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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年5月
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お師匠様登場

 今日へ戻ってきてから、間もない日のこと。

 巡察から戻ってきたら、藤堂さんが出てきた。

蒼良そら、天野先生が来ているよ。」

 お、お師匠様が?やっと来たか。

「今、近藤さんたちと話をしている。」

 と言われたので、近藤さんの部屋に行った。


 お師匠様と、土方さんと、近藤さんが話をしていた。

 お師匠様は、旅装束ではなかった。京に着いてから着替えたのだろう。

「お、お師匠様っ!」

「おおっ、蒼良!またたくましくなったなぁ。」

 たくましいって、私は女なんだけど。近藤さんの手前、演技をしているのだろう。

「天野先生は、昨日、京に着いたそうだ。」

 近藤さんがにこやかに説明してくれた。

「ずいぶんと時間が掛かりましたね。」

「色々とやることがあったんじゃ。」

 色々ってなんだろう?考えていると、

「お前は、色々と頑張っているそうじゃのう。おふた方からよく聞いたぞ。」

「いや、他の方に比べると、それほどでもないです。」

「たまに、変なことを言ったりやったりするがな。」

「ひ、土方さん、お師匠様の前でそんなこと言わないでくださいよ。」

「お前の師匠の前だから言うのだ。」

「じゃぁ、私も、土方さんの師匠である近藤さんに、色々言いますよ。」

「言えるもんなら、言ってみやがれ。俺はやましいこと何もしとらんぞ。それに、近藤さんは師匠ではないぞ。」

 えっ、じゃぁ、なんだろう。そうか。

「惚れた相手だ!」

「ばかやろうっ!」

 げんこつが落ちてきたのだった。

「なんだ、仲良くやっているじゃないか。」

「天野先生、歳と蒼良のやりとりは、隊士の間でも面白いことで有名でしてな。」

「近藤さん、見世物じゃないです。」

「見世物じゃねぇよ。」

 最後の言葉は、土方さんとほぼ同時に言った。

「蒼良、久々に天野先生にあったんだ。隊務は休んでちょっと出かけてくるといい。ゆっくり、話したいこともあるだろう。」

 近藤さんが言った。話すこと、山ほどありますよ。

 という訳で、その申し出に甘えさせてもらった。


 この時間ゆっくりできるところは、甘味処かな?居酒屋はまだ時間が早い。

 という訳で、甘味処に入った。

 注文してすぐに、疑問に思っていたことをぶつけた。

「お師匠様っ!なんでこんなに遅くなったのですか?2月に江戸で別れて早3ヶ月ですよ。遅すぎて、心配してました。」

「おお、それは悪かった。」

 ずずず…と、お師匠様はお茶をすすった。

「で、なぜ遅くなったのですか?もしかして、病気でもしていたのですか?」

「蒼良、東海道中膝栗毛とうかいどうちゅうひざくりげって、知ってるか?」

 確か、やじさん、きたさんという人が、東海道を歩いて伊勢参りに行く話だと思ったけど。ちょうどこの江戸時代の作品だ。

「知ってますよ。それがどうしたのです?」

「せっかく江戸時代まで来たのじゃ。その真似がしたくなってな。東海道を通って、伊勢参りをしてきたのじゃ。」

 はぁ?あんたの孫が、色々と、本当に色々あって奔走している間に、あんたは、のんきに伊勢参りかいっ!

「おいおい、そう怒るな。蒼良にも、お守りを買ってきたぞ。受け取れ。」

 お守りに免じて許してやろう。そう思いつつ、お守りを受け取った。

「お師匠様、安産守りと書いてあるような気がするのですが、気のせいでしょうか?」

「おおっ、学業のお守りを買ったつもりなんじゃがな。間違えたらしい。ま、受け取れ。」

 受け取れるかっ!まだ子供産む年じゃないわっ!

 しかし、お師匠様に逆らうわけにもいかず、渋々受け取ったのだった。


 そして、時間をかけて、今まであったことを詳細に話した。

 お師匠様は、ほうほうと、相槌を打ちながら、真剣の話を聞いてくれた。

「蒼良も、色々あったんじゃな。よく頑張った。」

「はいっ、ありがとうございます。ところで、ひとつ疑問なのですが…。」

「なんじゃ?」

「お師匠様、なんで江戸時代でも顔が広いのですか?私のあった人で、お師匠様を知らない人はいませんでした。」

「それはな、何年も前からこの時代と現代を行ったり来たりして、新選組と関わりのある人たちとの縁を作っていたのじゃ。」

 えっ?何年も前から?でも、現代にいたとき、毎日お師匠様の稽古を受けていたけど…また嘘をついているんじゃぁ。

「信じられんという顔しとるな。よく考えろ。タイムマシンは、時間を操る。行く時代も選べるが、帰る時代も選べるのじゃ。帰る時代を、タイムマシンを使った時間に設定すれば、ここで何年経っていおうと、現代に帰れば全然時間がたってないのじゃ。」

 なるほど。帰る時間をちゃんと選べば、いなかった時間はなかったことになるということか。

「ということは、私はここで数ヶ月過ごしていて、学校も休んでいると思っていましたが、現代に帰ると、全然時間がたっていないということになるのですね。」

「それがタイムスリップじゃ。お前は、わしと物置に行った時間に戻るから、ここで起きた出来事を時間にすると、現代では、ちょっと物置に行って帰ってくるぐらいの時間になる。」

「便利な機械ですね。」

「その機械を京に持ってくるのに時間もかかったんじゃ。」

 そうだったんだ。伊勢参りして遊んでいたわけではないのですね。

「伊勢参りして、満喫もしたがな。」

 やっぱり、遊んできたんかいっ!

「まぁ、そう怒るな。蒼良、これからが大変だぞ。時代はそう簡単に変えれるものではない。わしもそう簡単に変わるものとはおもっとらん。小さいことからコツコツと変えていくのじゃ。」

「小さいものでも、コツコツと頑張れば、大きくなるということですね。」

「そうじゃ。幸いお前は、ちゃんと小さいものから変えるように頑張っている。これからも頼むぞ。」

「分かりました。」

「ところで、お前の話に出てきた、清河 八郎って何者じゃ?新選組か?」

 あんた、話聞いてたか?そして、本当に新選組のファンなのか?


 何かあっても、すぐに対処できるように、まめに屯所に顔を出す。と、お師匠様と約束し、別れた。

 ま、お師匠様のことだから、本当にまめに来るかわからないけど。


「天野先生は、元気だったか?」

 屯所に帰ったら、土方さんに聞かれた。

「そりゃもう、元気でしたよ。あ、伊勢参りしてきたらしいですよ。」

「そうか。それはよかった。」

「お守りもらったのですが、私はいらないので、土方さんにあげますよ。御利益あるといいですね。」

 お師匠様からもらったお守りを、土方さんに渡した。

「お前、からかってんのか?」

「えっ、どうしたのですか?」

「お前より、俺はもっといらんぞ!このお守り。」

 あっ!安産守りだった。すっかり忘れてた。

「俺に子供が産めるかっ!」

「土方さんなら、産めるかもしれない。」

「ばかやろう!」

 げんこつが落ちてきたのだった。

 

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