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幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
文久3年3月
18/506

会津藩邸へ

 朝起きたら、屯所の中が騒がしかった。

「どうしたのですか?」

 バタバタと、いくつかの着物を持って走り回っていた八木さんの家のご主人に聞いた。

「急に貸して欲しいって言うさかいに…。」

 そう言いながら、大量の着物を床に下ろした。

「これでええやろか?」

「充分だろう。」

 それを見た芹沢さんが言った。

「なんですか、それ。」

 私が聞いたら、

かみしもだ。会津公に会いに行くのに、普段と同じ着物じゃぁいかんだろう。」

 と、芹沢さんが笑いながら言った。

 かみしも?会津公に会いに行く?

「お前、まさか、裃を知らないわけじゃないよな?」

 着物をみんなに配りながら土方さんが言った。

「えっ、知らないですが…。」

「裃を着たことない奴はいるだろうと思っていたが、知らん奴までいるとは…。あれがそうだ。」

 土方さんは、ちょうど裃を着て出てきた近藤さんを指さした。

「これおかしくないか?大丈夫か?」

「近藤さん、似合ってますよ。」

 近藤さんが聞いてきたので、答えた。

 これが、裃って言うのか。時代劇でよく着ている人を見たわ。

 肩のところが横にピンととがったように出ていて、前は見た目はベスト?という感じの。そして、胸の辺り、ベストで言うY字の部分に家紋が入っている。

「土方さん、見たことあります。これが裃って言うのですね。」

「見たことあるに決まってんだろっ!まさか、着れねぇって言うんじゃないだろうな?」

「えっ、私も着るのですか?」

「みんなで会津公に挨拶に行くんだ。蒼良君も、ちゃんとした格好でいかないとな。」

 近藤さんが私の方をポンっとたたきながら言った。

 着れないっていったら怒られそうだから、なんとか着てみるか。

 この時代に来てから、毎日着物を着たりしているせいか、最初の時と比べると着物とか着れるようになってきた。

 裃もきっと着れるはず。着れるはず!着れる…

 これはどこから来ている布だ?これは…

「着れねぇようだな。」

 土方さんが来て、ささっと着物の上から裃を着せてくれた。

「わぁ、ありがとうございます。」

「初めて着るのか?」

「はい、初めてです。」

 江戸時代風のテーマパークに行かないと、こういうもの着れないもんね。貴重だわ。ああ、写メが撮れれば撮りたかったな。

 そんなことを思っていると、みんな裃を着て続々と出てきた。

 それを見た八木さんが、

「家紋がみな同じやさかい、おかしゅうないかな?」

 と言っていた。家紋が同じだと、何かあるの?

「そんなこと気にせんでいい。これで上等だ。」

 芹沢さんは満足気に言った。

 後で知ったけど、家紋が同じだと、レンタルしたということがバレバレだから、八木さんは心配したらしい。

 でも、こんなものもって江戸から来れないし、これはこれでいいのかな。

 でも、なんで会津公に会うのに裃?というのも、この時代の公式の礼服のようなもの。現代でいうところのスーツにあたるものが、この裃になるらしい。

 藩主に会いに行くのに、普段着で行くと無礼にあたるから、裃を八木さんから借りていくことになったらしい。

 ということで、会津藩のいる京都守護職邸に行った。

 行く途中、人生初の裃を着てルンルン気分な私に、土方さんが、

「遊びに行くんじゃないんだぞ。」

 と言っていた。

 しかし、そのルンルン気分も、その守護職邸についたと同時に消えた。

 お屋敷の大きいこと。とにかく広くて大きい。

 中に入って迷子になって不審者扱いされて切られても嫌なので、必死にみんなの後についていった。


 そんな感じで必死についていったけど、肝心の会津公は留守だった。っていうか、アポとってなかったんかいっ!えらい人に会うには、前もって約束が必要だと思うのだけど。

 でも、周りの雰囲気が、ま、仕方ないか。という感じなので、やっぱり、約束していなかったらしい。 これって、ある意味無礼になるのでは?と思い、怒られると思ってドキドキしていたけど、逆に歓迎されてしまった。

 いいのか?これで。そう思っているのは多分私だけらしい。

 また後日出直してきますということで、今回は屯所へ帰った。


 みんなはすぐに裃を脱いだけど、私はなんか脱ぐのがもったいなくて着ていた。

 縁側に座って、ぼんやりと外を見ていた。 

「お前は、いつまでそれ着てんだ?」

 土方さんがやってきて、私の横に座った。

「なんか、脱ぐのもったいなくて。初めて着たし。」

「着ようと思えばいつでも着れんだろう。ま、お前は一人で着ることができないからな。」

「そのうち、裃も一人で着れるぐらいになります。」

「そんなに着るもんじゃないぞ、それ。」

 まぁ、そうなんだろうなぁ。ずうっとスーツ着ている人もいないし。

「お前がそう言うなら、一人で着れるようになるのを見届けてやるか。」

 そう言いながら土方さんは、私の頭をグシャグシャっと撫でた。


 次の日、近藤さんと芹沢さんたちが会津公に会いに行き、今回はちゃんと会えたらしい。

 そして、八木さんの家の門に『壬生浪士屯所』と言う看板がついた。

 沖田さんや原田さんと一緒にその看板を眺めた。

「これ、曲がってないか?」

「左之さん、これで大丈夫ですよ。」

 と沖田さんが言うと、

「左之さんの首が曲がっているのですよ。」

 と、笑いながら藤堂さんが言った。

「平助っ!」

 原田さんが藤堂さんを追いかけるが、藤堂さんの逃げ足が早かった。


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