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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年4月
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竹とんぼ

最近、沖田さんが近所の子供たちにモテモテで、屯所内でも子供たちと一緒にいる沖田さんをよく目撃する。

 この日も、子供たちがいて、その中心に沖田さんがいた。沖田さんは竹を削って何かを作っていた。

 何を作っているのだろう。私も、子供たちの中に混じって一緒に見ていた。

 沖田さんが作っていたものは、

「あ、タケコプター」

 にそっくりなものだった。どうして沖田さんがタケコプターを知っているのだろう?

「たけこぷたあ?なにそれ?」

 沖田さんは、作ったものを子供に渡した。子供たちが

「私も!」

 と言うので、沖田さんはまた作り始めた。

 タケコプターじゃないなら、なんだろう?似ているのだけどなぁ。

「何作っているのですか?」

 私が聞くと、作りながら沖田さんが、

「えっ、これ、知らないの?」

 と、聞いてきた。

「はい、なんですか?」

「本当に知らないの?」

「似ているものなら知ってますが、それじゃないみたいなので。」

「これ、知らない人、初めて見たよ。」

「そんなに有名なものなのですか?」

「子供の時に遊ばなかった?」

 これで?うーん、遊んでないなぁ。

「お兄ちゃん、竹とんぼって言うんや」

 子供たちの一人が教えてくれた。

「へぇ、竹とんぼって言うんだぁ。どうやって遊ぶの?」

「こうやってな。」

 そう言いながら、竹とんぼの棒の部分を両手のひらで挟み、手をこすり合わせると、竹とんぼの羽の部分がグルグルと回った。

 勢いよく回して手を離すと、遠くまで飛んでいった。

「すごい!初めて見た。」

「蒼良、本当に知らなかったの?」

「だから、知らないって言ってるじゃないですか。」

「信じられない…。」

 そう言われても、知らないものは知らないんだから、仕方ない。

「僕が教えてあげるさかい、一緒に遊ぼう。」

 子供たちの一人に誘われた。

「うん、教えて。」

 沖田さんに、私の分も竹とんぼを作ってもらった。

 みんなで飛ばし合いをしたら、これがなかなか面白い。子供の遊びをバカにしてはいけない。

「蒼良が子供相手に本気になってる。」

 そんな私を見て、沖田さんは笑っていた。

 飛ばすコツなんかも教えてもらったけど、これがまたうまく飛ばない。

「でも、さっきより遠くに飛ぶようになったで。」

 子供に励まされてしまった。

「よし、じゃぁ、かくれんぼしようか?」

 沖田さんが言うと、子供たちは喜んでやる!と言った。

 可愛いなぁ。子供たち。

「じゃぁ、一番竹とんぼが飛ばんかったこのお兄ちゃんが鬼や。」

 えっ、私が鬼?なんて思っていると、子供たちは歓声を上げて逃げていった。

 かくれんぼは、やり方は今と同じでいいのか?

 とりあえず、目を手のひらで隠して10秒数えた。

「もういいかい?」

 聞いても返事がないから、みんな隠れたのだろう。どれどれ、探してみるか。

 結構2~3人で固まって隠れていて、範囲は屯所内と暗黙のルールがあるのか、ほとんどが屯所内で見つかった。

「これで、全員かな?」

 子供たちの人数を数えながら言うと、

「お雪ちゃんがおらんよ。」

 と、子供たちが言った。

「え、お雪ちゃん?」

「うん。色が白くて、小さい子。おらんよね。」

 子供たちの中の一人が言うと、いないね、と言い合っていた。

「じゃぁ、みんなで探してみよう。」

 沖田さんがそう言うと共にみんなで探し始めた。

 しかし、お雪ちゃんは見つからなかった。

「屯所の外かもしれないですね。」

「ああ、蒼良の言うとおり、外に出たのかも。探してみよう。」

 みんなで、屯所の外へ出て探したけど、見つからなかった。

「お雪ちゃん、神かくしにおうたんかも。」

 子供たちが言い始めた。

「神かくしって、どこかにいなくなっちゃうやつ?」

「そうや。だって、見つからへんし。」

「神かくしなんてあってないよ。絶対に近くにいるはず。そもそも、そんなものは無いに決まってる!」

「蒼良はずいぶん力説するね。」

「だって、そんなもの信じてないもん。沖田さんも神かくしにあったと思いますか?」

「僕も、そういう話は信じないからなぁ。」

「でも、神かくしはあるで。よく聞くもん。うち、怖いから一人で外歩かんもん。」

 子供たちが言うと、うちも、という声がちらほら。

「あのね、本当に怖いのは神かくしでも幽霊でもないよ。」

 私が言うと、子供たちは不思議そうな顔をして見た。

「じゃぁ、何が怖いん?」

「人間だよ。」

 みんな、ええって顔をしていた。そりゃ、自分たちが一番怖いなんて信じないよね。

「幽霊が人を殺したって話は聞かないけど、人間が人を殺したって話は聞くでしょ。だから、一番怖いのは人間。」

「そういえばそうやな。うちのお母さんも、出かけるときは幽霊に気いつけてなって、言わんなぁ。」

「うちも言われへん。治安が悪いから、変な人には気い付けるようにとは言われるけどなぁ。」

「お兄ちゃん言う通りかもしれん。」

 私の話に素直に納得する子供たち。うん、可愛い。

「で…神かくしにあっていないとして、お雪ちゃんはどこに行ったんだい?」

 沖田さんが言った。そうだ、今はそっちが本題だ。


 結局お雪ちゃんは近所のお寺にあるお堂の階段の陰に隠れていた。

 そんなところに隠れていたんじゃぁ、見つけられないよね。

 しかも、隠れ疲れたというのか、眠っていた。見つけてくれるのを待っていたのだろうなぁ。

 私がお雪ちゃんを持ち上げようとしたけど、重くて持ち上げられなかった。

「蒼良は、力がないなぁ。」

 そう言うと、沖田さんが軽々とお雪ちゃんを抱き上げた。

「起こすのもかわいそうだから、このまま家まで送っていこう。」

 沖田さんは、お雪ちゃんを起こさないように静かに歩いた。

 無事にお雪ちゃんを家まで送り届けたら、結構な時間になっていたので、そこで子供たちも家に帰っていった。

 私たちも、屯所へ向かった。

「ところで、たけこぷたあってなに?」

 突然、沖田さんが質問してきた。

「えっ、覚えていたのですか?」

「なんか、変わった名前だなぁって思って。」

「これ、頭につけたら空飛んだりとかしないですよね。」

 私は竹とんぼを頭につけてみた。

「飛んだら面白いだろうけど、残念ながら飛ばないよ。」

「ですよね。」

「発想は面白いよね。」

 沖田さんが楽しそうに言った。

 きっと、竹とんぼがタケコプターのモデルなのかな。

「それにしても、竹とんぼ知らない人、初めて見た。」

「えっ、そうですか?」

「みんな遊んでいるよ、これで。」

 と言われても、私の小さいときはこういうものはなかった。

 きっと、この時代から私のいる時代に来るまでに数が少なくなってしまった、古き良きものの一つなのかもしれない。

「これ、もらっていいですか?」

 私が沖田さんに聞くと、いいよと言ってくれた。

「でも、こんなものもらって何にするの?」

「宝物にします。今日も楽しかったし、またみんなで遊べるといいな。」

「蒼良のばあい、子守というより、みんなと一緒になって遊んでたね。」

「沖田さんも、そうじゃないですか。」

「いや、僕は一応子守してあげているんだよ。」

 いや、どう考えても、一緒に遊んでいたような気がするけど。

 ま、いいか。楽しかったから。

 たまには子供心にもどるのもいいのかもしれない。私の場合、いつも子供心だったりするけど…。

 ちなみに、部屋で竹とんぼを飛ばしたら、土方さんに怒られた。

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