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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
慶応元年10月
223/506

そして恋の行方は?

 再び、山崎さんと巡察中だ。

「山崎さん、本当は巡察のふりをして、なんかの捜査をしているのではないのですか?」

 山崎さんは監察方というところに所属しているので、一緒に巡察をすると言う事があまりない。

 今回はそれが二回目なので、もしかして何かの捜査をしているのではないのか?と思っているところだ。

「それは、内緒です」

 そう言って、山崎さんはにっこりと笑った。

「えっ、内密の捜査なのですか?」

「なにもないので、ご一緒させてもらっているだけですよ」

 本当なのかなぁ。

 でも、捜査のための巡察で極秘の任務だったら言えないよね。

 チラッと山崎さんを見ると、山崎さんも私のことを見ていて、目があってしまった。

 驚いていると、山崎さんは優しく笑っていた。


 例の藤堂さんのことが好きな女の子とは、あの日以来会っていない。

 っていうか、その場所に近づいていない。

 一応、土方さんが本人がいない時にお茶屋の人に伝言を頼んで、それで終わりにしたのだけど。

 そんな簡単に終わりになるのかなぁという思いもあり、会わない方がいいに決まっていると思い、そのお茶屋さんに近づかないようにしていた。

 しかし、今日は油断していた。

 気がついたら、例のお茶屋さんの前を通っていて、

「あっ!」

 と、女の子に指をさされていた。

 しまった、油断した。

「あれからずうっと待っとるんやけど、藤堂はん来ないけど、うち、あんたらに頼んだよな?」

 えっ、ずうっといたのか?

「私が来た時は、いなかったのですが……」

 土方さんと来た時はいなかったから、伝言を頼んだのだ。

 しかも、騙されたなと言われながら。

「うちだって、たまにはおらん時もある」

 いや、お茶屋の人は、そんな毎日来ていないようなことを言っていたが……。

「もしかして、まだ解決していなかったのですか?」

 山崎さんが間に入ってそう聞いてきた。

「伝言を頼んだはずなんですが」

「聞いたで」

 なんだ、聞いていたのか。

「あんな伝言ひとつで納得できんわ」

 そ、そうなのか?

「で、でも、藤堂さんをちゃんと連れてきて、伝言したのですよ」

 本当は土方さんなんだけど、そう言わないとこの人あきらめないでしょう?

「あなたがいなかったから、直接言えなかったのですよ」

「うちやって、たまにはおらん時もある」

 いや、だから、たまにじゃないだろう。

 たまにここにいるんだろう?たまにの使い方間違っているよ。

「藤堂さんがその気がないと言っているので、あきらめたほうがいいと思いますよ」

 なんで私がこんなことを言わなければいけないのだ?

「あんたの口からやのうて、本人の口から聞きたいわ」

 それはそうだよね。

「わかりました。藤堂さんを連れて、ちゃんと本人の口から本人に言うしかなさそうですね」

 山崎さんがそう言った。

 そりゃわかっているけど、藤堂さんも来る気なさそうだったし、山崎さんも途中で逃げたじゃないかっ!

「そうせんと信じられんわ。頼んだで」

 えっ、なんか頼まれてるし。

「わかりました」

 了解しているし。

 もう私は知らんぞっ!


 屯所に帰り、私はそのまま部屋に戻ろうとしたら、山崎さんに手をつかまれてしまった。

「どこに行くのですか?」

 優しい笑顔で言われた。

「お部屋に帰ります」

 笑顔でそう返したけど、

「藤堂さんに用事があるでしょう」

 と言われて、そのまま手を引かれて藤堂さんのところへ連れて行かれた。

 藤堂さんは部屋にいた。

 今までのことを話すと、

「え、うまく断ったんじゃなかったの?」

 と言われてしまった。

「今日会ってしまったのですよ」

 会わないようにしていたんだけどなぁ。

「本人に会って、直接断ったほうがいいですね」

 山崎さんがそう言った。

「蒼良でも苦戦しているのに、私が行ったら余計にこじれそうな感じがするのだけど」

「いや、そんなことはないですよ。藤堂さんが行けば、一発解決ですよ」

 山崎さんもコクコクとうなずいていた。

「あまり行きたくないなぁ。蒼良、また頼むよ」

 えっ、またか?もう嫌だなぁ。

「それは違うでしょう。藤堂さんが直接行けば、こういうことにならなかったと思うのです」

 山崎さんがちょっと厳しい声でそう言った。

「これ以上こじれるのであれば、任務にも影響が出るので、副長に相談しますが」

 山崎さん、土方さんはもう知っているから。

 そう言おうとしたら、山崎さんが私を止めた。

 山崎さんに任せておけと言う事か?

「わ、わかったよ。何とかするから、土方さんには言わないで」

 藤堂さんからその言葉がきけた。

 よしっ!

 あ、でも、もう土方さんも知っているんだけどね。

「今日中に何とかしてください」

 山崎さんがそう言い放った。

 えっ、今日中?早くないか?

 でも、もう一カ月ももめているんだよなぁ、これ。

「今日中に?」

 藤堂さんも驚いたみたいで、そう聞いていた。

「そう、今日中です。頼みましたよ」

 山崎さんはそう言うと行ってしまった。

 私も行こうとしたら、今度は藤堂さんにつかまってしまった。

「蒼良……」

 今回は鬼にならなければ。

「だめですよ。自分で何とかしてください。私も色々やりましたが、結局だめでしたから」

「蒼良、頼むよ」

 藤堂さんの悲しそうな顔を見ると、なんかかわいそうになってきた。

「わかりました。ただし、藤堂さんの付き添いで行きますからね。断るのは、藤堂さんですからね」

 そう言うと、

「わかった、ありがとう、蒼良」

 と、藤堂さんの顔が笑顔になった。

 

「あそこに座っているのがそうなのですが」

 物陰から、お茶屋さんを見た。

 私と会った時と同じ場所に、女の子はすわっていた。

「毎日座っていると言っていたのですが、たまにしかいないらしいです」

 そのたまににあたってしまったのだけど。

「しらないなぁ」

 えっ?

「あの子、見たことないよ」

 そ、そうなのか?

「でも、藤堂さんも会っているはずですよ」

 会わなければ、一目ぼれも何もないだろう。

「わかった。行ってみるよ」

 藤堂さんは女の子に近づいて行った。

 女の子が顔をあげて藤堂さんを見たけど、無反応だった。

 緊張して無反応なのかもしれない。

 女の子と目があった藤堂さんは、一瞬固まったらしい。

 それから回れ右をして私の方に来た。

「やっぱりだめだ。あの子、気が強そうじゃないか」

 藤堂さんが戻ってきてそう言った。

 いや、ちょっと待て。

「藤堂さん、目があいましたよね」

 藤堂さんはうなずいた。

 あの女の子の性格上、目があったら、絶対に何か言うと思う。

 けど、何も言わなかった。

 なんでだ?もしかして、目が悪いとか?

「ちょっと、私が行ってみますね」

 私が行って何も反応が無ければ、目が悪いと言う事で。

 しかし、私が近づいたら、

「あ、待っとったで! で、連れてきたん?」

 と言われた。

 えっ、連れて来たも何も……。

「今、目の前に来ましたよ。見えませんでした?」

 私が言ったら、

「来とらんよ」

 ほ、本当か?思わず、後ろの物陰から見ている藤堂さんを見た。

 藤堂さんもおかしく思ったみたいで、出てきてくれた。

「あの人が藤堂さんですが……」

 私がそう言うと、

「違う。あん人はうちの知っとる藤堂はんやない」

 と、女の子が言い出した。

 どうなっているんだ?


 その後、三人で話をした。

 女の子が、藤堂さんと思っていたのは、全く別な人のことらしいと言う事がわかった。

「でも、うちが助けてもろうた時は、藤堂先生って呼ばれとるんを聞いたんよ」

 女の子は、三条付近で浪人にからまれていたところを藤堂さんに助けられたらしい。

 いや、正確には、藤堂さんと思われる男性というのか?

「確かに、三条付近で女の子を助けた記憶はある」

 藤堂さんもそう言い始めた。

「それは、一人ではないですね」

「八番隊の巡察中だったから、私と数人だったと思う。女の子を助けた時は、私と二人の隊士がいたと思った」

 と言う事は……。

「その二人の隊士のどちらかが、藤堂さんですよ」

 と言う事になるだろう。

「本物はここにいるんだけどね」

 藤堂さんは苦笑いをしながらそう言った。

「うちは、全然知らん人に文を書いたと言う事になるんか?」

 女の子は、悲しい顔をしてそう言った。

「うん、そう言うことになりますね」

 私も、かわいそうにと思いつつ、そう言った。

「一カ月も間違っとったんや。うちは何しとったんやろう」

 女の子が泣きそうだと思ったので、思わず背中をさすってしまった。

 しかし、女の子は強かった。

 むくっと顔をあげると、

「あんたが直接来てちゃんと言ってくれたら、もっと早く気がついたんやっ!」

 と、藤堂さんに言った。

「それは、私もそう思いますよ。もっと早く、今日みたいに直接会っていたら、よかったのですよ」

 女の子を顔を見合わせて、ねぇっとうなずき合ってしまった。

「女二人で結束しないでよ」

「え、女二人? 女は私だけやで」

 藤堂さんは、自分の失言に気がついたらしく、

「あ、そうだった」

 と言ってごまかしていた。

「藤堂さん、一緒にいたその二人の隊士はわかりますか?」

 私が聞いたら、藤堂さんがうなずいた。

「その隊士をここに連れてきます。きっと、そのどちらかがあなたの言う藤堂さんですよ」

「ほんまに? そこまで頼んでええの?」

「やるのはここにいる藤堂さんですから」

「えっ、私が?」

「この子を一カ月もまたした罪は重いですよ。だから、本物の藤堂さん探しに協力してくださいね」

「蒼良、あのさ、私が本物の藤堂なんだけどね」

 あ、そうだった。


 女の子と約束した通り、あの日一緒にいた隊士二人を連れてきた。

 女の子の言う藤堂さんはすぐに分かった。

 なんと、隊士の方も反応したからだ。

 なんで反応したかというと……

「自分も探していたのです」

 とのこと。

 女の子を助けた時、一目惚れをしてしまったらしい。

「あら、両想いですね」

 よかった、よかった。

 というわけで、ここに一組のカップルが生まれたのだった。

「けっこう気が強いらしいから、気を付けたほうがいいよ」

 藤堂さんは小声でその隊士にアドバイスをしていたのだった。


「無事に解決してよかったですね」

 屯所への帰り道。

 すっかり夕方になっていた。

 最近は日が暮れるのも早くなっていた。

「そうだね。蒼良のおかげだよ」

「藤堂さんが、もっと早く会っていたら、こうはならなかったと思いますよ」

「そうだよね。蒼良には、色々悪いことをしちゃったなぁ」

 いつもなら、そんなことないですよって、言うのだけど、今回だけは、本当にそうだと思ってしまった。

「蒼良怒ってる?」

 藤堂さんがそう言いながらのぞきこんできた。

「少しだけ怒っています。でも、終わり良ければすべて良しと言う事で」

 終わりがよかったんだから、いいと言う事にしよう。

「今度、蒼良にお礼をするよ。お酒飲み放題がいい?」

 おお、それはいいっ!

 でも……

「私と飲むと、私がみんなを介抱しなければならないから、逆に大変だと言う事がわかりまして……」

「そう言われると、そうだね。蒼良は強いから酔いつぶれたことはないしね」

 いや、私でも酔いつぶれたことはあるのだ。

 お師匠様の話だと、日本酒だけは強いけど、他のお酒はだめらしいし。

「じゃあ何がいい?」

「何か甘いものが食べたいですね」

 源さんが差し入れでくれた大福以来、甘い物を食べてないよなぁ。

 しかも、あの時もあわただしく食べた記憶がある。

「蒼良は、本当に甘いものが好きだね。いいよ。明日食べに行こう」

 わーい。

 というわけで、次の日に藤堂さんにお汁粉の美味しい店に連れて行ってもらい、甘いものを堪能したのだった。

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