117 生まれる埋める技術
僕は問題解決のための準備を進める。
持ち込んだ材料だけでは足りないので、ドワーフ達に指示を出し必要な物を集めさせた。
その間、サリアとブリューデンに岩竜の足止めをさせた。
岩竜の巣と繋がったポイントは鉱山の奥なので、ブリューデンは人化させないと入れない。
そして人化したブリューデンは意外に強い。
その力はクルタトルの甲羅すらかち割りそうなレベルだ。
サリアも精霊による攻守に隙が無く、こちらもかなり強い。
伊達に勇者ジキルとパーティーを組んでいたわけではない。
二人は周辺に出没していた岩竜を駆逐し、接続ポイントの確保に成功した。
しかし問題はここからだ。
岩竜の巣はかなり深く、そして複雑だ。
僕が加わって三人で戦ったとしても、どれだけ時間がかかるか分からない。
ではどうするか?
臭い物には蓋をする。
繋がった場所は埋めてしまえば良いのだ。
ドワーフ達はその案を既に実行していた。
怪我人を出しながらも、一度はなんとか繋がってしまった場所を埋めたのだ。
しかし繋がった場所を道と認識してしまった岩竜は、塞いだ場所を掘り進めてしまう。
そして埋める計画は失敗に終わったのだ。
僕は準備を完了させると、ドワーフ達に必要な穴を開ける指示を出した。
サリアとブリューデンに護衛させつつ、必要な岩盤をいくつか掘ってもらった。
そしてそこに僕が作成したダイナマイトを放り込んでいく。
穴を掘ってもらったのは、爆発を岩盤の内側から発生させるためだ。
外から爆発させても表面が割れるだけになってしまう。
大きく粉砕させるためには、岩盤の位置側に放り込む必要があるのだ。
僕の魔法でもダイナマイトぐらいのパワーは出せるのだけど、岩盤の内側からの爆発を発生させることができない。
そして魔法の場合は僕が現場にいないといけないので、一歩間違うと自分が生き埋めになってしまう。
ということで今回は魔法という選択肢は採れなかった。
準備を追えた僕達は、いったん鉱山の外へ退避する。
そしてリモートで点火した。
念のため距離をとって待避していたため、ショボい音しか聞こえてこない。
たぶん上手くいったはずだ。
僕達は現場に戻った。
見事に接続ポイントが崩れていた。
大きな岩盤が崩れ、道だった場所を完全に塞いでいる。
さすがにこのレベルになれば岩竜も掘り返すことは不可能だろう。
岩竜クエストは達成した。
今後はドワーフ達も岩竜の巣に繋がってしまうポイントを掘ろうとはしないだろう。
僕はドワーフ達に、採掘に関する科学技術提供を行った。
ダイナマイトの製造方法や効率的な破砕方法、現時点で製造可能な採掘道具などの情報だ。
手先が器用なので、知識さえ与えればすんなり必要な物を作ることが出来る。
今まで手が付いていなかった固い岩盤が集中する場所も、これで開発が可能になるだろう。
だいぶ好感度も上がり、そしてドワーフを20人ほど雇うことに成功した。
その中には最初に僕と話したドワーフが含まれている。
名前をポルフィーと言った。
そしておじさんだと思っていたドワーフは、実は男でも中年でも無く、少女だったようだ。
見た目では全く判断できない。
ショックだった。
そしてブリューデンにポルフィーとその彼氏であるセイゼルを乗せ、マイホームである古代遺跡に帰還した。
その他のドワーフは、自分たちの工具などを持って後から来ることになっている。
本格的なプラント建造にはまだ少し時間がかかりそうだ。
困ったことがある。
ポルフィーとセイゼルはとても仲良しなのは良いのだけれど、髭面のおっちゃん二人がイチャイチャしているように見えて若干気持ち悪い。
気にしないようにすべきか。
サリアもブリューデンも全然気にしていないし。
マイホームでお留守番をしていたエリッタは僕達の帰還後、その光景を興味深げに見ていた。
とても嬉しそうにしていたんだけど、なんでなんだろう?
古代遺跡はこれやらやってくるドワーフを収容できる程度の部屋数はある。
元々罠部屋があった場所がほとんどだが、もちろん撤去済みだ。
現在、これを居住スペースにリフォームしている。
他のドワーフ達が到着する前に、快適な社宅が完成しそうだ。
目指すはホワイト企業無双か?




