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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
慶応2年2月
245/506

大石さんの弟を救え

 二月になった。

 現代で言うと、三月の中旬ぐらいだろう。

 だんだん春らしくなってきた。

 現代の二月と言うと一番寒い時期なので、温かいっていうのがなんか変な感じだ。

 それこそ、異常気象なんじゃないかと思ってしまう。

 近藤さんたちももう広島についているころだろう。

 そう言えば、何か忘れているような……。

蒼良そら、どうかしたのか?」

 この日は原田さんと巡察だ。

「いや、何でもないですよ」

 ただ、何かを忘れているような感じがしているだけだ。

「それならいいが。うわの空で歩いていたからな。あっ、そこに段差があるぞっ!」

 あっと思った時にはその段差につまづいていた。

「うわの空で歩いているからだぞ」

 転んだっ!と思ったら、原田さんの腕にささえられていた。

 現代のようにコンクリートでできているわけではないので、こういう段差はたくさんあるわけで。

 考え事しながら歩いたらいけないな。

「すみません」

 そう言いながら私は自分の足で立った。

「大丈夫か? 何か悩んでいるのか?」

 原田さんが心配して聞いてきた。

「悩んでいると言うか、何か忘れているような感じで……」

 何を忘れているんだろう?

「ああ、それか」

 原田さんは知っているのか?

「今年、節分をやらなかったな」

 ああ、そう言えばやらなかった。

 毎年土方さんに豆を投げているのだけど、今年は代理局長をしているし、そんな忙しくしているときに豆なんか投げた日には、ものすごく怒られて、切腹とかって言いそうだぞ。

 だから、みんな豆を投げなかったのか?

 あと、騒いだら西本願寺のお坊さんたちもうるさそうだしなぁ。

 この前、無断で除夜の鐘をついた時だって、かなりうるさかったらしいし。

 でも、なんか違うなぁ。

「節分も忘れていたのですが、それではないような感じがするのですよ」

 なんだろう?どちらかというと、嫌な予感のような感じだ。

「こういう時は、思い出そうとすると思い出せないもんだ」

 確かに。

「そのうち思い出すさ。考えていたのが嘘のように、ちょっとしたことで思い出したりするからな」

 原田さんの言う通りだな。

 そう思って歩き始めた時、向こうから大石鍬次郎おおいしくわじろうさんが歩いてきた。

「あれ? 珍しいな」

 原田さんが大石さんに言った。

 彼は監察の方の仕事なので、巡察をすると言う事はあまりない。

「副長に言われて、巡察をしている」

 大石さんはそう言った。

 この人は、のちに人きり鍬次郎と言われる。

 暗殺関係の仕事が多いためだ。

 そう言う先入観があるのか、大石さんの目がものすごく鋭く見えるし、雰囲気に殺気を感じてしまう。

 違う意味で苦手な人だなぁ。

 でも、新選組には必要な人なんだろうし。

「何か用か?」

 じいっと見ていた私に気がついた大石さんは、ギロッと私を見てきた。

 思わずビクッとしてしまった。

「な、何でもないです」

「そうか」

 そう一言言うと、大石さんは行ってしまった。

「なんかあの人、怖いですね」

 思わず原田さんに言ってしまった。

「そうか? 刀の腕は確かだが、そんなに怖いとは思わないな」

 それは、原田さんも強いからですよ。

 でも、大石さんというところで、私は引っかかった。

 あっ!そうかっ!

 思い出したぞっ!

「思い出しました、原田さんっ!」

「そうか、よかったな。で、何を思い出したんだ?」

 原田さんは笑顔で聞いてきたけど、私が思い出したのは、笑顔で話せるようなものではなかった。

「大石さんの弟が、うちの隊士に殺されます」

 その一言を聞いた原田さんも驚いていた。


「詳しい話を聞かせてくれ」

 巡察を急いで切り上げ、原田さんと甘味処に入った。

 原田さんは、私が未来から来たことを知っているので、思い出したことを普通に話した。

 確か、新選組のことが書いてあった本に書いてあった。

 慶応二年の二月、まさに今の時期だ。

 大石さんも人を斬るんだけど、その同じ日に今井さんと言う隊士に大石さんの弟が斬られてしまう。

 ものすごく印象がある話だったので、覚えていたのだ。

「そんなことが本当にあるのか? でも、あるんだろうな。未来の本に書いてあったと言う事だからな」

 原田さんも、半信半疑という感じだ。

 そりゃそうだろう。

 思い出した私でさえそう思ってしまう。

「でも、うちの隊士に弟を斬られたとして、大石も黙っていなかっただろう?」

 そうだ、暗殺関係の仕事を得意とした人だ。

 弟を斬られて黙っていたとは思えない。

「でもその後、今井さんが斬られたと言う話は特に聞いてないのですが」

 そうなのだ。

 そこも妙な話なのだ。

 どうなったんだっけ?確か……

「あ、そうそう、土方さんに大石さんが説得されたのですよ」

 それで大石さんも今井さんを斬ることがなかったのだと思う。

 そうか、思い出したけど、解決することだったんだな。

 よかった。

 しかし、原田さんはよかったと思わなかったみたいで、

「大石も、弟が斬られたら悔しいだろう。できればそんな思いはさせたくないな」

 と言いだした。

「人の命がかかっていることだし、阻止できるものなら阻止したいな」

 いや、別にいいのでは?と思ったけど、確かに、無ければ無かったほうがいい事件だから、阻止したほうがいいのかな。

 それに、阻止したら、土方さんの仕事が減るから、いいかもしれない。

「わかりました。阻止しましょうっ!」

 と言う事で、この事件を阻止することにした。

 しかし、阻止すると言っても、簡単に阻止できるものなのだろうか?

 どうやって阻止をすればいいのだろう?

「どうすればいいのですか?」

 と、私は原田さんに聞いた。

「そんなこと、簡単だよ。今井が大石の弟と会わないようにすればいいんだ」

 あ、なるほど。

 そりゃ簡単だわ。

「蒼良、その事件がいつごろ起きるかわかるか?」

 確か……

「二月五日だったと思います」

 あれ?五日って……

「今日だっ!」

 思わず二人で声をそろえて言ってしまった。

「今日の夜に事件が起きるのです」

「そうか、夜か。夜ならまだ時間がある」

 まだ昼過ぎだから、たっぷりある。

「夜に会わせないようにする手っ取り早い方法があるぞ」

 どんな方法だ?

「今井を酔いつぶせばいい。そしたら、奴だって外に出ないから会わないだろう」

 なるほど。

「屯所で酔いつぶせばいいのですね」

「そうだ」

 なんて素敵……いや、いい方法なんだろう。

 人を酔いつぶすのは、私が一番得意な方法じゃないかっ!

 自慢できることじゃないんだけどね。

「わかりました。やってみましょう」

「蒼良、嬉しそうだな」

 えっ、それは原田さんの気のせいですよ。


 屯所で今井さんを酔いつぶそうと企み……いや、作戦を実行するため、今井さんを誘って、原田さんと三人で屯所で飲もうと言う事になったのだけど……。

「えっ、酒がない?」

 原田さんと声をそろえで台所で言ってしまった。

「ここに酒があるわけないでしょう。あったら誰かが飲んじゃってますよ」

 台所を任されている佐々山さんがそう言った。

 確かに、言う通りだよな。

 荒くれ者の男所帯だから、酒なんて置いていた日には、すぐに無くなっちゃうよね。

「酔いつぶす作戦だったんだけどなぁ」

「蒼良、酔いつぶしてそこから出さなければいいのだから、屯所じゃなくても大丈夫だぞ」

 そう言われてみると、そのとおりだ。

 要は、外に出さなければいいのだ。

 それなら酔いつぶす必要もないのでは?と思ったけど、お酒が飲めないのも悲しいので、深く考えるのはやめよう。

「島原でもいいし、祇園でもいいぞ」

「それなら島原にしましょう」

 島原なら、牡丹ちゃんや楓ちゃんがいるから、何とか作戦にのってくれるだろう。

 というわけで三人で島原に向かったのだけど……。

「ええっ、牡丹ちゃんも楓ちゃんも忙しいんだ」

「そうなんよ。二人とも別々なお座敷に出てしもうてな」

 揚屋につくと、番頭さんにそう言われてしまった。

 二人がいなくてもいいかなぁと思ったけど、

「男三人で飲むのもなぁ」

 と、原田さんが言った。

「男だけだとなかなか酔わないかもしれないぞ」

 そ、そう言うものなのか?

「綺麗な女性が酌をしてくれるから酒が進むと言う事があるだろう」

「原田さんはそうなのですね。今井さんはどうなんだろう?」

「い、いや、俺の意見じゃないぞ。今井ならそう思うだろうと思ったんだぞ」

 原田さんはあわてて否定をしていたけど、そんなにあわてることはないと思うんだけど。

「それなら別な所に行きますか? 島原はみんな忙しそうだし、綺麗なお姉さんたちは来てくれなさそうですよ」

 なんで今日はこんなに忙しいんだろう?何かあったのか?というぐらい、揚屋の中は芸妓さんたちでバタバタしていた。

「どこかの金持ちが揚屋と芸妓を全部借りているのかな」

 原田さんが揚屋の中をのぞきながらそう言った。

 そう言う事もあるんだよね。

「たまたま日が悪かったのですね。どうしますか?」

「よし、祇園に行こう」

 というわけで、祇園で飲むことになった。


 祇園は島原と違って静かだった。

 祇園のお客さんが島原に行ったんじゃないか?というぐらいだった。

「ここならゆっくり飲めそうだな。よし、遠慮せずに飲め」

 原田さんが私たちのそう言ってくれた。

 わーい、遠慮せずに飲めるっ!

「蒼良、作戦忘れるなよ」

 原田さんは嬉しがっている私が気になったのか、そう言われてしまった。

「大丈夫ですよ。酔いつぶしますから」

 酔いつぶす自身ならあるからっ!


 数時間後、酔っ払いが出来上がった。

 しかも、二人。

「なんで原田さんまで酔っちゃっているのですか?」

「俺か? 大丈夫だ。歩けるから」

 確かに歩けるみたいだけど、フラフラしているぞ。

 今井さんの方はちゃんとつぶれていた。

 壁にもたれて寝ている。

 このまま朝が来れば、阻止できるぞっ!

 そう思っていたら、

「申し訳ないんやけど……」

 と、お店の人に呼ばれてしまった。


「えっ、泊まりはだめなのですか?」

 三人の中で酔っていないのは私だけだったので、私がお店の人の話を聞くことになった。

 そのお店の人は、今日だけは泊まらないで帰ってほしいとのことだった。

「前にも、うちの隊士が何人か泊まっていると思うのですが……」

「新選組やからとか、そんなことやないんや。今日は日が悪いさかい、夜は閉めようと思うてたんや」

 もしかして、お客が少なく感じたのもそのせいか?

 でも日が悪いって、平安時代か?いや、今は江戸時代だろう。

「申し訳ないけど、頼んだで」

 お店の人は逃げるように去っていった。

 ど、どうすればいいんだ?酔っ払い二人も抱えて。

 酔いつぶしたのは、私なんだけどね。

 あ、自業自得ってやつか?って、こんなこと思っている場合じゃないから。

「原田さんっ! 大変ですっ!」

 酔ってレロレロになっている原田さんを大きな声で呼んでみたけど、

「大丈夫だ。俺は酔っていない」

 と言われてしまった。

 話が通じない時点でもう酔っているからね。

 このまま夜明けまでと思ったけど、お店の人に追い出されそうだから、別な店に行こうかな?

 ああ、でも、酔っ払い二人を受け入れてくれるような心が広い店なんであるのか?

 ないよな。

 ない、絶対にない。

 仕方ない、屯所に帰ろう。

 今井さんも、たくさん飲んでいるから、人を斬るなんてことはできないだろう。


「原田さん、今井さんをしっかり抱えてくださいね」

「わかってるって」

 と言いつつ、原田さんもフラフラしている。

 今井さんは、完全に気を失っている。

 なんとか立って歩ける原田さんに、今井さんの片側を支えてもらい、二人で今井さんを抱えて屯所へ向かって歩いている。

 原田さんも酔っているので、一緒にフラフラと右へ行ったり左へ行ったりして歩いているのだけど。

 そんな歩き方で歩いていると、人にもぶつかるわけで、気を付けていたのだけど、よけきれなくてぶつかってしまった。

「おいっ! どこ見て歩いてんだっ!」

 男の人に大きな声で怒鳴られてしまった。

「すみません」

 私はあわてて謝った。

 こっちも酔っているけど、向こうも酔っている。

 息がお酒臭かった。

「謝ってすむと思ってんのか?」

 ああ、これだから酔っ払いは嫌だっ!

「すみません」

 でも、謝ることしかできないので、ひたすら謝った。

「お前、誰に向かってそう言ってんだ?」

 そう言いだしたのは原田さんだった。

 こんな時に相手を怒らせるようなことをっ!

「なんだとっ!」

 ああ、相手を怒らせてしまった。

「すみません、酔っているので、許してください」

 私は必死に謝ったけど、謝れば謝っただけ原田さんが相手を怒らせるようなことを言っていた。

 原田さんも、普段はそんなに酒癖が悪い人じゃないんだけどなぁ。

 そんなことを思いながら、原田さんをなだめ、相手に謝りと忙しく動いていた。

 しかし、私の努力も無駄だったみたいで、ついに相手が怒り、刀を抜いてきた。

「俺を誰だと思ってんだっ!」

 そう言って、刀を振り上げた。

「やめてくださいっ!」

 私は、さやに入れたままの刀を出し、その男の人の振り落した刀を受けた。

「そんな物騒なもの、閉まってください。今回はお互い酔ったうえでのことなので、水に流してください」

 武士は、刀を抜くと斬るまでしまわないと聞いたことがある。

 私の一言でしまってくれるとは思わないけど、相手も酔っているからもしかしたらしまってくれるかも。

 しかし、事は大きくなってしまった。

 なんと、私に刀を向けていた男の人が突然倒れたのだ。

 な、何が起きたんだ?

 倒れた男の人の後ろには、刀を出して立っていた今井さんがいた。

 も、もしかして……。

「今井さんが斬ったのですか?」

 原田さんとその男の人にかかりっきりで、今井さんがいたことをすっかり忘れていた。

 いつの間に酔いがさめたのだろう?

 もしかして……

 ものすごく嫌な予感がして、斬られた男の体にさわった。

 脈がないから、すでに死んでいるのだろう。

 今井さんの刀が致命傷になったのだろう。

 身元を知るためにあっちこっち探ってみた。

 その身元がわかるものが、根付けの先にあった巾着の中に入っていた。

 くっきりとした文字で、一橋家家臣大石と書いてあった。

 間違いない、大石さんの弟だっ!


 その後、どうしたらいいのかわからず、そのまま屯所に帰った。

 今井さんの酔いは、大石さんの弟を斬った時だけさめたらしく、後は今まで通り原田さんと私に抱えられて帰ってきた。

 原田さんは、屯所に着くとそのまま倒れこむように寝てしまった。

 原田さんが倒れこんでしまったので、今井さんを運ぶことが出来ず、結果的に二人が屯所の玄関で寝ている状態になった。

 もう屯所に着いたから、どこで寝ようといいか。

 そう思っていたら、誰から玄関に入る気配がした。

 玄関の方を見ると、血だらけの大石さんがいた。

「け、怪我をしたのですか?」

 思わず聞いてしまった。

「返り血だ」

 大石さんはそう一言言って奥へ入って行った。

 そうだ、大石さんも人を斬るんだったよなぁ。

 ああ、これからどうすればいいんだろう?

「また派手に飲んできやがってっ! 禁則に禁酒を入れるぞっ!」

 その声は……

「土方さんっ!」

「お前、また酔いつぶしたのか? しかも二人もっ!」

 ここまで色々なことがあって、私もいっぱいいっぱいだったのだろう。

 土方さんの姿を見てホッとして涙があふれてしまった。

「ど、どうすれば、どうすればいいの、ですか?」

 泣きながらながら土方さんに言った。

「なにがあった? とにかく落ち着け」

 落着けないよ。

「わかった。一回泣いてしまえ。そうすれば落ち着く」

 そう言って土方さんが私の頭を自分の胸のところに持って行った。

 土方さんの胸の中で思いっきり泣いてしまった。

 その間も、土方さんは私を優しく抱きしめてくれた。


「そう言う事なら、ほっといてもよかったんじゃねぇのか?」

 私の話をすべて聞いた土方さんが、最後に一言そう言った。

 たくさん泣いた私はすぐに落ち着くことが出来た。

 私が落ち着いたのを見て、土方さんと一緒に部屋に帰ってきた。

「確かにそうなのですが……」

 土方さんの言う通りなんだけど。

「気にするな。どっちにしろこうなることになっていたのだろう? それなら、別にこのままでもなんとかなるだろう」

 確かに。

「大石には一言言っておいたほうがいいな。あいつだって遅かれ早かれ自分の弟が斬られたことを知るだろう。お前は、今は寝ていろ。後は俺が何とかする」

 土方さんは、ポンッと私の頭に手をのせて言った。

「すみません」

「謝るな。俺の仕事だからな。仕方ねぇだろう」

 土方さんは優しく笑ってそう言った。


 次の日、大石さんが土方さんの部屋の呼ばれた。

 そして、今井さんが弟さんを斬ったことを話した。

 大石さんは今にも今井さんを斬りに行こうと言う感じで、刀を出そうとした。

 それを土方さんが止めた。

「私闘を禁ずるっ! 今井を斬ったら切腹だからな」

 土方さんは大石さんをにらんでそう言った。

 その顔は、まさに鬼だった。

 けど、

「近藤さんがいない今、俺は近藤さんの新選組を預かっている。これは大事な預かりものであることは、お前もわかるだろう?」

 と言った土方さんは、優しい顔に戻っていた。

 大石さんは、土方さんを見てうなずいていた。

「その新選組で近藤さんの留守中に私闘があったなんて事になったら、俺は責任を取って切腹しなければならない」

 そ、そうなのか?そんな話初めて知ったぞ。

「いいか? 今井に何かあったら、俺もお前も切腹だ。これは俺だけの問題でもないし、お前だけの問題でもない。俺とお前の二人の問題だ。それだけは頭に入れておけ」

「わかりました」

 大石さんは頭を下げて部屋を出て行った。

「で、お前はなんで泣いてんだ?」

 大石さんが部屋を出た後、土方さんが私を見てそう言った。

 大石さんは弟を今井さんに斬られたのに、なんで大石さんは今井さんを斬らなかったのだろう?

 ずうっと思っていたけど、それが今わかった。

 それがわかったら、なんか感動して泣いてしまった。

「感動していたのですよっ!」

「お前が感動するところじゃねぇだろう」

「土方さんってすごいですねっ!」

「おだてても何も出ねぇぞ」

 でも、土方さんも嬉しそうな顔をしていた。

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