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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年8月
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池の魚を食べた!

 暇で屯所内をブラブラとしていたら、芹沢さんたちに呼ばれた。

蒼良そら、ちょうどいいところにいた。」

 何がちょうどいいのだろう?

「一緒に来い。」

 そう言われたので、何人かの隊士と一緒についていった。

 その中に、永倉さんもいた。

「どこに行くのですかね。」

「さぁ、俺も知らん。ま、ついて行けばわかるさ。」

 そうなんだけどさ。


 ついたところは、屯所の近くにあるお寺、新徳寺だった。

 ここは、京に着いたばかりの時に、清河 八郎という人に呼ばれて行って、色々とあった場所だ。

 ここになんの用なんだろう?初心を忘れるなという戒めのためか?

 いや、逆に芹沢さんを戒めたいのだけど。鉄扇で殴られそうだな。

 しかし、用があったのは、お寺ではなく、お寺にある池だった。

「今日も暑いから、ここで水浴びでもすればいい。」

 現代で言えば、今は9月の中旬過ぎぐらいになるのだけど、残暑が厳しくてまだ暑い。

 水浴びは、みんな喜ぶだろう。

 みんなは…。

「蒼良は、入らんのか?」

 芹沢さんが言ってきた。

「私は、見ています。」

 足だけ入ろうかなぁなんて思ったけど、前回川遊びした時にえらい目にあったので、見るだけにしようと思った。

「せっかくだから、入れ。」

 入りたいけど、入れない。濡れれば着物が透ける。着物が透ければ、女だとバレてしまう。

 芹沢さんにはバレているらしいけど。

「いや、せっかくのお誘いですが、遠慮します。」

「そうか。残念だな。」

 芹沢さんは、そう言い残して池に入っていった。

 せっかく連れてきてもらったのになぁ。

 そんなことを思いながら、みんなが池で遊んでいるのを見ていた。


「おっ、魚がいるぞ。」

 池で遊んでいた隊士の一人がそう言った。

「捕まえろっ!」

 そう言って魚を捕まえ始めた。

 魚だって逃げるの速いから、捕まらないだろうと思ったら、見事に捕まえた。

「おお、見事な魚だな。」

 芹沢さんが、そう言うと、魚の内蔵とかを取り出し始めた。

「芹沢さん、何しているのですか?」

 まさか、解剖じゃないよな。

 そして、その後、口にパクッと入れた。

 た、食べた。

「だ、大丈夫ですか?」

「何がだ?」

「食べて。それより、この魚、食べれるのですか?」

「美味しいから、食べれるだろう。」

 それは、判断の基準じゃないと思うけど。

「よし、俺も魚捕るぞ。」

 永倉さんも、魚を捕り始めた。

 まさか、みんな食べるために捕っているとか?まさか…。

 しかし、永倉さんも芹沢さんと同じことをし始めた。

 た、食べたよ。本当に、大丈夫なのか?

「蒼良!」

 永倉さんに呼ばれたので、振り返ると、魚を口の中に入れられてしまった。

 本当に、大丈夫なのか?そう思いつつ、噛んでみると、これが意外と美味しかった。

「ちょっと泥臭いだろう。」

 芹沢さんが食べながら言ってきた。

「でも、気になるほどのものではないです。意外と美味しいですね。」

「そうだろう。おい、この池の魚を全部とって食うぞ。」

 ぜ、全部食うのか?さすがにお腹壊さないか?

 でも、美味しかった。そう、お寺の人の怒られないかな?というぐらいとって食べたのだった。

 この時代、冷蔵庫というものがないので、刺身は高級品だ。

 この場合ちょっと違うかもしれないけど、一応刺身だから。っていうか、生魚なんだけど。

 久しぶりに生魚の味を味わい、堪能したのだった。

「酒のつまみにちょうどいい。」

「芹沢さん、そう言って飲むjつもりじゃぁ?」

「ここには酒はもってきとらん。」

 あ、そうなんだ。

「屯所に帰ってから飲む。」

 やっぱり飲むんじゃん。

「飲みすぎはよくないですよ。」

「わかっているが、やめられんのだ。忘れたいことも忘れられる。」

 忘れたいこと?

「そんなことがあるのですか?」

「俺ぐらい生きてりゃ、そんなことの一つや二つあるさ。」

「でも、忘れるために飲むお酒って、お酒の量も増えませんか?」

「増えてるな。」

「飲みすぎはよくないですよ。何事も、ほどほどがいいのですよ。」

「俺には、ほどほどっていう言葉がないのでな。」

 ハハハッ!と笑いながら言ってしまった。

 いや、冗談じゃなくて、本気で言っていたのだけどなぁ。

 なんで、こんだけ言っても聞いてくれないのだろう。


 夜になったら、お腹が痛くなるのでは?と思って心配したけど、なんともなかった。

「池の魚って、食べれるのですか?」

 土方さんに聞いてみた。

「魚は食えるだろう。」

 やっぱり、この時代は、汚染とか外来魚とか、そういうものがないので、魚ならなんでも食べれるのかな。

 私のお腹が痛くならないから、大丈夫なのかもしれない。

「食ったのか?」

「はい、芹沢さんと昼間、お寺の池の魚を食べました。」

「あそこなら、大丈夫だろう。お前、魚食べたことないのか?」

「魚ぐらい、食べたことありますよ。お刺身とか、焼いたりとか、煮たりとかして。」

「さ、刺身を食っただと?」

 そうだ、この時代は、高級品だった。

「一度だけですよ、一度だけ。」

 そう言ってごまかした。


 次の日もお腹痛くならなかったので、もう大丈夫という妙な自信はついた。

 でも、結構たくさん食べたから、あの池に魚はもういないかもしれないな。

 お寺の人に怒られないのかな?

 また、食べれれば食べてみたいものだな。そう思った。

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