1日目~仕事~
「こんな感じかな」
散髪屋から出てきたリーナが聞く。
髪は肩まで切られているが、ほかは別になにも変わらない。
「ほんとに髪切っただけだな。」
「だってほかにやることないじゃん。」
「よし、いくか。」
ジランがベンチから立ち上がり、横に置いてあったリュックを背負いながら言う。
「行くってどこに?」
リーナもジランの横に置いてあったリュック
を背負いながら聞く。
「適当に。まだ飯食ってないだろ。」
時計は十二時を指している。
それを見ながらジランは言う。
「お金は大丈夫なの?」
歩き出したジランを追いながら、リーナは
聞く。
「大丈夫だ。」
五分くらい歩いたあと、
「ここでいいか?」
ジランが近くの店を指さしながら言う。
「別にどこでもいいよ。」
「じゃ、入るか。」
店の中はけっこうがやがやしていた。
「ご注文はなににしますか?」
「炎鳥の唐揚げで。」
「私は凍鳥ので。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
そういうと店員は調理場に入っていった。
調理場は客から丸見えの状態で調理されて
いるため、客は安心して食べられる。
「これなら毒の心配もないってことだな。」
「心配あったの?」
リーナが少し驚きながら聞く。
「俺たちにはないよ。ただ他の客は知らないがな。」
ジランは冷静に言う。
「されはそうと、あんな高いの頼んで良かったの?」
リーナは今後が心配だ。
「大丈夫だ。働いて稼げばいいんだから。」
「何するの?」
「いろいろ。」
「お待たせしました。炎鳥と凍鳥の唐揚げ
です。」
ジランがはっきりしない仕事の内容に少し
不安を持ちながら、唐揚げを食べる。
「おいし。」
「一万五百ゼンになります。」
「はい。」
ジランは一枚の紙と五枚の硬貨を置く。
「丁度いただきます。」
「すみません。ここに依頼受けるだけで金が貰える場所がありませんか?」
作業している店員にジランが聞く。
「ありますよ。でもモンスターとか盗賊の退治がほとんどですね。」
「誰でも依頼を受けられますか?」
「ええ。大丈夫です。でも危ないですよ。
はい、次お越しになられたときに10%割引
になります。ありがとうございました。」
「こちらこそ。」
ジランは割引券をもらいながら店から出ていく。リーナも後からついてくる。
「依頼うけるの?」
「そうだ。いやか?」
「別にそうでもないよ。」
「じゃあ行くか。」
「場所わかってるの?」
「あれだよ。 」
「え?」
リーナとジランは話をしている間一歩も歩いていなかったのだが、それは目の前にあった。
「あそこが俺たちの仕事場。店と向かい側
にあったんだよ。」
入り口の上にある看板に大きく「依頼うけられます。」と書かれている。他に書くことは
なかったのか?
「とりあえず中に入るか。」
ジランは木の扉を開けるとそこはにぎやかな
ところだった。昼から酒を飲んでいる人
もいる。
「さて、どんなのがあるかな。」
ジランとリーナは中に入って行き、依頼
が貼られている木のボートで足を止める。
「これがいいか。」
ジランは適当なのを手に取る。
ー山賊討伐依頼ー
そう書かれていた。
「難易度はFか。」
依頼はSからFまであり、その上もあるのでは
ないかと噂だ。
「こんなの受けて大丈夫なの?」
リーナは心配になる。
「この町に来てから心配し過ぎだぞ。
大丈夫だって。」
ジランは受け付けそれを持っていきに行き、
「これを受けさせてください。」
そう言った。
「難易度Fの山賊討伐ですね。分かりました。三日以内に完了してください。完了したら
これを打ち上げてください。」
そういって渡されたのは打ち上げ閃光弾。
「わかりました。明日からでいいですか。」
「分かりました。じゃあ完了は四日後の2時
でいいですか。」
「はい、お願いします。」
そういうとジランはそこから出ていく。
リーナはあとからついていく。
「さてと。今日の宿を探すか。」
ジランはすこし依頼を受けた場所から離れて
言う。
「どこでもいいんじゃないの?」
リーナはもう適当になっていた。
「まあ、そうなんだけどな。」
「あれはなに?」
リーナは人混みを指さしながら言う。
「行ってみるか。」
人混みの中で行われていたのは決闘だった。
「この人混みはこれで集まった野次馬か。」
「そうみたいだね。」
ジランとリーナは少し離れたところで話している。
急に集まっていた野次馬たちが叫んだ。
決着がついたようだ。
「所詮こんなものか。」
一人の男が人混みから出てくる。
「ん?」
その男がジランの前で止まる。
「お前俺と決闘しろ!」
「断る!リーナ走るぞ」
男が申し込んだ決闘をすぐに断り、リーナの手を握り、逃げ出そうとするジランの肩
男が掴む。
「なぜ逃げる?」
「面倒事はゴメンだね。」
肩を掴まれているためジランは逃げられない。
「なぜだ?お前は俺よりずっと強いではないか。」
「俺はお前より強くねーよ!手を放せ!」
ジランは必死である。
「なぜそう自分のを隠す?」
「隠してると思うか?
お前より力があったならこの手ふりほどいて逃げてるよ。」
ジランは男の手を叩きながら、もう逃げれないなと内心がっかりしながら言う。
「ふむ。それもそうだな。ならお前から感じるこの力は何なんだ?」
「俺に聞かれても知らないよ。」
「ねぇ、もういい?」
二人の会話を聞いていたリーナがうんざり
といった様子で聞く。
「そもそもお前誰なんだよ。」
「他人の名を聞くときは自分からなのれ!」
「お前からからんできたんじゃないか。とりあえずこの手どけろ。」
「おお。そうだったな。」
そう言いながら男はジランの肩から手をどける。
「で、誰なんだ?」
ジランはもう逃げる気は起こらないようで、
男からどうやって離れるか考えている。
(どうするかな。)
「俺の名はキリだ。」
「じゃあきり。もういいか?時間がないんだ。」
ジランは早く宿を探したかった。そんな時にキリにからまれたのだからいらいらしている。
「駄目だ。決闘するまではな。」
「じゃあ明日から山賊退治をするから一緒
に来れば俺の実力が分かるさ。」
「そうさせてもらう。どこに行けばいい?」
「町の門の前だ。十時集合な。」
「分かった。ではこれにて失礼。」
キリはそういうと、どこかに去っていった。
「良かったの?」
キリが見えなくなった後リーナが言う。
「いいんだよ。戦力が増えるからな。さてと。さっさと宿屋を探さないとな。」
ジランが歩きだし、リーナが続く。
「ここがいいな。」
ジランが見つけたのは、ぼろぼろの宿屋。
「お昼は豪華だったのに宿はなんでこんななの?」
「昼は体力を上げるためだよ。あれを食べると体力が増すからな。」
「食べるだけで体力がつくの?」
「正確に言えばつきやすくするんだよ。
飯以外はできるだけ節約したいしな。とにかく、入るぞ。」
「うん。」
ジランとリーナはぼろぼろの宿屋に入って行く。
「夕食、朝食なしで一晩一部屋千ゼンになります。」
「ほい。」
十枚の硬貨を受け付けの机の上に置く。
「ありがとうございます。二階に部屋が
あるのでご自由にお使いください。」
「鍵はないんですか?」
「部屋の扉にささっています。」
「わかりました。」
(ずいぶんと適当な宿屋だな。)
そう思いながら二階に行くとジラン達以外
の客は誰もいないようだった。
「ここで大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。」
リーナが心配そうに言うがジランは普通に答える内心は大丈夫か自分も心配なのだが。
「ここでいいか。部屋は一緒で良かったよな?」
「うん」
ジランが適当な部屋を選び扉にささっている
鍵を引っこ抜き、中に入る。
中はけっこうきれいだった。
「へぇ。けっこうきれいだな。鍵も普通に抜けたし。」
ジランは部屋の状態が結構良かったので
安心した。蜘蛛の巣だらけだったらどうしようと思っていたのだ。
「そうだね。」
リーナもジランと同じ理由で安心していた。
ジランとリーナはとりあえず、リュック
を降ろし、机の横の椅子に座る。
部屋は和室のような感じだ。
「これから外で食べるの?」
リーナは昼店で食べたので、また店で食べるんじゃないかと思い聞く。
「いや、夜は余っている食料を食べる。」
「なんで?」
「疲れたから。そっちのほうが楽だろ?」
「それもそうだね。いろんな情報聞かなくてよかったの?」
「もう疲れたからいいよ。」
「そう...」
町に来るとき少しがんばって歩いたことを
後悔する。
「とりあえず、食べよう。」
「うん。」
ジランが食料を机におきながら言う。
食料の大半は缶の中に入っている。
「もうそろそろ風呂入って寝るか。」
夕食を食べ終わりジランがいう。現在時刻
九時。
「早すぎない?」
「明日は山賊退治だ。早めに寝ないと。
やることもないだろ。」
「うん。」
「先入るか?」
「うん。」
リーナはそういうとリュックの中から
洗面道具を取りだし部屋から出ていった。
「ふう。」
ジランがため息をつく。
(明日は順調にいくだろうか?)
そんなことを考えながら布団を敷く。
(まあ、大丈夫だろ)
ジランは考えるのを止める。
十五分ぐらいするとリーナが上がってきた。
「あがったよ〜」
「じゃあ、入ってくるよ。」
ジランは立ち上がりながら言う。
「いってらっしゃい。」
「ああ。」
ジランは洗面道具をリュックから取りだし、
リーナに返事をしてから部屋を出る。
浴場はきれいだった。(以外ときれいなもんだな)ジランはそんなことを思いながら浴場に入り、十分くらいで上がってきた。
「早かったね。」
「お前もいつもに比べたらだいぶ早かっただろ。」
「明日は山賊退治だからね。」
「そうだな。もう寝るか。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
ジランは話が終わると、部屋の電気を消した。