173 夢幻のような無限ループ
アサシンに襲われるイベントはあったものの、その後は何事も無く魔領北の宮殿の近くまでたどり着いた。
街を抜けてたその奥に広大な敷地があり、立派な宮殿が建立されているという。
僕も生後しばらくはそこにいたはずなのだけれど、あまり記憶には残っていない。
僕達が街に入ろうとすると、明らかにただ者では無い雰囲気のある魔族の女が立ち塞がった。
暗黒騎士クリセリオンが相対する。
「貴殿、何用か?」
クリセリオンが警戒し声をかける。
「あなたに用はありません。
タレンティ、どの顔で戻ってきたのですか?」
魔族の女はタレンティを睨む。
「ヴェネス、約束を果たすために戻ってきました。
連れてきたのです、オキス様を。」
「知ってますよ。
アサシンギルドを使って実力は確認しましたから。
アリス殿下と謁見する権利は有するでしょう。
しかし命の保証は出来ませんよ?」
「結局、アリスに会わせてもらえるということかな?」
「はい。
しかし分かっていらっしゃいますか?
殿下のお怒りを。」
え、怒ってるの?
まだ会ってもいないのに?
「いったいどういう?」
「ご自分でお確かめください。
重ねて言いますが、命の保証は出来かねます。」
僕達は街をスルーして、そのまま宮殿に案内された。
宮殿は僕が赤ん坊の時に一度燃えたはずなのだけれど、そんな片鱗は全くなかった。
そして凄まじい広さの謁見の間に通された。
ヴェネスに促され、僕だけが前に進む。
いた。
見た目は前世と全く違っていたけれど、何故か確信できる。
彼女だ。
笑っちゃうぐらい美少女になっていた。
どこぞの変人皇帝を超えるレベルだ。
前世の顔は中の上ぐらいでそこまで美人では無かった。
そこで僕は、ついやらかしてしまった。
「ぶっ。」
吹き出した。
心構えが出来ていなかった。
いや、ある程度覚悟を持ってここに来たはずなのに、覚悟のベクトルがズレていた。
次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
魔法だ。
これは物理変換が強すぎて吸収できない。
神の残滓を使い、肉体強化を図る。
そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。
魔法を使ったのはアリスだ。
僕は「いきなり何をするんだ」と言おうと思った。
しかし出来なかった。
次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
魔法だ。
これは物理変換が強すぎて吸収できない。
神の残滓を使い、肉体強化を図る。
そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。
・・・ちょっと待て。
さっきやらなかったか?
状況と記憶のズレで混乱する。
次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
魔法だ。
これは物理変換が強すぎて吸収できない。
神の残滓を使い、肉体強化を図る。
そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。
まずい、ループしてる。
時間操作だ。
状況を戻されてる。
ギスケが言っていた。
時間が戻った後、記憶がタイムリープすると。
つまり物理的には時間が戻され、現在の記憶が過去に戻る。
そして過去が現在になる。
そんなことを考えている間に、何度目か分からないほどループが行われる。
そしてついに回避に失敗する。
腕や足に岩石が突き刺さる。
ヤバいと思った瞬間、再び状況が戻る。
傷は無くなっていたけれど、痛みが記憶からフィードバックされる。
時間が戻されるから仲間が助けに入ることも出来ない。
延々と切り取った時間の中で精神をすり減らされる。
なんて能力だ。
そのうち、滅茶苦茶強い強敵が現れて窮地に立たされるんだ。
僕はそんなことを思ったのを思い出した。
これが時間操作無双か!




