130 ミイラ男の語る未来
ミイラ男、力を抑えているようだけど見ただけで分かる。
とんでもなく強い。
たぶん師匠やエリザさんを超える。
この世界、まだまだ化け物無双がその辺りをうろついているようだ。
「あなたの話は伺ってます。
友達を助けてくれたそうで、ありがとうございます。」
僕はミイラ男にお礼を言った。
「捜し物のついでだ。
それもようやく見つかったがな。」
ミイラ男はそう言うと、腰に下げていた剣を抜いた。
そして僕に殺気を向ける。
突然のことにみんなが固まる。
唯一ジキルだけがミイラ男に相対する姿勢をとった。
「どういうことですか?」
僕は聞いた。
いつでも対応可能なように神の残滓を有効にしているが、一撃すら耐えきる自信は無い。
僕が強くなっても、すぐにそれ以上の化け物が出現する展開はいい加減なんとかして欲しい。
「いずれお前は人を滅亡寸前にまで追い込むことになる。
その前に俺の手でケリを付ける。」
僕に殺気を向けてはいるが、まだ斬りかかっては来ない。
「全く話が見えないんですが。」
僕はすっとぼけてみる。
なんとなく分かってるんだよね。
「俺がお前の父親だと言えば分かるか?」
うん、予想はしていたよ。
先代勇者のジェイエルだね。
「父さんと呼ぶべきですか?
あなたの話を聞いたときに、そんな可能性もあるかと思っていました。
しかし滅亡とかそう言う話と繋がらないのですが。」
「これからやってくる神よりも、お前は多くの人を殺すだろう。
お前の持っている力はそういうものだ。」
実はそれも分かってるんだよね。
一応しばらくすっとぼけてみよう。
「それが魔王アストレイアの意志。
あなたも同意して協力したのでは?」
だから僕が生まれたわけだしね。
「俺が協力したのは神から人を救う為だ。
その結果生み出されたのは、人を破滅に向かわせる化け物だった。」
化け物とは酷いな。
そもそも破滅の力を持った向こうの世界は滅んでいない。
「力は使い方次第ですよ。」
「そうだな、お前は力を正しく使えるだろう。
だがその後はどうなる?」
「それはその後の人達次第です。」
「だからお前は滅亡を招くんだ。」
爆発するような殺気。
勇者ジェイエルは剣を振った。
見える。
ジキルが間に入って邪魔をしたおかげだ。
僕は素早く後退する。
幸いなことにジキルは無事だ。
それより驚きなのは、ジェイエルの剣の軌道にジキルがいたはずなのに、何故かジキルがスルーされている。
ジキルが唖然としていた。
どうやってすり抜けさせた?
どうやら僕以外は相手にする気が無いようだ。
まあ勇者だし、余計な犠牲は出さないだろう。
ということで、とんでもなく勝ち目の無い戦いが始まろうとしていた。
先代勇者無双だ。




