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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
試衛館での日々
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土方さん男色説

 数日がたち、京へ行く支度をしていると、お師匠様が日野の道場へ現れた。

「おおっ、蒼良! 久々に会ったら、体がしまってきたな」

「お師匠様っ!」

 なんやかんや思いつつも、お師匠様の姿がなかなか現れないと心配になっていた。

「今まで何していたのですか?」

「わしも、京へ行くのに色々準備していたのじゃ」

「一緒に行くのですか?」

「いや、浪士たちとは一緒に行けん。年寄りの浪士はいないからなぁ。後からゆっくりと行くから、先に京で待っておれ」

 京まで遠いのにお師匠様、無事にたどり着けるのだろうか……。

 その前に力尽きそうで心配だわ。

「ところで蒼良。お前のことだから多分大丈夫だと思うが、用心に越したことはない」

「なんですか?」

「行く途中、いや、京でも一緒になるだろう。芹沢鴨には気をつけるのじゃ」

 芹沢鴨。

 新選組になる前、壬生浪士組初代局長。

 ものすごい暴れ者だと聞いたことがある。

「わかりました。みんながいるから、大丈夫です。お師匠様も気を付けてください」

「おお、しばらく見ない間に、いい女……いや、男になったなぁ」

 気を付けてもらわないと困るのよ。

 お師匠様が鍵を持っているのだから、途中で力つきた日には私が帰れなくなるじゃないの。

「とにかく、気を付けてくださいね」

「お前は、わしより鍵が心配なんだろう」

 ううっ、バレてる。

「そんな簡単に力尽きるわけないじゃろうっ! という訳で、京に着いたらお前のところへ行くから、待っていろ。それと、とにかく、奴には気をつけろ」

 その後、お師匠様は土方さんと日野道場にいる人たちに挨拶をしたら行ってしまった。


 そして、いよいよ明日出発という日になった。

 土方さんと源さんと一緒に試衛館へ行き、そこからみんなで集合場所に行くことになった。

 日野道場の人たちに見送られて試衛館へ向かった。

 試衛館に着き、こんにちわと声かけようとしたとき、

「なにっ! 歳が男色だと!?」

「シーッ!」

 と言う近藤さんの大声と、その大声より大きいシーッという声が聞こえた。シーッの声の方が大きのだけど……。

 声をかけようとする私を土方さんが止めた。

 話を聞きたいらしい。

 自分が話題の中心になっているから、聞きたいよね。

 抜き足、差し足と足音を消し、みんなのいる部屋の前でこっそりと話を聞くことになった。

「どうも、蒼良と出来てるんじゃないかと、俺は思うのだ。」

「新八、そりゃ、いつも一緒にいるからそう思うんだろう」

「いや、俺が蒼良の顔を触ったとき、土方さんが出てきたし、蒼良に関わると、必ず土方さん出てくるからな」

「おお、そういえば、俺の切腹の腹見せたとき、蒼良が自分にもそんな跡があるって見せようとしたときに土方さんが出てきて、こっそりと蒼良の腹見ようとしてたなぁ」

「そう言われると、私が蒼良さんの手のまめの処置をしていた時も出てきてました」

「蒼良は、男にしては綺麗な顔しているし、土方さんも蒼良に心を奪われてもおかしくない」

 沖田さんが男にしては綺麗な顔しているというところで、ちょっと嬉しくて、にやけてしまった。

 しかし、土方さんはそうではなかった。

 バンッ!と部屋の戸を勢いよく開け、

「誰が男色だって!? 人がいねぇところでコソコソ話しやがって、このやろうっ!」

 まさか、話を聞かれていると思わなかったみんなは、一瞬ビクッとした顔をしていた。

 その顔がまた面白くって、笑ってしまった。

「ああ、俺、まだ支度が出来てなかった」

「おお、新八、実は俺もまだだったんだ」

 そう言って、原田さんと永倉さんがいそいそと去っていった。

「平助、買い物に行こう」

「うん、私も、ちょうど買いたいものがあったので」

 何事もなかったかのように、沖田さんと藤堂さんも去っていった。

「おい! お前らっ! 逃げんじゃねぇっ!」

 土方さんも後を追いかけようとしていたけど、近藤さんに止められた。

「歳、そうだったのか」

「こ、近藤さん? 何考えてんだ?」

「俺はな、歳の相手が男だろうと女だろうと、歳の恋を全力で応援するからな」

 近藤さんは土方さんの肩をたたきながら言った。

「いや、近藤さん、違うから。俺は、男色じゃない。そもそも誤解だ」

「照れなくてもいいぞ。大丈夫だから、堂々としてろ」

「いや、だから違うって。参ったなぁ」

 その会話の中にひとつだけわからないことが……。

「源さん、男色ってなんですか?」

「えっ、蒼良は知らないのか?簡単に言うとだな、男が男を好きなことだよ」

 ああ、ホモのことかぁ。

「ええっ! 土方さん、ホ……いや、男色なんですか?」

 そう聞いたら、ものすごい殺気を感じてしまった。

「お前……誰のせいでこうなったと思っていやがるっ! しかも、お前が一番そんなことわかることだろうがっ!」

「歳、蒼良君をそんなに怒るな。蒼良君、歳を頼んだぞ。こいつはちょっと扱いづらいかもしれんが、いい奴だ」

「はい、わかりました」

「おい、蒼良! そこは否定するところだろうがっ!」

 えっ、そうなのか?

 土方さんは一生懸命否定するも、近藤さんは照れるな、照れるな、というばかりで相手にされず、参ったなぁと、土方さんは疲れきっていったのだった。

 その様子をクックックと、笑いをこらえて源さんは見ていた。

 何がそんなにおかしいのかな。

 そう思い、みんなとのやりとりとか振り返ってみると、やっと自分と土方さんの置かれている状況に気がついた。

「近藤さん、違いますよ。そもそも私はお……」

 といったときに土方さんに手で口をふさがれた。

「お前、今、女だからと言おうとしただろう」

 近藤さんに聞こえない声で、土方さんは耳元で言ってきた。

「だって、言わないと、土方さん、誤解されたままですよ」

「それは、言わんほうがいい。少なくとも今は言うことじゃない」

「いや、でも……」

「おお、仲がいいな」

 近藤さんは嬉しそうにしている。

「仕方ない、今は誤解させたままにしておこう。そのうち忘れるだろう」

 忘れてくれればいいのだけど……。

 という訳で、近藤さんの説得はあきらめたのだった。


 こういう状態のまま、京へと旅立つことになった。 

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