨屋についた。
「グラマンさん、ルディンが来てませんか?
詰め所で騒ぎがあって、いなくなってしまったんです。」
「ルディン君かい?
ここには来ていないよ。」
グラマンさんは、ルディンを見ていないようだ。
「一人で希望の家に帰ったのかな。
いったん戻ってみない?」
ジキルが提案する。
「誘拐犯は死んだんだよね。
なら大丈夫だとは思うが、気をつけるんだよ。
私はこれから配達があるから、回った先でルディン君のことを聞いておくよ。」
僕達は希望の家へ戻ることにした。
詰め所での事件、ルディンの失踪、残った違和感。
そしてその日、ルディンは見つからなかった。
ワールド検索機能で人捜し無双がしたいな。




