【序】第FIRST章:三節 〜公共の敵 ‐ Public enemy - 〜
――戦死者を選ぶ者 三節 ‐ Valkyrie ‐
神は死に、超然たる自然のみが残った。
聖堂の縦軸をなす身廊に並べられた木製の長椅子。その最前列には、まるで喪中の雰囲気をまとい座る四人の影があった。
「“蛇を喰らう者たち”による“無限なるモノ”の欠損――予想されていたことではある」
漆黒の背広がはち切れんばかりに筋骨隆々たる、赤銅色の髪を持つ大男が言った。
「システムに不具合はつきもの、か」
長く真っ白い顎鬚が漆黒の背広に目立つ、土色の髪を持った小柄な小太りの男が語を繋いだ。
「しかし私たちの処理能力にも限界があります」
漆黒のスカートスーツに豊満な双丘を隠す、水色の長い髪を持ったスレンダーな長身の女性が苦言を呈す。
「わたし達が管理制御すべきは自然環境であり、現状はその再生活動です。“無限なるモノ”が本来は管理制御すべきヒトの世を御するのには限度があり、元来わたし達の役割たる環境再生に支障をきたすまでに至っては、ヒトの世を一時隔離するという手段を選択せざるおえない可能性があります」
漆黒のパンツスーツを着こなす、エメラルドグリーンの髪をショートボブにした女性が苦渋の選択肢を述べる。
「ヒトも自然の一部、切り離すことはありえない。それに、最期の人間――彼と彼女との約束がある」
四人の語を背中で聴いていた背広姿の人物は、祭壇の虚無を見上げながら呟いた。
「――すべては生命未来の為に」
そう言うと背広姿の人物は向き直り、疲れきった人の微笑みを浮かべた。
「すべてを肯定し、再構成しよう」