178 簒奪する算段
私は無き終えた
そして決意した。
「貴方たちはどうするの?
彼を殺した私と戦う?」
もちろん殺されるつもりは無い。
戦うつもりなら倒すのみ。
「そんなことをしたら、オキスの最後の行動を否定することになる。
君は正常に戻ったんだね。
逆に聞くけれど、君はこれからどうするつもりなの?」
勇者ジキルが私に聞いてきた。
「彼は魔族の人間の戦いを止めるつもりだった。
それには私が魔王になるのが一番の近道よ。
だからお父様には隠居してもらいます。」
「すんなり行くのかい?」
「無理でしょうね。
戦うことになるわ。」
「だったら僕達にも協力させて欲しい。」
「勇者の力を借りて魔王になるの?
それは御免被るわ。
魔族は力が求心力の元になるの。
だから私一人で戦わないと意味は無いのよ。」
「それじゃ、見届けさせてもらって良いかな?」
「・・・。
勝手にすれば良いわ。
途中の露払いぐらいはともかく、父との戦いに手出しは絶対にしないでね。」
私は念を押した。
「分かったよ。」
勇者ジキルはそう答えた。
そして私は彼の亡骸を土魔法で結晶化させた。
クリスタルに閉じ込めた状態となった。
これで腐敗することは無い。
一段落付いたらまた会いに来るつもりだ。
そして全てが終わったら、私の寿命が尽きるまで一緒にいよう。
彼は私が自分で命を絶つことを絶対に許さないだろうから。
シーリが私と融合したおかげで、感情が戻ってきている。
私はそれを抑え込まなければならない。
それが出来ているのは、時間を巻き戻し続け擂り潰した心が逆に幸いしているのだ。
立ち止まったら動けなくなる。
とにかく前へ進もう。
私は配下に命令し、父のいる宮殿に行くための準備を整えさせた。
彼の意志は私が継ぐ。
その為には一度は断った魔神ギスケの協力も必要になる。
そして勇者の力も。
私の魔法の力は既に父を凌駕しているはず。
永劫の回帰で気が遠くなる年月、魔法の修練を積んだのだ。
私を上回るのは、すでに故人となった先代のアストレイアだけ・・・そう思っていた。
でも違っていた。
私は四天王グレドキープをけしかけて十万の軍勢を帝国に送った。
それを彼は一瞬のうちに魔法で消滅させたのだ。
もはや魔法の域を脱している。
そんな魔法、私には使えない。
私より少し先に生まれただけのはずなのに、永劫の回帰を使う私よりも強力な魔法を使える存在となっていた。
彼には敵わない。
彼に私を傷つける意志があれば、死んでいたのは私のはず。
あの魔法を使われていたら、時間を戻したところで確定した死からは逃れることは出来ないのだから。
それに比べれば、父が小物にすら思えてくる。
しかし油断するつもりは無い。
全力で魔王の座を奪い取る。
今の魔王は無双では無い。




