表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幕末へ タイムスリップ  作者: 英 亜莉子
元治2年3月
172/506

再び江戸へ

 近藤さんに部屋まで来いと言われたのだけど……

 近藤さんの部屋ってどこだ?

 屯所が移って間もないので、誰のいる部屋にこいとか、誰を呼んでこいとか言われると、困ってしまう。

 で、近藤さんの部屋だ。

 ここかな?そう思って開けると、たくさんの隊士がいた。

 しかも、着替えのとちゅだったのか、裸の人もいるし、着替えの途中じゃないけど裸で寝ている人もいるし……

蒼良そらどうした?」

 失礼しましたと言って閉めようとしたけど、永倉さんが出てきたので閉められなかった。

 早く閉めたいのですが……

「せっかく来たのだから、中に入ったらどうだ?」

 いや、遠慮します。

「顔が赤いぞ。男の裸見て照れてんのか? 蒼良も同じ体だろうが」

 いや、違います。全然違うから。

「近藤さんの部屋に行かないといけないので、失礼します」

「遠慮しないで、入って行けよ」

 絶対に嫌ですっ!

 しかも、遠慮なんてしていないから。

「忙しいので、後でお伺いします」

「そう言わずに」

 永倉さんに手を引っ張られた。

 だから、この部屋に入るのが嫌なんだっでばっ!

 裸の奴っ!着物ぐらい着たらどうなのさっ!裸族か?

 永倉さんと引っ張り合いになっていたら、斎藤さんがやってきた。

「近藤さんの部屋にくのだろう? ここで油売っている場合じゃないだろう」

 斎藤さんが、私の腕を永倉さんの手から解放してくれた。

「蒼良をあまりからかうな」

 斎藤さんが永倉さんに一言言った。

 えっ、からかわれてたのか?

「蒼良、襖を開けた途端顔が赤くなっていたからな」

 永倉さんが笑いながら言った。

 やっぱりからかわれていたらしい。

「蒼良も、行くぞ」

 斎藤さんに言われ、部屋を後にした。

「斎藤さんが近藤さんの部屋に案内してくれるのですか?」

 私が聞くと、斎藤さんはニヤリと笑った。

「なんで俺がお前を案内しなければならない?」

 ええっ!違うのか?

 それじゃあ、私はいったいどこに向かっているんだ?

「俺も近藤さんの部屋に来いと呼ばれているから、向かっているだけだ」

 えっ?と言う事は、近藤さんの部屋に向かっていると言う事だよね。

 もしかして、またからかわれたか?

 そう思って斎藤さんの顔を見たら、笑っていた。

 やっぱりからかわれていたらしい。

 

 近藤さんの部屋に行くと、土方さんと伊東さんもいた。

 土方さんはわかるが、なんで伊東さんがいるんだ?

「お、来たな」

 近藤さんが私たちを見ると、そう言って部屋に迎えてくれた。

 私たちが座ると、土方さんが話を始めた。

「急で悪いが、隊士募集をしにこの人数で江戸に行くことになった」

 本当に急な話だな。もしかして……

「土方さん、からかっているのですか?」

 そもそも伊東さんも一緒に行くというのが納得いかない。

 何かの冗談だろう。

「からかっているわけねぇだろうがっ!」

 そ、そうなのか?

「伊東さんは、母上が病気になって寝込んでいるから帰って来いって、家から文があったんだ」

 近藤さんが伊東さんのことを説明した。

 この話、どこかで聞いたことあるぞ。

 ああ、でも、どこでだっけ?

「だから、伊東さんと斎藤とお前と俺の4人で江戸に行く」

 考えていたら、土方さんに突然言われた。

「えっ? 近藤さんは行かないのですか?」

「わしはこの前行ってきたからな。今回は歳に頼んだ」

 そうなんだ。

「いつからですか?」

 斎藤さんが無表情で聞いた。

「明日だ」

 土方さんがそれに答えた。

 ええっ!ずいぶん急な話じゃないかっ!

「やっと許可が下りたんだ。上の人間の考えが変わらねぇうちに行かねぇとな」

 そうなんだ、許可がいることは知らなかった。

「明日出発だから、準備しておくように。それとお前」

 土方さんが私を指さした。

「な、何ですか?」

「荷物は少な目にな」

 そう言ってニヤッと笑った。


 次の日の朝、屯所の前で集合し、そのまま江戸に向かって歩き始めた。

「今回も、中山道ですか?」

 今回はずいぶんと速足で歩いている土方さんに聞いた。

「ああ、富士山見れなくて悪かったな」

 いや、別に、もう慣れたからいいのだけど。

 江戸に行く表の道は東海道だけど、東海道は川が多いのに橋がないところが多く、そう言うところは、人にかついでもらってわたるか、自力で渡るかしないければならないので、時間もかかる。

 だから、大抵の人たちは中山道を通って江戸に行く。

 この時代の富士山を見てみたいという野望もあるのだけど、それはかないそうにないな。

 それにしても、ずいぶんと速く歩くなぁ。

 それについて行けてる自分も、体力がついたなぁと思う。

 自分で自分をほめてやろう。


 通りたくなくても、どのルートで行くにもここを通らなければ行けない。

 そう、山南さんがいた大津に着いた。

 山南さんが休んでいたお茶屋さんもそのままあり、今にも山南さんが座っているような錯覚がおこる。

「山南さん、ここにいたのか?」

 私の顔を見てわかったらしく、土方さんがそう言った。

 私はうなずいた。

「よし、ここでちょっと休息を取ろう。かなり速足でここまで来たからな、疲れているだろう」

 山南さんがいたところじゃない別な茶屋で休息をとることにした。

「俺は、ちょっと琵琶湖でも見てくるかな。お前も来るか?」

 土方さんに言われた。

 そう言えば山南さんは琵琶湖が綺麗だったから、大津で止まってしまったと言っていたなぁ。

 そんなことを思いながら、

「一緒に行きます」

 と言った。


 琵琶湖は、春の日差しをはねかえしてキラキラ輝いて綺麗だった。

 山南さんも立ち止っちゃうわけだよね。

 もうちょっと進んでほしかったのだけど。

「綺麗だな」

 土方さんが一言そう言った。

「山南さん、見つけた時はどうだったんだ?」

 どうだったんだって言われても……。

「逃げなかったのか?お前らの顔を見て」

 逃げるどころか、普通にお茶屋さんにいた。

「お茶屋さんでお団子頼んでくれました」

 はあ?っと聞き返されるかと思っていたけど、

「山南さんらしいな」

 と、土方さんは笑っていた。

「俺は、お前らのことだから、山南さんを逃がすだろうと思っていた」

 土方さんは、遠い目で琵琶湖を見ながら言った。

「逃がそうと思っていました」

 私も琵琶湖を見ながら言った。

「でも、山南さんは最後まで逃げませんでした」

 逃げてほしいと思い、あの手この手やってみたけど、山南さんの意思はとっても硬かったのだ。

「山南さんは、切腹を覚悟して屯所を出たのだろう」

 今になれば、それがわかる。

 それでも、切腹してほしくなかったなぁ。

「江戸にいる平助に報告したのか?」

「お師匠様が、江戸によって話しすると言ってました」

「そうか、それならいい」

 何がいいんだろう?

「山南さんと平助は同門で仲が良かったからな。早く教えてやりたかったが、移転とかで忙しくて文が出せなくて教えることが出来なかったんだ」

 そうか。お師匠様に頼んでおいてよかった。

「そろそろ行くぞ。ゆっくりできる旅じゃねぇからな」

「はい」

 山南さんがいた大津宿を後にして、江戸に向かって歩き始めた。


 醒井宿さめがいしゅくという宿場町に着いた。

 今夜はここに泊まるらしい。

 中山道を通るのは往復で2回で、今回は3回目なんだけど、今回が一番速いペースかもしれない。

 やっぱり土方さんがいるからか?

「おい、水を飲みにいかねぇか?」

 突然土方さんに言われた。

 えっ、水?

「酒じゃなくて、水ですか?」

 思わず聞き返してしまった。

「ばかやろう、飲むことしか考えられんのか。ここの水は、日本武尊やまとたけるの伝説があるらしいぞ」

 そうなのか?

 話によると、日本武尊は荒ぶる神を退治しに出かけたのだけど、発熱してしまい、やっとのことで、醒井の湧き水のところまで来て体を冷やしたら、気力まで回復したという伝説があるらしい。

 ちなみに、平成の名水百選に選ばれている。

 ついでに私のこのたびの疲れも回復させてほしいわと思いながら、土方さんと水を飲みに行ったのだった。


 湧き水がわいているところまで行く途中に、地蔵川と言う川があったのだけど、水草がたくさん川と一緒にそよいでいた。

「たくさん水草がありますね」

「ああ、梅花藻ばいかもだ。綺麗な水の中じゃねぇと育たねぇらしいぞ」

 そうなんだ。

「こんなにたくさんあると言う事は、綺麗な水なのですね」

 ますます、湧き水が楽しみになってきた。

 ちなみに、この梅花藻は7月から8月ぐらいに梅のような花が咲くらしい。

「それにしても、土方さんはなんでそういうことを知っているのですか? もしかして、ものすごく物知りとか?」

「お前、もう何回ここを通っているんだ?」

「今回で、4回目ですかね」

「4回も通っていてわからんか? 普通ならわかるだろう」

 そ、そうなのか?

 そんなこと全然気にしていないから……。

「下諏訪宿に温泉があるぐらいしかわかりませんが……」

「お前っ……」

 土方さんに絶句されてしまった。

 そんな絶句しなくても……。

 そんなことを話しながら歩いていると、湧き水のところに着いた。

 一口飲んでみると、冷たくておいしかった。

「美味しいですね。水道水と全然違う。カルキ臭が無いですもんね」

「かるきしゅう?」

 あ、この時代になかった言葉だ。

「私の知っている水と味が違うと言う事ですよ」

「そりゃそうだろう。伝説のある湧き水だからな」

 そう言えば、カルキ臭にはつっこんできたけど、水道にはつっこんでこなかったなぁ。

 なんでだろう?

 もしかして、土方さんは水道を知っているとか?

「水道水と違いますね」

 水道水?とつっこんで来たらどうしようと思いつつも、さっきつっこんでこなかったことの方が気になったので、何気なく言ってみた。

「そりゃ違うだろう」

 やっぱり、突っ込んでこないぞ。

「土方さん、もしかして水道って知っているのですか?」

「お前、俺を馬鹿にしているのか?」

 ええっ!知っているのか?

「江戸にも水道があるだろう」

 ええっ!そうなのか?

 後で調べてみると、なんと、家康の時代から水道があったらしい。

 今の水道と違って、井戸まで水をひいて、そこから水をくみ上げて使っていたらしい。

 江戸にも水道があったなんて、驚きだった。


 湧き水を堪能して、宿に戻った。

 宿に戻ると、伊東さんと斎藤さんが仲良く話をしていた。

 斎藤さんは、のちに土方さんの間者として伊東さんと一緒に隊を出るんだよなぁと言う事が頭をよぎったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ