172 成功しない正攻法
僕は仲間と合流した。
どうやら後を付けられてはいないようだ。
「何かあったの?」
ジキルが僕の様子を気にかける。
「四人組に襲われたんだ。
アサシンギルド経由の依頼らしい。
だれが依頼したのは分からなかった。」
僕は事情を説明する。
「そう、災難だったね。」
ジキルはそう言った。
パメラやカシムも同じような反応だ。
え、それだけ?
いや、逆に考えよう。
もしジキルが襲われたとしよう。
そして僕がそれを聞いたら・・・同じ反応だ!
面倒に巻き込まれたぐらいの感覚しか無い。
「みんなに一つ聞いておきたいんだけど。
僕ってどのぐらい強いと思う。」
僕のその質問にみんなが、何を言っているんだろうという不思議そうな表情を浮かべる。
「間違いなくこのメンバーでは最強だよ。
僕達三人がかりでも勝てるかどうか微妙なぐらい。」
ジキルが答えた。
まあ、反則チートの賢者の杖があるからそうかも知れない。
「賢者の杖が抜きだったら?」
「それでも僕より強いよ。」
あっさりとジキルが答える。
「模擬戦でいつも負けている気がするんだけど?」
賢者の杖抜きでは、一度もジキルに勝ったことは無いのだ。
「それはオキスが手加減しているからだよ。
僕達と戦うときは、風の魔法剣を使って怪我をさせないようにしてるでしょ。
模擬戦の時、僕はオキスを殺すつもりでやってるんだよ。
それだけ本気でやっても、絶対に死なないとも思ってるけど。」
ひぇ、殺すつもりでやってたのか・・・。
「でも、模擬戦で怪我したら損でしょ。」
風の魔法剣なら吹き飛ばすだけで致命傷にはならないから、確かに模擬戦ではよく使っていた。
「それにわざわざ僕が戦えるルールでやっているし。
オキスが接近戦をやめて、空中から強力な魔法攻撃を連打してきたら対処しようが無いよ。」
それ対戦ゲームでやったら怒られるよ。
禁止技だ。
「いや、それをやったら訓練にならないし。
やっぱり正攻法だったら僕の方が弱いんじゃないかな。」
「縛り有りで強い弱いに意味は無いよ。
実戦だったら僕はオキスには絶対に勝てない。
実際、本気で僕を倒そうと思ったらいくらでも方法は思いつくんじゃないの?」
「・・・。」
確かにやりようはある。
完封することも可能だろう。
「もしかして本気で気がついてなかったのかしら?」
パメラが突っ込んできた。
残念ながら、気が付いてなかったよ。
でもね、分かっているよ。
そのうち、滅茶苦茶強い強敵が現れて窮地に立たされるんだ。
今はその前触れのフラグが立っているに過ぎない。
そうに決まっている。
トラウマフラグは無双だ。




