110 劣りすぎる囮
今回魔法が効かないゴーレムが相手のため、賢者の杖による魔法は役に立たない。
否、使い方次第では戦い様はあるのだけれど、その必要も無いだろう。
「さあ、今こそ僕のユニークスキルの出番だ。」
僕は言う。
「アタシ?」
シーリは驚いた顔で僕を見る。
「そうだ、行けシーリ!」
これが僕のユニークスキルの力なのだ。
「ええええ。」
やけっぱちの顔でゴーレムに向かっていくシーリ。
視覚センサーに反応しているのだろうか、ゴーレムがシーリを狙う。
問題は魔法を霧散してしまう能力がどこまでシーリに影響するかという所だ。
まあ、たぶん大丈夫だろう。
神鳥の魔法無効の影響を受けていなかったのだから。
巨体にもかかわらず素早い動きでシーリに迫る。
シーリは全く反応できない。
そして体重が乗ったと思われるゴーレムの強烈なパンチがシーリにヒット・・・せず素通りする。
バランスを崩すゴーレム。
何ともないシーリ。
その隙に僕は用意していた簡易ポンプ式水鉄砲をゴーレムの間接部に当てる。
ゴーレムの狙いが僕に移るが、すぐにシーリの後ろに隠れる。
情けなくなんか無いよ、だって自分のスキルの力を使っているだけなんだから。
そして再びゴーレムがシーリを殴りにかかる。
ゴーレムは腕を振り上げた。
しかしそのモーションからほとんど動かなくなる。
接着剤が良く効いているようだ。
ダメ押しで他の部分にも丁寧に塗布する。
「よし、ゴーレム退治完了。」
余裕の勝利だった。
「アタシの使い方間違ってるよ-。」
いや正しい。
一段階目の力が異世界の辞典、二段階目の力が囮無双だ。
「凄い、こんなアッサリ・・・。」
サリアは唖然としているようだ。
まあ、堅そうな装甲を無理に壊そうとすれば面倒な戦いになっていただろう。
同じ土俵で戦う必要は無い。
この世界はチート級に強い者達が多すぎる。
僕は勝つには、ルールを変え、ゴールポストを動かすしかないのだ。
僕は動かなくなったゴーレムのメンテナンス用パネルを開く。
これを開くのにちょっとした工具が必要になるのだけれど、もちろんそれも持ってきている。
無駄に遺跡引きこもり生活を送っていたわけでは無い。
既に解析済みなのだ。
しかしゴーレムの管理権限を取得するレベルでの解析は出来ていないので、ゴーレム無双は出来そうに無い。
魔術師オルドウルが生きていれば・・・。
本当に惜しい人を亡くしたとしみじみ思った。
ゴーレムの中から認証キーを取り出す。
これさえあれば罠を発動させずに遺跡内の移動が可能になる。
ある意味セキュリティーホールだ。
しかし遺跡に管理者がいたら、このキーを無効にすれば済む話なのかも知れない。
そんな人物いそうには無いけれど。
僕達はサリアのお目当てである人化の神の遺物と、僕の目的の情報端末を目指して奥へと進むことにした。
違う方向に無双化してる気がする。




