表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

エピローグ 俺はキサマを許さない!

 神である俺の世界に、人が居なくなった。

 カゴの鳥が逃げてった。

 フィクションさえも思い通りにならないか。

 どこまで悲しいヤツなんだ俺は。

「小説なんて、もう書かねぇ! くそつまんねぇ!」

 俺は言って、立ち上がって、天井に向かって片手を伸ばしてストレッチ。ひとりぼっちの部屋は、広くていいな、などと思いながら反復横とびを開始してみた。

 我ながら意味不明な行動だぜとピョンピョンしながら心の中で自虐的に笑ったその時だった。

 突然、部屋の扉が開いた。何事かと思い、顔を上げる。

「私があなたを修正してあげる!」

 現れたのは謎の女。知らない女だったが、すっげぇ好みのタイプだった。だから俺は、一瞬で恋に落ちた。反復横とびは、自然と止まっていた。

「修正……? 何?」

「そそそ、そんなことより契約しましょう」

 何を言ってるんだかサッパリだった。何故か恥ずかしそうに顔を赤くしてて可愛かったけど。

「契約? よくわからないけど、どういうこと?」

 俺が訊ねたところ、

「好き合っていれば、契約をすることになるんです」

 とか言いながら、婚姻届を差し出した。

「ぬぁ、これは……」

 何だこれは、何なんだ。この俺にも、ついに春がっ、などと思い、俺は焦った。

 しかし、断る理由はない。俺は彼女に恋してしまったのだから。

 心を奪われるというのは、こういうことだったのか、と強く理解した。

 今まで考えていた全てが吹き飛んでしまうほどの、強い想い。

「ああ、契約をしよう」

 俺が言うと、超可愛い女は、

「じゃあ、さっそく儀式をしましょう」

 そう言ってすぐ、手の甲を刃物で浅く切った。流れ出す、血。

「ちょっ、何して――」

 一瞬で完成した魔法陣。楕円の魔法陣。何だか、こんな場面をどこかで……。

 二メートルほどの赤いヘキサグラムの陣に立ち、二人、見つめ合う。

 どこで、見たんだっけ……。

 彼女と目が合った。

 目が合ったことで、俺は彼女のことしか考えられなくなった。

 どれほど色々なことを考えていようと、彼女を見れば、すぐに全てが吹き飛ぶ。

 数十秒前の記憶も、消え失せてしまうくらいに、それは強烈な恋だった。

 好きだ。大好きだ。

「あなたは、私だけを愛しますか?」

 女は言って、

「愛します」

 俺は答える。心から。

 本当に、愛する。この天使のような彼女だけを。

 しかし彼女は消滅した。

「な……何で……こんな……嘘だ……」

 泣いた。

 こんなに愛しているのに。何故か、消滅した。

 何故消滅したのか、考えた。

 ――その時、俺は気付いたんだ。

 こんな展開、どこかで見た気がする。

 そうだ、あれは、俺の素人小説。

 俺という名の神が、誰かを操って楽しむという……。

 だとしたら俺は……操られているのか?

 俺が誰かを操っていたように、誰かが俺を操って楽しんでいるのか?

 だったら、この世界は操られているヤツばかりだということになるじゃないか。

 操っている野郎……。

 そう、それが、神……か。

 神!

 ちくしょう神ちくしょう!

「俺は気付いてしまった。世界を操る存在に。ならば! 俺はこの世界の神とやらに抗ってやる! 聞いてるんだろ? 神とやら! 俺は、キサマの世界をぶっ壊してやる!」

 返事は無かった。

 それでも、俺は全力で叫ぶ。天井に向かって。

「俺はキサマを許さない!」

 孤独な俺の戦いが、今、始まる――。






【おわり】




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ