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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年7月
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お梅さん登場

 暑い日が続いていた。

 大坂から京に帰ってきた。京は盆地なので、よけいに暑く感じる。

 でも、現代の体温並みの温度と比べると、まだ大丈夫だと思える。


 暑い中巡察から帰っってくると、綺麗でとっても色気のある女の人がいた。

 男所帯の屯所に、こんな綺麗な人がいるのは、めったにないことだ。

「こんにちわ。何か用ですか?」

 挨拶をしながら聞いた。

「こんにちわ。芹沢はん、いらっしゃいますか?」

 芹沢さん?奥に行って平山さんとかに聞いてみると、出かけていないとのこと。

 またどこかで酒でも飲んでいるのだろうか?

「出かけていないみたいです。お伝えたいことがあれば、お伝えしますよ。」

「いや、待たせてもらいます。」

「でも、いつ帰ってくるかわかりませんよ。」

「こっちも、返してもらうまで、家に帰れまへん。」

 返してもらうまで?

 話を聞くと、彼女は菱屋という呉服商の人で、芹沢さん、そこに借金をしているらし。

 きっと、押し借りでもしたのだろう。

 それにしても、菱屋のお梅さんって、どこかで聞いたことあるなぁ…。

 とりあえず、お梅さんを説得し、今日は帰ってもらった。

「おっ、帰ったか。」

 お梅さんが帰ったのを見ていたのか、芹沢さんが奥から出てきた。

「あっ、芹沢さん、いたのですか?」

「菱屋のやつめ。女をよこしたら暴力振るわんと思って、女をよこしやがったな。」

「そういう前に、ちゃんと借金返したらいいじゃないですか。」

「ないものは返せん。」

 ま、そうなんだけど…。

「それにしても、いい女だったなぁ。」

 このスケベおやじめっ!しかも、また酒臭い。

「また昼間から飲んでますね。健康に悪いからやめてくださいって、何度も何度も何度も何度も言っているじゃないですかっ!」

「4回言ったぞ。」

「何をですか?」

「何度も。」

「そういう話じゃなくて…。」

 お酒をやめるように言おうとしたら、

「芹沢さん、行きましょう。いい店があるのですよ。」

 佐伯さんが出てきて、芹沢さんを連れて行ってしまった。

 最近、佐伯さんが芹沢さんとつるむようになっていた。

 それが、何か不安だった。


「ああっ!」

「な、なんだ、いきなりでかい声出しやがって。」

 土方さんが書物をしていたのか、筆を持って振り返っていた。

「いや、ちょっと思い出したことがあって。」

「なんだ。」

「昼間、芹沢さんの借金回収に来ていた女の人です。」

「ああ、お梅とかっていう女か?いい女だったな。」

「やっぱりそう思いますか?」

「昔、島原にいたらしいぞ。」

 やっぱり、間違いない。その後、菱屋さんに入り、今にいたるという感じかな。

 そして、芹沢さんと一緒に暗殺される女の人だ。

 あんな綺麗な人が暗殺されるのか?歴史を変えるなら、芹沢さんとあわせないほうがいいのかも。


 しかし、次の日もその次の日も、お梅さんはやってきた。

 あわせないように、なんとか菱屋さんに帰ってもらっていたのだけど、歴史はそう簡単に変わるものではない。

 とうとう、芹沢さんとあってしまい、そのまま二人は恋に落ちたのだった。

「また来てますね、お梅さん。」

 藤堂さんが話しかけてきた。

「あのおっさんのどこがいいんだか。」

蒼良そら、おっさんって、芹沢さんのこと?」

「あの人以外いないでしょう。酒は飲むし、暴れるし、どこがいいんだろう?お梅さんの趣味を疑うわ。あんなに美人なのに。」

「でもあの人、芹沢さんがいないときは、他の隊士を誘惑してますよ。」

「えっ、そうなんですか?」

「こう、流し目を送ってくるというか。」

 藤堂さんが、流し目をした。それがおかしくて、笑ってしまった。

「蒼良、笑い事ではない。蒼良のことも狙っていたよ。」

「流し目でですか?」

「気がつかなかった?」

 私は狙われても、お梅さんと同じ女だからなぁ。どうすることもできないな。

「私は、ああいう女性は何か嫌だなぁ。なんか、おしろい臭そうで。」

 そういえば、以前もそんなこと言ってたっけ?

「でも、美人ですよ。」

「いくら美人でも、ああいう美人はちょっと。蒼良は?」

「えっ、私ですか?そんなこと、あまり考えたことないです。」

「総司みたいなことを言うね。」

 そうなのか?


 そんなある日、お梅さんが怖い顔をして私を呼んだ。

 これは、誘惑しようとしている顔じゃないな。そんなことを思いながら、お梅さんと歩いていた。

 人の気配がない林の中でお梅さんは止まって私を見た。

「あんた、女なんやって?」

 ええっ、なんで知ってんだ?

「芹沢さんが言うてた。あいつは女やさかい、惚れんなよって。」

 ば、バレてるし。

「なんで女なのに、あそこにいるんや。」

「いや、それには深~い事情があって。」

 未来から来て、云々の話をしても通じないだろう。

「もしかして、あんた、好きな人でもおるんか?」

「えっ、好きな人?」

「分かった、芹沢さんやな。でも、芹沢さんはあかんで。」

 …なんで?なんで芹沢さんなんだ?っていうか、私に選択権はないのか?

「いや、芹沢さんじゃないです。」

「じゃぁ、誰や?」

 誰やって言われても、そんな人いないし…。

「やっぱり、芹沢さんなんやろ。」

 だから、なんでそこで芹沢さんが出てくるんだ?

 あんな酒オヤジ、こっちから願い下げだっ!

「絶対に芹沢さんじゃないです。ありえないです。酒乱でスケベおやじ、こっちがお断りです。」

「あんた、そこまで悪う言わんでも。」

 よく言うと、お梅さんが勘違いするし、悪く言うと、逆に怒られるし、どうしろと?

「あんたが芹沢はんに気がないのは、ようわかった。」

 それは良かった。

「安心したわ。じゃ、帰るわ。」

 それだけかいっ!こっちは、女の私があそこにいる理由とか、色々考えていたんだけど。

 きっと、彼女には芹沢さんさえいればいいのだろう。


「なに?芹沢さんが知っているだと?」

 土方さんに、お梅さんとのことを話した。

「お梅さんが言ってました。どうしましょう?」

「ほっときゃいいだろう。」

 えっ、いいのか?

「芹沢さん本人が直接言ってきたなら問題だが、直接言ったわけじゃないんだ。知らんぷりしてればいい。」

 そういうものなのか?

「いいんですかね?」

「大丈夫だろう。下手に何かやると、お前のことだから、墓穴掘るぞ。」

 うっ、ごもっともです。

「いつもどおりしてればいい。」

 ま、それもそうだな。


 お梅さんは、ほとんど毎日のように通ってきた。たまに泊まって帰ることもあった。

 芹沢さんのどこに惚れたんだろう?

 私の頭の中は?マークでいっぱいになっていた。

 でも、人を好きになるって、楽しそうだなぁと思った。

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