108 スルーする国の人達
僕とエリッタは古代遺跡の入り口にたどり着いた。
エリッタは僕とそこにいた少女の間に入り、警戒姿勢をとる。
僕は少女に話しかける。
「何かご用ですか?」
間抜けな感じがしないでも無いけれど、他の言い方も微妙だろう。
「あなたがオキスさんね。
私、サリア。
ジキルの紹介で来たの。
皆さんよろしく。」
そうか、ジキルは面倒ごとを僕に回してきたのか。
「私はシーリ。
さっきの面白い踊りだったねー。
ドラゴン乗りたいな-。」
シーリが話に入って来た。
とりあえずここに来た目的が聞きたいので、しばらく黙っていて欲しい。
「踊り?
あれは精霊魔法よ。
魔力を周囲に送り込んで、精霊の力を強めて具現化するの。
それとあのドラゴンはブリューデンっていうんだけど、後で乗ってもらうわ。」
なんだかドラゴンに乗ることが決定事項になっている。
「アタイはエリッタ。
まずここに来た目的を聞きたいんだけど。」
エリッタが話を本題に戻す。
「ブリューデンを人間にするのを手伝って欲しいんだ。」
そうサリアは言った。
「・・・。
ここではそういったご用件は承っておりません。
というか無理です。」
僕は丁寧にお断りした。
これからやらなければならないことが沢山あるのだ。
「クエルク自治領にある古代遺跡にあるらしいの。
ドラゴンを人間に変身させる神の遺物が。」
サリアは古代遺跡というキーワードを出してきた。
各地を巡ってようやく探し当てたのだということだ。
「協力しましょう。」
僕は快諾することにした。
ジキルの紹介だしね、やっぱり友人の頼みは重要だよね。
「本当?よかった。」
サリアが喜ぶ。
そして後ろで伏せっていたブリューデンという名の炎竜が立ち上がる。
両足で立ち上がり羽を広げる。
さすがに大きい。
そして羽をバッサバッサと動かす。
喜んでいるのかも知れないが、吹き飛びそうになるのでやめて欲しい。
サリアがブリューデンに止めるように言った。
動きを止めるブリューデン。
助かった。
「ところでクエルク自治領の古代遺跡なんて聞いたことが無いんだけど。」
「あの国は色々とやる気が無いから、地元の人は知っていたけど、みんなスルーしてたの。」
そうか、田舎だしなあ。
冒険者も力量不足なのが揃ってるし、実生活に影響しなければそりゃスルーするか。
僕は細かい話を聞いた。
要するに古代遺跡にあるという、人化の神の遺物を回収すれば良いのだ。
サリアは何度も古代遺跡に突入するものの、どうしても先に進めないところがあったようだ。
ブリューデンはサイズが大きすぎて入れなかったらしい。
エリッタは仕事があるので残留してもらう。
何かブツブツ言っていたような気がするのだけれど、二人で出かけたら仕事が進まないんだよ。
僕は遺跡攻略の準備を整えた。
こうして僕は炎竜に乗ってクエルク自治領の古代遺跡に向かうことになった。
終盤に良くある移動手段無双となった。




