127 近状のご近所問題
「元の世界・・・。」
転生して10年以上経過している。
僕は元の世界の事が、凄く遠い昔のように感じている。
異世界の辞典で情報は手に入るけれど、既に自分のいた世界という感覚がなくなっている。
「元々俺は、こっちに呼び出されただけだ。
だから帰る方法は必ずあると思っていた。」
「探していたんだね。」
僕は帰る方法など考えたことも無かった。
ギスケは帰りたかったのだろうか。
「探ってはいたが、見つけたのはタマタマだ。
だが、向こうでは色々やり残したことがある。」
「帰るつもりなの?」
「残念ながら、こっちでやり残していることの方が多い。
まだ先の話だ。」
「アンタはどうする?
その気があるなら、いつでも向こうに送ってやるよ。」
そんなに便利に
「いや、やめておくよ。
ギスケと違って転生者だし、僕は向こうに未練はない。」
「そうか。
それとまだ重要な話は残ってるんだ。」
ようやく神魔砲の話か。
「実はこの世界は滅びかけてる。」
ん?ええと?ん?
「ハ?」
僕は自分の行動にデジャブーを感じた。
「実は隣接する異世界で行われた儀式に巻き込まれていて、それに対処しないとマズい状況なんだ。
そっちに世界を滅ぼそうとする馬鹿野郎がいてな。
以前にデカい地震があったのを覚えてるか?」
「うん、そう言えばあったね。
こっちでは地震が少ないみたいで、みんな世界の終わりでも来たような怯え方だった。」
「あれはこっちの世界と隣接世界の接触で起きた地震だ。
儀式を防ぎきれなかったせいだ。
その件はもう少しで片付きそうなんだが、今度はこっちの世界で厄介ごとだ。
勘弁してもらいたいぜ。」
ギスケが何かやっていたのはこの件だったようだ。
「で、世界に穴を開けて行き来していたら、元の世界への道を発見したんだ。」
完全に別の物語りが進行していたようだ。
「僕に何か出来ることは?」
「隣接世界の件はいずれ協力を頼むことがあるかも知れないが、当面はこっちの世界をなんとかしたい。」
隣接世界がどんなところか気になるけれど、まずは足下が重要だ。
「まず神魔砲を潰そうと思う。」
僕はそう提案した。
というよりそれしかない。
僕は続けて言った。
「師匠のことだから、当然そういう流れになることは予測しているはず。
おそらく鉄壁の防御を固めているだろうね。
それに勝つには、師匠の予測の上を行く必要がある。」
師匠の予測を超えるのはやっぱりアレしか無い。
「俺はここから動くのは難しい。
頼めるか?」
魔王と異世界の対処を負担しているギスケは忙しい。
「まあ、なんとかなると思う。
その代わりちょっと欲しい人材がいるんだけど。」
僕はそう答えた。
こうしてブリデイン王国の神魔砲クエストが始まろうとしていた。
そろそろ師匠無双を止めなければならない。




