大津
そしてまた数日が経過した。
いよいよ明日、京へ着くという日に事件がおこった。
なんと、私に色々優しくしてくれた山南さんがキレたのだった。
事の発端は、同じ浪士組だけど違う隊の人に突然、
「あんたのところの隊は、乱暴者が多くて問題も多く迷惑だ。ちゃんと取り締まれ!」
と、言われた。
いや、乱暴者って、芹沢さんだけじゃぁ……。
よその隊と比べても、そんなに迷惑かけてないと思うけど。
本庄宿の芹沢さんファイヤー事件は別として。
そう思っていたら、なんと、山南さんが、
「うるさいっ! 何が乱暴だっ! 俺に恥晒そうとしてそう言ってんだろうっ!」
と、怒り出したのだ。
えっ、あの山南さんが?目の前の光景が信じられなかった。
「山南さん、あの人と知り合いなのですか?」
土方さんに聞いたら、
「さぁ、わからん」
と言っていた。それを聞いて、なおさら信じられなくなった。
顔見知りで、過去に何かあって、その恨みを晴らそうとして相手が喧嘩売ってきて、それを山南さんが買ってしまったならわかるけど。
二人はいよいよ殴り合いするか?というところで、浪士組の取締役の人たちが止めに入ってきた。
「二人とも、頼むから、京までお互い口を聞かないで行ってくれ」
要は、問題を起こさないでくれと頼んでいるみたいだ。
浪士組は、個性的な人たちの集まりでしかもこの人数だから、色々問題があってやっとここまで来たのだ。
そして、その取締役の人は山南さんに、
「京に着いて三日以内に村上の処置を下すから、頼むから、ここは穏便に」
といった。
村上さんって言うんだ、喧嘩の相手の人。
やっぱり知らない人だな。
山南さんは、その言葉でようやく怒りを収めた。
「大丈夫ですか?」
と、私が聞いたら、
「ついカッとしてしまって。大人げないことをした」
「いや、私が言われても、そうなってましたよ。山南さんは悪くないですよ。ところで、あの村上さんという人、知り合いですか?」
「あいつ、村上というのか」
知らなかったらしい。
じゃぁ、なぜ喧嘩を?と、ますます謎は深まったのだった。
という訳で、本当に色々あったけど、やっと京へ着いた。
しかし、京へ着いてからさらに色々とあったのだった。