139 わなわなする罠
カシムが次の床破壊の準備に入る。
「ちょっとまっふぁ。」
僕が止めに入る。
目の前に階段がある。
どうやらここが地下への入り口だ。
僕達は階段から地下へ降りる。
もう無茶苦茶だ。
そして地下に到達すると、そこには大きな扉があった。
破壊の準備に入るカシム。
「ちょっとまっふぁ。」
僕が再び止めに入る。
とりあえず開くかどうか確認しようよ。
ジキルが扉に手をかける。
ギーっという音と共に扉が開く。
破壊する必要ないじゃん。
中には師匠がいた。
そして最精鋭と思われる騎士達が八人、師匠の前に立ち塞がっていた。
「お久しぶりでふぉ、しふぉう。」
しまった。
僕はマスクを外す。
「お久しぶりです、師匠。」
やり直した。
「うむ、久しいな。
予想以上にここに来るのが早かったの。
まさかあれだけの兵力をもう片付けたのかの?」
「いえ、行き違いになったようです。
倒したのは三名だけですよ。」
「ほう、面白い状況になっているのだな。」
「師匠、そこをどいていただけますか?」
「どくと思うておるのか?」
「無理でしょうね。」
ブリューデンとパメラ、そしてネリネが後方に待機する。
僕、ジキル、リプリア、カシムが前衛に出る。
師匠の合図と共に騎士達が僕達に向けて突撃してくる。
ジキル、リプリア、カシムが騎士達に相対する形で前に出た。
僕の標的は師匠だ。
そして戦いが始まるかと思われたその時、部屋に異変が生じる。
突然床が光り輝く。
前に出た三人を拘束するかのごとく激しい光を放つ。
「ぐふぁ。」
床にひれ伏す三人。
トラップだ。
騎士達が殺到してくる。
装備品の力なのか、彼らにはトラップが効いていないようだ。
僕は風の魔法で右側の壁に体を寄せる。
そのまま垂直状態で忍者のように壁を駆け抜ける。
トラップ回避し一気に師匠に近づく。
「ヌシの成長ぶりを測るとしようかの。」
師匠は僕がたどり着くことを予測していたのだろう。
余裕の表情で杖を構え迎撃の態勢をとる。
「残念ながら勝負にはなりませんよ。」
僕は師匠との距離を詰めながらそう言った。
そして突然破壊される師匠の杖。
意表を突かれて師匠は魔法の発動が遅れる。
師匠の首元には僕の剣が添えられている。
「ライフルによる狙撃です。
魔銃とは精度が違うんですよ。」
僕は師匠に言った。
ネリネの後方支援だ。
ギスケから弓の名手を借りて、狙撃の訓練をさせたのだ。
もともと師匠とまともに戦うつもりなど僕には無い。
「なんと、謀りおったな。」
僕との対決を楽しみにしていたらしい師匠が言う。
「師匠には謀られっぱなしですからお返しです。」
ようやく準備していた仕掛けが役に立った。
他にもいくつか準備していたのに、ほとんど使用しないで終わった。
あっけない幕切れだった。
ただ気になることが一つ。
師匠のセリフが若干棒読みだったのだ。
ガスマスクの意味の無さ無双だった。




