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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久4年・元治元年2月
92/506

温泉湯治

 話はここから始まった。

「今日、容保公に呼ばれて行ったら、温泉でゆっくり休むといいとありがたいお言葉をいただいた」

 近藤さんが、ご機嫌な様子で話をしていた。

「そりゃよかったじゃないか」

 土方さんも嬉しそうだ。

「本当は、江戸に帰りたかったんだけどな」

 近藤さんがため息をつきながら言った。

 近藤さんは養子で、養父である周助さんが昨年から中風という病気にかかってしまい、江戸に帰ってくるようにという手紙をもらっていた。

 ちなみに中風とは、今でいうと、脳出血などで麻痺などの障害が出ていることを言うらしい。

 近藤さんは、何回か容保公に江戸に帰りたいと言っていたのだけど、芹沢さんが死亡した辺りで、新選組も安定していないからということで、許してもらえなかった。

 今回、その代わりに温泉にでも行って体を休めてきなさいという意味だろうか?

「江戸は無理だろう。その代わり、温泉にゆっくりつかって体を休めるといい」

 土方さんも、私と同じことを考えていたらしい。

「歳も一緒に行くか?」

「近藤さんと俺が一緒に行ったら、新選組はどうなるんだ。俺は留守番しておくよ」

 二人が一緒にいなくなったら、新選組は空中分解してしまうかもしれない。

「お雪も連れて行ってやろう。あいつも喜ぶだろう」

「それがいい」

 二人で温泉旅行か。いいな。

「護衛には、誰を付ける?」

 土方さんが近藤さんに聞いた。

 そうだ。護衛というものが必要じゃないか。近藤さんは、新選組の局長なんだから。

「護衛なんていらんよ。ただでさえ忙しいのに、俺のために隊士を付けるのは申し訳ないだろう」

「でも、近藤さんは局長だ。護衛の一人や二人は必要だろう。できれば10人ぐらいつけたいが、そうなると、隊務ができなくなるからな」

 そうそう、護衛は必要だよ。誰を付けるんだろう?わけもなくワクワクしている私。

 そんなときに、藤堂さんが入ってきた。

「なら、護衛は平助と蒼良(そらでいいか」

 近藤さんが入ってきた藤堂さんと土方さんの横に座っていた私を見ながら言った。

「えっ?」

 藤堂さんと私で声をそろえて言った。

「ちょうどここにいるから、その二人でいい。平助と蒼良なら二人だけでも立派な護衛になるしな」

 近藤さんは笑いながら言った。

「私も、温泉に行っていいのですか?」

 突然の話の成り行きが信じられなくて、近藤さんに聞いてしまった。

「俺の護衛だからな。温泉に行けるぞ」

「わーい」

 素直に喜んでいる私の横で、怪訝そうな顔をしている土方さん。

「お前、断れ」

 聞こえないぐらい小さな声で私にそう言ってきた。

「なんでですか? 温泉に入れるのですよ」

「お前は護衛が目的じゃなくて、温泉が目的かっ!」

「も、もちろん、護衛ですよ」

「お前に護衛が務まると思っているのか?」

「なら、土方さんも行けばいいじゃないですか」

「俺まで隊を空けたら大変なことになるだろうが」

「大丈夫ですよ。私が土方さんの分まで温泉を楽しんできますから」

「やっぱり、温泉が目的じゃないかっ!」

 ずうっと二人でこそこそやっていたら、

「なに二人でこそこそ話してるんだ?」

 と、近藤さんに言われてしまった。

「近藤さん、平助はいいが、蒼良は護衛には向かないと思うが」

 なっ、土方さん、突然何を言い出すのですかっ!

「そうか?」

「左之とかの方がいいと思うが」

「でも、お雪も一緒だろう。お雪が蒼良に会いたがっているから、一緒にどうかなと思ったんだが」

 お雪さん、ありがとうございますっ!

「私も、お雪さんにお会いしたいです」

 はいっ!と、わざわざ手をあげて言ったのに、

「ばかやろう」

 と、土方さんのげんこつが落ちてきた。

「お雪さんは、近藤さんの女性だろう。男のお前が会いたがってどうするんだ?」

 しまった。今は男だった。

「蒼良は男だが、なぜか蒼良とお雪が話しているのを見ても、何とも思わないんだよな。むしろ微笑ましいぐらいだ」

 近藤さんがそう言った。

 そりゃ、女同士が話をするのは普通のことでしょう。

「蒼良は、いやか?」

 近藤さんが私に聞いて来た。

「嫌なんて、そんなことないですよ。喜んでお供させていただきます」

「護衛だろうが」

「あ、護衛します」

 土方さんに言われて言い直した。

「平助は? 何か用事とかあったか?」

 近藤さんが、今度は藤堂さんに聞いた。

「私も、大丈夫です」

「なら、二人とも頼んだぞ」

 ということで、あっさりと温泉行きが決まった。


「お前っ! 俺は知らんぞっ!」

 部屋に戻ったら、開口一番に土方さんに言われてしまった。

「な、何がですか?」

「何がじゃねぇっ! 温泉って言ったら、裸で風呂に入るんだぞ」

「当たり前じゃないですか。着物着て入りませんよ」

 水着があるならともかく。

「お前、男湯に入るのか?」

「なんで男湯なんですか。女湯に決まっていますよ」

「でも、近藤さんにはお前が男だということにしてあるんだが」

 そうだ、私、今男だったわ。

「もし、近藤さんにお前が女だってばれたら、どうなるかわかってんだろうな?」

 ど、どうなるんだ?

「切腹だ」

 ひぃぃぃぃぃっ!

「俺がそうならないように色々考えて行っていたのに、お前は自分でだめにしやがってっ!」

「だって、温泉に行きたかったのですから、仕方ないじゃないですか」

「お前の頭の中は、温泉しかないのかっ! 京に来る前も、温泉って騒いだことがあったよな」

 そ、そんなことがあったか?

「今更グタグタ言っても、近藤さんが決めたことだから仕方ねぇ。お前、絶対に女だってばれねぇようにしろ。わかったな」

「ばれたらどうなるんですか?」

「切腹だ」

 切腹なんて、冗談じゃない。ばれないように、頑張ります。

「ところで、近藤さんはどこの温泉に行くのですか?」

「お前、行く場所も知らないで騒いでいたのか?」

「土方さんは知っているのですか?」

「当たり前だろう。このあたりで温泉と言ったら、有馬だろう」

 ああ、有馬温泉。

「知ってるか?」

「有馬温泉ぐらい、私にもわかりますよ。温泉で有名なところじゃないですか」

 日本の三大名湯の一つになっている。

「お前のことだ。場所はわからんだろう」

「わかりますよ。ひ……」

「ひ?」

 兵庫県と言おうとしてしまった。兵庫県は、江戸時代では……

「摂津です。摂津」

「そうだ。摂津だ。ひ、なんて言葉が出たから、何を言い出すんだと思っていたら、ちゃんとわかっているじゃないか」

 あぶない、あぶない。

「場所までわかっているのだから、大丈夫ですよ」

「場所がわかっていればいいという問題じゃないだろうっ!」

 ま、そうなんだけど。

「いいか。近藤さんにだけはばれないようにしろ。わかったな」

「藤堂さんもいるから、大丈夫ですよ」

 ちなみに、今回の温泉メンバーで、私が女だと知らないのは近藤さんだけだ。

「油断するなよ」

「わかりました」

 土方さんは、何回も近藤さんにはばれないようにと私に念を押してきた。


 京を出てから数日で有馬に到着した。

 部屋は2部屋とってあった。

 当たり前のように、私はお雪さんと一緒に部屋に入ろうとした。

「ちょっと待て」

 近藤さんに呼び止められた。

「お雪は俺と一緒だろう。いくら蒼良を弟のようにかわいがっているとはいえ、他の男と同室にするほど、俺も心は広くないぞ」

 近藤さんの笑顔が引きつっていた。

 近藤さん以外の3人で顔を見合わせてしまった。

 そうだ、私、男だった。みんなも忘れていたらしい。

「すみません」

 私が謝ると、

「いやいや、気にすることはない。お雪の気持ちもわかっているし、蒼良の気持ちもわかっているから、問題ないぞ。護衛、頼んだぞ」

 と言いながら、近藤さんは私の肩をポンポンと叩き、お雪さんと自分の部屋に消えた。

 私は、藤堂さんと同室になった。

「蒼良、ごめん」

 部屋で荷物を整理していると、藤堂さんがなぜか謝ってきた。

「なんで藤堂さんが謝るのですか?」

「土方さんに、近藤さんだけには、蒼良のことをばれないようにしろって、何回も言われていたのに、油断してしまって、さっきのようなことになってしまった」

「ああ、大丈夫ですよ。ばれてないみたいだし」

「でも、本当なら、私が蒼良を部屋に引っ張っていけばよかったんだ。それをすっかり忘れていて」

 藤堂さんは、色々と気にしているらしい。

「藤堂さん、近藤さんにはばれなければ大丈夫ですよ。さっきもばれてないから、大丈夫です。気づかい、ありがとうございます」

「わかった。これからも気をつけるよ」

 それから夜になり、ご飯を食べて部屋に戻ると、布団が敷いてあった。

 宿屋なら、当たり前のことだ。

 しかし、なぜか藤堂さんは固まっていた。

「藤堂さん、どうしたのですか?」

「布団が敷いてある」

「当たり前じゃないですか」

 私は、布団にゴロゴロと横になった。

「今日まで歩きっぱなしだったので、疲れましたね」

 ゴロゴロしながら藤堂さんに話しかけると、藤堂さんはまだ固まっていた。

「藤堂さん?」

「私には、無理かもしれない」

 いきなりどうしたんだ?

「蒼良と同じ部屋では寝れない」

 私、何か悪いことしたのかな?

「すみません。何か悪いことしましたか?」

「いや、蒼良は悪くない。私の問題だから」

 藤堂さんの問題?

「部屋を別にとってもらおう」

 藤堂さんが部屋から出ようとした。

 でも、そんなことしたら……

「駄目ですよ。部屋を別にしたら、近藤さんが不審に思いますよ」

 藤堂さんが、部屋の出入り口で止まった。

「でも、私は、蒼良と一緒には寝れないよ」

「なんでですか? もしかして……いびきがうるさいとか?それとも寝言がひどいとか? 寝言なら、私もひどいですよ。よく土方さんに食べ物の夢ばかり見てると馬鹿にされてますから」

 私がそういうと、藤堂さんがふきだした。

「あはは、蒼良らしい」

 うっ、笑うことないじゃないか。

 でも、私の話が効いたのか、藤堂さんは部屋に戻ってきて、布団の上に座った。

「土方さんが大丈夫なら、私も大丈夫かな」

 さっきから何が大丈夫なのかわからないのだけど。

 疲れているせいか、布団に入ったらすぐに夢の中に入った。

 いつも食べ物の夢ばかり見ているわけじゃないけど、チョコレートパフェを食べる夢を見た。

 ああ、江戸時代に来て早1年。パフェとか、ケーキとか全然食べてないな。

 たまに無性に食べたくなる時があるけど、この時代にすいうものがないので、仕方ない。

 朝起きたら、藤堂さんが笑っていた。

「どんな夢見ていたの? ぱふぇとかけぇきとかって言っていたけど」

 食べ物と言ったら、また笑われそうなので、

「今後にかかわる重要な夢です」

 と言ったら、

「気になる」

 と言われ、夢のことについてしつこく聞かれてしまった。


 近藤さんの護衛としてついて来たけど、実際は何もない。

 元道場主だった近藤さんだから、護衛なんて必要ないぐらい剣の腕もいい。

 だから、ほとんど一緒に遊びに来たようなものだった。

 有馬と言えば温泉だけど、男装をしている私は、みんなと一緒に温泉に入れない。

 でも、藤堂さんが気を使ってくれて、夜遅くなると、藤堂さんが誰も入ってこないように見張ってくれたので、ゆっくり入ることができた。

 しかし、この日はなぜか人が入ってきた。

 湯気でよく見えないけど、どうも女性らしい。

 ほっとしたけど、他の宿泊客に私が女だと知られて、近藤さんの耳に入らないとは限らない。

 どうしよう。藤堂さんも、人を入れてくるとは、よっぽどのことがあったのだろうか?

「蒼良はん、わてどす」

 湯気の中から声が聞こえた。

「お雪さんですか?」

「そうどす。蒼良はんが温泉に入っとると聞いて、わてもつかりにきたんや」

 女性の正体がわかり、ほっとした。

 お雪さんは、この冬に風邪をひいてなかなか治らず、湯治で治るかもしれないと思った近藤さんが連れてきていた。

「女同士の話をしたいと思うても、勇はんがなかなか離してくれんさかい、おしかけて来た」

 お雪さんは、にこっと笑って一緒に湯船につかってきた。

 以前よりもはかない感じが増しているのは気のせいか?

「近藤さんは、お雪さんに惚れているのですよ」

「蒼良はんは、そういうお人がおらんの?」

「残念ながらいません」

「周りに、いいお人がたくさんおるのに?」

 いいお人?誰だ?

「表で待っとる藤堂はんも、蒼良はんのこと思ってはるよ」

「お、お雪さん、何を急に。藤堂さんは、土方さんに色々と言われたからやっているだけですよ」

「それだけやないと思うけど。そんなことより、いつまで男の格好しとるつもりなん? そんなことしていたら、いつまでたっても幸せになれんよ」

 幸せになれないと言われても、新選組を助けるために来ているのに、まだその時期じゃない。

 だから、男装をやめるわけにもいかない。

「話しているところ、申し訳ないけど」

 表から藤堂さん声がした。

「何かあったのですか?」

「近藤さんが、お雪さんが温泉に入っていると聞いたら、俺も入るってきかなくて」

 えっ、近藤さん?っていうか、ここ女湯だろう。

「ま、勇はんったら」

 お雪さんは、照れているんだか、喜んでいるんだかわからないような感じだった。

 っていうか、これって犯罪だろう。

「深夜だから、誰も入ってこないだろう。だから中に入れろと言っているのですが」

 いや、中に入ったらいかんだろう。

「わかりました。わてが出ます。蒼良はん、今度ゆっくりな」

 藤堂さんが外に出たのを見計らって、お雪さんは出た。

 お雪さんが出てから、しばらくしてから私も出た。

 なんか、落ち着いて入ってられなくなってしまった。

「あ、蒼良。早かったね。でも、あんなことがあったら、安心して入ってられないよね」

 藤堂さんの話によると、お雪さんは女性だし、私と一緒に入りたいと言ってきたから中に入れた。

 しかし、しばらくすると、近藤さんがやってきて、お雪と一緒に入りたいと言ってきたらしい。

「蒼良が入っているとも言えないし、お雪さんは一人で入りたいと言っていたから、私が護衛として立っていると言ってごまかしたんだけど、近藤さんもきかなくて」

「それより、新選組の隊長が女湯に入っていたことが世間に知れたら大変じゃないですか」

「だから、私が誰も中に入らないように見張ればいいと言っていた」

 いや、よくないだろう。

 今回は、お雪さんが機転を利かせてくれたので危機を逃れることができた。

 って、この時代、男が女湯に入ることは犯罪じゃないのか?


 有馬に来るのに数日かかったので、滞在も数日滞在する。

 数日の滞在で、有馬には夜になると島原のように芸妓さんが来るのにもびっくりしたし、湯女ゆなと呼ばれる女の人たちが垢すりなのどのサービスをするのにもびっくりした

 ちなみに藤堂さんの話によると、湯女は一応禁止されているらしい。

「お前たちも、せっかく遊びに来たのだからもっと楽しめ」

 と、近藤さんに言われたけど、女である私は、芸妓遊びなどには興味なかった。

「もしよかったら、藤堂さんだけでも、私に遠慮せずに楽しんでください」

 私は、せっかく来たのだから、藤堂さんも楽しんでもらいたいと思ってそう言った。

「私は、ここに蒼良といるだけで楽しいよ」

 藤堂さんは、本当に楽しそうに言った。

 私、藤堂さんを楽しませるようなことを何かやったのか?


 昼間は、有馬の町を藤堂さんと一緒に歩いていた。

「あ、これ、綺麗ですね」

 私が見つけたのは、綺麗な絹糸がたくさんまかれて模様になっている筆だった。

 模様が綺麗だったので、思わず手に取ってしまった。

 すると、筆の部分を下に向けると、上から小さい人形が出てきた。

「人形筆だ。有馬では有名だよ」

 藤堂さんも、筆を手に取りながら言った。

 からくりが面白いから、土方さんのお土産にしようと思い、一本買った。

「自分で使うの?」

 藤堂さんに聞かれた。

 自慢じゃないが、筆で字を書くのはものすごく苦手だ。

 だから、自分に筆を買おうなんて思ったことはない。

「土方さんに、お土産です」

 私が言うと、藤堂さんが、えっという顔をした。

 私、何か悪いことを言ったのかな?

「蒼良は、土方さんのことを好きなの?」

「嫌いではないですよ」

「そうなんだ。新八さんが、蒼良と土方さんはできてるなんて言っていたけど、本当?」

 それを聞いて思わずふきだしてしまった。

 永倉さんのことだ。男色とかって言っているのだろう。

「藤堂さんは、永倉さんのことを信じているのですか?」

「いや、そんなことはないけど……」

「私は、誰ともできていませんよ。そんな余裕がないし、考えたこともないです」

「でも、土方さんのこと、嫌いじゃないのでしょう?」

「嫌いではないです。でも、永倉さんが言うようなことは考えたことはないです。永倉さんが変な噂流すから、土方さんに、恋文が来なくなったって、なぜか私が怒られるのですよ。なんで私が怒られないといけないんだ」

 ブツブツと文句を言っていると、

「よかった」

 と、藤堂さんがつぶやき、いきなり私を抱きしめてきた。

 ええっ!なんで抱きしめられないといけないんだ?

「と、藤堂さん、こ、こんなところでこんなことをするのは……」

 男色と勘違いされますよ。そう言いたかったけど、強く抱きしめられたので、顔を藤堂さんの胸に押し付けられて言えなかった。

 こんなところを近藤さんに見られた日には、絶対に勘違いされるんだろうな。

「おっ!」

 今、近藤さんの声がしなかったか?

「お前たち、そういう仲だったのか?」

 藤堂さんが私から離れたので、顔を上げてみてみると、近藤さんがいた。


「なんだ、だからお前たちは遊ばなかったのだな」

 宿に戻ると、上機嫌で近藤さんが言った。

「いや、だから……」

 誤解ですと言いたかったけど、あんな街中で抱きしめられて誤解ですでごまかせないだろう。

「蒼良、照れなくてもいい。俺は、お前たちが男同士であろうと、全力で応援する」

 やっぱり勘違いしている。

「ところで、蒼良は歳ともできていただろう」

 いや、それも誤解です。

「蒼良は土方さんとは何もないそうです」

「平助、それは本当か? よかったな。これで俺も全力で応援できる」

 いや、よくないって。

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