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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
慶応4年4月
420/506

会津へ

 土方さんが、宇都宮城の戦いで怪我をしてしまった。

 そのため、みんなより一足早く会津へと行くことになった。

 一方、大鳥さんたちは日光までバラバラに敗走をした。

 日光へ向かう大鳥さんは、ものすごく悲惨な状況だった。

 まず、一緒に戦った桑名藩の人たちが、藩主が越後にある領地に来たので、藩主の元に行くために戦線から離脱する。

 そして、士気が低下した兵たちが、次々と脱走をした。

 しかも、一番下の兵ではなく、少し偉い人たちが脱走をした。

 ただ脱走をするだけではなく、軍費を持って脱走したらしい。

 そのため、兵力だけでなく軍費も足りなくなっていった。

 あと、大鳥さんを補佐してきた人が亡くなってしまった。

 そんな大鳥さんの悲惨な状況にさらに拍車をたてるように、板垣退助と谷干城が政府軍の四軍を率いて江戸を出発する。

 なんとか日光に入り、東照宮に逃げていた老中だった板倉勝静を訪ねた大鳥さん。

 しかし、板倉勝静に日光から早く出て行けと追い出されてしまう。

 ちなみにこの板倉勝静と言う人は、宇都宮の最初の戦いのとき、お寺に軟禁されていたのを土方さんたちが助けた人だ。

 大鳥さんのお願いを断ったから、政府軍に投降するのか?と思いきや、明治政府の圧力に対抗するため、この後結成される奥羽越列藩同盟の参謀になる。

 ただ単に、大鳥さんが嫌いだったのか?それはわからないのだけど……。

 それでも大鳥さんは日光で戦う事をあきらめず、決意を改めるために日光東照宮へ参拝したのだけど、御神体は板倉勝静によって会津に移された後だった。


 そんな中、私たちは会津へと向かっていたのだけど……。

「土方さん、さっきから変な視線を感じるのですよ」

 歩けない土方さんは、馬に乗っていた。

 そのそばを歩いていた私は、土方さんに向かってそう言った。

 土方さんと話していると、変な視線を感じていた。

 気がついて、ふと周りを見ると、みんな目をそらした。

 な、なんでだ?私、なんか悪いことをしたか?

「鈍感なお前でも感じていたか」

 フッと笑いながら土方さんが言った。

 ど、鈍感なって、どういう意味だっ!

「どうやら、俺たちは見せ物になっているらしいぞ」

 そ、そうなのか?

 また視線を感じたので、ふと視線の感じた方を見ると、さっとそらされた。

 なんで見せ物になっているんだ?

「今更気になるのか? そんな細かいことを気にするな」

 近くにいた秋月さんが私たちの会話を聞いていたらしく、そう言ってきた。

 今更気になるって、どういう事なんだ?

「お前、本当にわからんのか?」

 馬の上から呆れた顔で土方さんが言った。

「土方さんはわかっているのですか? 見せ物になった理由は?」

「当たり前だろう。わからん方がおかしい」

 そ、そうなのか?

「思い当たるのは一つしかねぇだろうがっ!」

 ん?なんだろう?

「俺が怪我して運ばれた時のことだよっ!」

 あっ!思い出した。

 土方さんが、心配で泣いている私を抱き寄せて、その後、戦中にキスしてきた時のことを話したんだっ!

 それがなぜかまわりに聞こえていて、はたから見ると男同士で抱き合ってキスの話をしているように見えて、変な誤解を受けているんだった。

「ああ、あれですね」

「そうだ。まったく、周りの人間は変な誤解をしやがって」

 誤解を受けるようなことをする私たちも悪いと思うのですが……。

「そう照れるな。俺は応援しているからな」

 秋月さんが嬉しそうにそう言った。

 そう、その中でも最大限に誤解しているのが秋月さんだったのだ。

 不服そうな顔をする土方さん。

「ま、応援してくれると言うんですから、いいじゃないですか」

「お前、本気でそう思っているのか?」

 えっ、いけなかったか?

「わけわからねぇ応援ほど厄介なものはねぇぞ」

 そ、そうなのか?

「ま、お前がいいと言うなら俺も別にいいがな」

 ほ、本当にいいのか?

 なんか心配になってきた。

 そんな中、会津にある田島陣屋と言うところに到着した。

 二日ほどそこで過ごした後、会津城下にある清水屋という宿へ移動した。

 秋月さんが手配してくれたらしい。

 その時に、江戸から一緒だった秋月さんと別れた。

「君たちの幸運を祈っているよ」

 と、まんべんの笑顔で言われてしまった。

「やっぱり誤解しているよな……」

 その笑顔を見て、土方さんがボソッと言った。

「誤解をといたほうがいいのでしょうか?」

「そんなことしたら、お前が女だってばらすことになるだろうが。もう、ほっといたほうがいいな」

 そ、そうなるよね。

 と言う事で、私たちも秋月さんにお礼を言って見送ったのだった。


 清水屋で嬉しいことと悲しいことがあった。

 嬉しいことは、流山で近藤さんが捕まった時、先に会津へ行くように言われていた新選組のみんなと合流できた。

「ご苦労だったな」

 土方さんが斎藤さんに声をかけた。

「永倉が、途中で抜けましたが」

「ああ、あいつか。宇都宮城にいたよ」

 そうなのだ。

 確か、斎藤さんに一言、

「ちょっと行ってくる」

 と言って、宇都宮城に来ていたのだ。

 その理由は、そこで自分の知っている人たちが戦をやっているから、だったかな?

「そう言えば、新八は?」

 土方さんが周りを見て言った。

 そう言えば、見ていないよなぁ。

 私たちは、土方さんが怪我をしたから戦から離脱している。

「もうちょっと戦ってから行くとかって言って、日光の方へ行ったと思う」

 原田さんがそう言った。

 なんか、永倉さんらしいと言うか……。

「さすが、がむしんだ」

 同じく永倉さんと仲のいい島田さんがそう言った。

 がむしんとは、がむしゃら新八からきている永倉さんのあだ名だ。

「わかった。新八の事だから、会津で戦が始まればここに来るだろう」

 ほっとけという感じで土方さんがそう言った。

 

 久々に新選組が一つになった。

 流山で別れてからずうっと気になっていたことがあった。

「斎藤さん、沖田さんは大丈夫ですか?」

 そう、沖田さんの事が気になっていた。

 お師匠様が現代から結核の進行を止める薬を持ってきて沖田さんはそれを飲んでいた。

 だから、歴史では寝込んでいるのに、今の沖田さんは元気だった。

 だから、流山まで来ることが出来たのだ。

「なんで斎藤君に聞くの? 僕に直接聞けばいいじゃん」

 斎藤さんの後ろから沖田さんの声が聞こえてきた。

 斎藤さんの後ろまでは気がつかなかった。

 でも、それを言うと沖田さんに色々言われそうだから黙っていた。

「沖田さんっ! 元気ですか? 大丈夫ですか?」

 私は沖田さんに飛びついて聞いた。

「見ればわかるでしょう?」

 げ、元気だと言う事だよね?

「よかったぁ。ずうっと心配していたのですよ」

「本当に?」

 それを言われると……。

 近藤さんの助命をしている時と戦をしているときは、ちょっと忘れていたかもしれないけど……。

 って、ほとんど忘れていることにならないか?

 いや、忘れてなんかいなかったからねっ!

「ほ、本当ですよ」

「僕も、蒼良そらと一緒に行きたかったのに、さっさと土方さんと行っちゃうんだもんなぁ。しかも、僕に挨拶もなしに」

 いや、あの時はそれどころじゃなかったと思ったんだけど。

「ひどいなぁ」

 そ、そこまで言われちゃうと……。

「おい、そこまでにしておけ」

 私の様子を見ていたのだろう。

 土方さんがそう言って助けてくれた。

「はーい。蒼良、元気そうでよかった」

 沖田さんは笑顔でそう言ってくれた。

 私も、沖田さんが元気そうでよかったです。


 それから、良順先生が会津にいることを知った。

 良順先生の方も、土方さんがけがをしていることとか知っていて、清水屋に来てくれた。

 そして、土方さんの足を診てくれた。

「これは、しばらくは歩けないな」

 良順先生はそう言った。

 しばらく療養生活かな?

「命にかかわらんから、ゆっくり治すといい」

 良順先生はそう言った。

 それから改まって私たちと向き合った。

 何かあったのかな?

「その様子じゃ知らんようだな」

 な、なにがだ?

「なにか、あったのか?」

 土方さんも良順先生にそう聞いた。

「近藤さんが斬首された」

 えっ?

 一瞬、無の時間が流れた。

「なんだって?」

 土方さんも一瞬信じられなかったらしく、そう聞き返していた。

「近藤さんが板橋で斬首された。首は三日間さらされた後、今度は京でさらされることになった。今頃京へ旅立っているだろう」

 変えられなかったのか?

「土佐の谷干城たにたてきと言う人に頼んだのに。その時は、処刑しないと言ってくれたのに」

 私の言葉に、

「そこまで助命嘆願をしていたのか」

 と、良順先生は驚いていた。

「ただ、今の土佐藩は新選組に恨みを持っている。谷干城をもってしてもだめだったと言う事は、新選組への恨みも強いものだったんだろう」

 そうなるのか。

 良順先生を見送って中に入ると、呆然とした土方さんがいた。

「俺が、近藤さんを殺した」

 ぼそっと土方さんが言った。

「なにを言っているのですか?」

「俺が、流山の時に大久保大和として出頭しろって言ったから、こうなったんだ」

「それは違います。それを言うなら、私のせいでもあるのですよ。助命嘆願もうまくいかなかったし、香川敬三を怪我させることが出来なかった。もし香川敬三が怪我していたら……」

 近藤さんは助かったかもしれない……。

「お前のせいじゃねぇ」

「土方さんのせいでもないです」

 誰のせいでもない。

「ここじゃあ、詳しい話が入ってこねぇな」

 現代のように通信手段が発達していないから、情報も入りにくいと思う。

 近藤さんが処刑されて、楓ちゃんがどうしているかも心配だ。

 あと、お師匠様だ。

 江戸に残っているお師匠様は何をしているんだろう?

「知りてぇことはたくさんあるが、今は待つしかなさそうだな」

 土方さんはため息交じりにそう言った。


 その後、隊士の人たちにも近藤さんの事は伝えられた。

 土方さんが怪我をしているため、斎藤さんが隊長を務めることになった。

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