174 吐血には薬でも付けとけつーことか
僕は血まみれで床に膝を突いていた。
ループは止まったらしい。
「ゴフゥ。」
僕は口から血を吐き出した。
ジキルが僕に駆け寄ってくる。
パメラとカシムはアリスに対して戦闘態勢をとる。
けっこう致命的なダメージを受けている。
出血も酷い。
アリスの魔法は大したものでは無かった。
その後の時間操作が酷すぎるのだ。
なんだろうこれは?
例えるなら上手くいくまでセーブ&ロード、そして対戦中にポーズボタンを連打して相手のタイミングを狂わせる禁じ手だ。
友達いなくなるよ。
「十年経ったわ、すいぶん遅かったのね。」
アリスが口を開く。
そして攻撃魔法が飛んできた。
緑色の弾だ。
ジキルがそれを切り裂く。
しかし何故か顔をしかめるジキル。
「今はアリスと呼べばいいのか?
とにかくまずは状況を話し合うべきだ。」
僕はアリスに呼びかけた。
さらに緑色の弾が僕めがけて飛んでくる。
その度にジキルがそれを切り裂く。
余裕で迎撃しているように見えるのだけれど、ジキルの様子がおかしい。
ついに膝を付く。
それを見たパメラとカシムがアリスに攻撃を仕掛けようとする。
「待って、みんな下がって。
ゴホッゴホ。
戦いに来たわけじゃないんだ。」
僕は血を吐きながらみんなに呼びかけた。
さすがにそろそろ止血しないと本気でマズイがそれどころでは無い。
パメラとカシムは渋々後ろに下がる。
しかしいつでも攻撃できる態勢をとっている。
そしてジキルは顔を青くして呼吸を乱していた。
もしかしてさっきの緑色の弾は毒?
ジキル一人なら、さっきの弾ぐらい避けられたはずだ。
僕が動けないから剣で切るしか無かったのだ。
「ジキル・・・動ける?
僕は・・・大丈夫だから、下がって。
何とかする算段は・・・あるから。」
僕も満身創痍だが、ジキルの状況も悪い。
ジキルは悔しそうに、フラフラした足取りで後ろに下がる。
僕はアリスの方を見た。
表情の無い、氷のような顔だ。
「時間はかかったけど・・・辿り着いたよ。」
「全て知っているわ。
ずいぶん回り道をして遊んでいたようだけど、今頃のこのこ出てきてどんな顔をするかと思えば・・・。
もういいわ、死になさい。」
アリスは本気で僕を殺すつもりか。
さっきから頭の中が賑やかだ。
ずっとシーリが叫んでいる、自分を出してと。
シーリを出す前にある程度は話し合いをしたかったのだけど、さすがに無理そうだ。
僕は賢者の杖に手をかける。
賢者の杖とリンクす・・・。
カランという音が響く。
賢者の杖が吹き飛ばされた音だ。
「させると思ってるの?」
アリスの魔法だった。
ちょ、マズイ。
本当にマズイ。
ずっと彼女の無双ターンだった。




