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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年5月
31/506

豊臣家の埋蔵金?

 まだ大坂にいる。

 そろそろお師匠様が京についているのではないかと、気になって仕方ない。

 でも、京に帰る気配はない。

 

 この京屋さんと言う船宿からも、大坂城がよく見える。大坂城を見ながら、いつまで家茂公は大坂にいるのだろう?と思っていた。

蒼良そら、大坂城を見て、どうした?」

 山南さんの声がした。

「今日も、大坂城がよく見えるなぁって。」

「そういえば、蒼良は大坂城をつくった人物を知ってるか?」

「豊臣 秀吉ですよね。」

「おっ、知ってたか。」

「有名な話じゃないですか。」

「有名なのか?」

 有名じゃなかったのか?

「ま、そんなことはいいのだ。問題は、豊臣 秀吉だ。」

「豊臣 秀吉が、何かあったのですか?」

「豊臣家の埋蔵金の話を知ってるか?」

「えっ、徳川じゃなくて、豊臣家の埋蔵金ですか?」

「なに?今の将軍家にも、埋蔵金があるのか?」

 いや、あるって話は聞いたことあるけど、その後どうなってるのかはわからない…。

「いや、聞いたことがあるだけです。」

「俺は、それ聞いたの初めてだ。興味あるなぁ。詳しく聞かせてくれ。」

 聞かせてくれと言われても…。なんだか、群馬県の方にあるって聞いただけで…。この時代、群馬県のことをなんと言っていたのだっけ?あ、そうそう、

「上州方面にあるって。」

「上州かぁ。やっぱり、初めて聞いたなぁ。」

「なんでも、井伊いい 直弼なおすけの案で、開国によって、金銀が海外に流れるのを防ぐためとか、いざという時の軍用金にするためだとか。」

「井伊 直弼って、最近の話じゃないか。」

 えっ?そういえば…。

「井伊 直弼が亡くなったのって、いつでしたっけ?」

「えっ、本当に知らないのか?豊臣 秀吉は知っているのに、最近のその話をしらないのもどうかと思うぞ。」

 そ、そうなのか?

「3年前だ。安政7年。」

 その、元号で言われちゃうとよくわからないのだけど…。3年前って…。

「すごい最近の話じゃないですかっ!」

「だから、俺も言っているだろう。最近の話だって。豊臣家の埋蔵金より、そっちの方があてになるかもしれないぞ。」

 っていうか、まだ埋まってなくて、埋蔵金にすらなってないという可能性もありそうな。

「蒼良、堀りに行くか?」

「いや、遠慮します。まだ埋まっていない可能性があるので。」

「なんと、これから埋めるのか?蒼良、なんでそんな情報まで知っているんだ?幕府の内部に詳しい人間じゃないと、そこまで知らんだろう。」

 えっ、そうなのか?私、内部までそんなに知らないぞ。

「そうか、これから埋めるなら、埋蔵金じゃないな。」

 山南さんは、ちょっと残念そうな顔で言った。

 本当に掘りに行くつもりだったのか?

「ところで、豊臣家の埋蔵金ってなんですか?」

「そうだ、その話をしたかったんだ。蒼良が、別の埋蔵金の話をするから。」

 わ、私のせいなのかっ!

「そうそう、豊臣家の埋蔵金。あのな、秀吉が病気になったとき、息子で跡取りの秀頼がまだ幼くて、不安に思った秀吉は、いざという時のために、勘定奉行に命じて、結構な量の金を埋めたそうだ。」

「そうなんですか。どれぐらいの量なのですか?」

「そこまでは知らん。でも、すごい額になるかもしれないぞ。」

 そんなすごい金額が隊に入ったら…。今から最新の銃とか大砲とかを大量に買っておけば、数年後の鳥羽・伏見の戦いで勝てるかもしれない。

 まさに歴史を変えることになる。

 手に入れられるものなら、手に入れたいなぁ。

「山南さん、お話、ありがとうございます。」

「えっ、蒼良、どこへ行く!」

 私は、山南さんにお礼をしたら、ダッシュで大坂城の方に走っていったので、山南さんの声はもう遠くなっていた。


 さて、秀吉といえば、大坂城だろう。この城のどこかに埋蔵金があるはずだ。

 う~ん、どこから忍び込もう。

「あれ、蒼良じゃないか。」

 振り向くと、原田さんがいた。

「原田さん、ちょうどいい所に来てくれましたね。」

「な、なんだ。」

 私は、山南さんが言っていた、豊臣家の埋蔵金の話をした。

「で、その埋蔵金が、大坂城に埋まっているって言いたいんだな。」

「そうです。一緒に掘り当てましょう。」

「無理だろう。どうやって中に入るんだ?」

「それを考えていたのですよ。どこか、隠し通路みたいなものがありますかね?」

「隠し通路?」

「井戸の中に入ると、横に道があって、その道を歩くと城の中に入れるとか、聞いたことないですか?」

「ねぇなぁ。なんでそんな通路があるんだ?外から簡単にが入れるようじゃぁ、堀を作って外部からの侵入を阻止する理由がないだろう。」

「外部からの侵入じゃなくて、中で何かあったときに城外に出て逃げれるようにする、そういう役目をするやつですよ。」

「蒼良は、そんなこと考えてたのか。面白いこと考えるなぁ。なるほどねぇ、中から外に逃げる通路か。」

「なんなら、近所の井戸とか探ってみます?」

「蒼良、よ~く考えろ。仮にその通路があったとする。無事に中に入りました。で、埋蔵金は大坂城のどこにある?」

 うっ、そこまではわからない。

「大坂城は広いぞ。あっちこっち掘ってたら、捕まるぞ。」

「捕まると、どうなりますか?」

「今は、家茂公がいるからな。運が悪けりゃ、謀反の疑いで打首だ。」

 ひぃぃぃぃ、首を切られるということでしょ。それは嫌だ。

「どうだ、それでもやるか?」

「いや、やめます。」

 打首は嫌だ。でも、埋蔵金、諦めきれないなぁ。

 そんな思いで堀の中を覗いていると、

「おい、そこでなにしてる?」

 と、後ろからいきなり声がしたのですごいびっくりした。

「ひ、土方さんじゃないですか。それに、近藤さんも。」

 二人とも、かみしもを着ていた。

かみしも着て、どうしたんだ?」

 原田さんが聞くと、

「会津公に呼ばれてな。家茂公が京に帰る日が決まり、帰る日も警護しないといけないからな。その打ち合わせだ。」

 近藤さんが、家茂公の警護がまた出来るので嬉しそうに言った。

「お前たちは、ここでなにしてる?」

 土方さんが言った。

「蒼良が、大坂城に侵入して埋蔵金掘り当てるとか言い出したから、諦めさせてたんだ。」

「お前!またろくでもないことをっ!」

「ひぃぃぃ、打首だけはご勘弁を。」

「何言ってる。」

「いや、侵入したら謀反の疑いで打首だと言ったから。」

「原田の言うとおりだっ!全く!お前って奴はっ!」

「まぁ、歳、そんなに怒るな。蒼良も反省しているし、本当に大坂城に入ったわけじゃないんだ。」

「入っていたら、問題だよ、近藤さん。」

 そう言いながらも、土方さんは私をにらんでいたのだった。

「ところで、埋蔵金って、なんだ?」

 私をにらみつつ、土方さんは言った。

 山南さんから聞いた話をしたら、

「それは大坂城じゃないだろう。」

「えっ、なんでですか?」

「埋蔵金ってのは、何かあった時のために隠すんだろ。豊臣家になにかあった時というのは、大抵、大坂城にも何かあるってことだろう。そんなところに埋める馬鹿もいないだろう。」

「あ、なるほど。じゃぁ、どこに埋めたのだろう。」

「蒼良、もしかして、場所まで聞かなかったのか?」

 原田さんに言われて気がついた。山南さんから、埋蔵金の話を聞いたけど、場所までは聞いていなかったなぁ…。

「エヘヘ…場所、聞き忘れました。」

「蒼良…。」

 原田さんは、気が抜けた声を出していた。

「ま、お前らしいや。おい、行くぞ。」

 土方さんに言われて、私たちは、京屋に戻った。


 山南さんがいたので聞いてみると、

摂津国せっつのくにの多田銀山だ。」

 今で言う兵庫県だ。

「大坂城じゃなかったのですか?」

「俺は、大坂城とは一言もいっとらんぞ。場所を言おうとしたら、蒼良が、走り去ってったから。」

 たしかにそうでした。ああ、勘違い…。

 人間、働かないで、お金を得ようと思ったらダメってことよ。よくわかったわ。


 家茂公の帰京が5月11日に決まった。

 私たちも、一緒に京へ帰ることになった。

 大坂での隊士募集が成功したみたいで、行きよりも帰りの人数の方が多くなった。

 人数が増えての帰京だったので、借りている屋敷の大家である八木さんは驚いていた。

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