京に到着
京へ着き、八木さんという人の家にお世話になることになった。
やっと着いた。
そう思って荷物を整理していると、新徳寺と言う近くにある寺に集まるように言われた。
着いたばっかりなのに……。
そんなことを思いながら、みんなでその寺に行った。
全員揃うと、清河八郎という人が前に立った。
前に近藤さんが、『反幕府なのに、どうして幕府の作る組織に参加しているのだ?』と疑問に思っていた人。
そして、この浪士組を作ることを考えた人。
その人が、紙を持って文を読み始めた。
なんか難しいことをずらずらといい、疲れているときにそんな難しいことを言われると、当然眠気が襲うわけで、私はウトウトしながら聞いていた。
ただ、夢の中で、
「幕府の禄を食むものではない」
とか、
「天皇の命令を妨げるものは……」
とか聞こえた。
いけない、寝てたらいけない。
と、無理やり顔を起こして目を開けたとき、清河八郎という人が怖い顔してみんなを睨みつけ、
「ご異存はござるまいな」
と言っていた。
思わず、なにが?と言いそうになってしまった。
そして、署名を求められたので、名前を書いた。
もちろん筆で。
普段筆なんて使わないから、書きなれない手つきで書いた。
「疲れているときに、難しい話されるとどうもね」
横にいた沖田さんがつぶやいていた。
「沖田さんもそう思います? 私もです」
「蒼良は、コックリコックリってやってたね」
沖田さんは、楽しそうに言っていた。
「この状態で、ああいう話されると眠くなるじゃないですか」
「そりゃそうだけど、僕は蒼良を見てると楽しくて眠くならなかったよ。話は聞いてなかったけどね」
おいおい、話聞けよ。
と思ったけど、私も人のことを言えない。
「案外、それが目的だったかもしれないぜ」
土方さんがそう言った。
「疲れているところ集めさせるのが引っかかる。さっきの話も、何か気になるところがいくつかあるしな」
そう言うと、土方さんは、難しい顔して考え込んでしまった。
「ま、難しいことは、土方さんに任せればいいよ」
沖田さんはそんなことを言っていた。
それが一番いいかも。そんなことを思いながら、八木さんの家に戻った。
次の日に、その署名したものを朝廷の組織の学習院というところに提出しに行ったらしいけど、私は詳しいことは知らない。
ただ土方さんだけ悩んでいた。
浪士組、誰を警護する?
みんなが京についてすぐに、清河八郎は壬生の新徳寺にみんなを集めます。
江戸を出る時は幕府の組織として出発したのですが、ここで
「本当の目的は将軍警護ではなく、尊王攘夷の先鋒にある」
というようなことを言いだします。
清河八郎は、幕府の組織として集めた浪士組を、自分の組織として動かそうと考えていたようです。