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宝石病の姫君と夜明け前の誓い  作者: 藍凪みいろ


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第8話 ルディアの街


 翌日。

 ラティアとディークは目的の地である(ベルン)に早く着く為の近道として通ることを決めたフィリアント砂漠へと歩みを進めていた。


「何がお腹が空いてきたわ」

「そうですね。あと少し歩けばルディアという街があるみたいなので、そこでお昼にしましょう」


 フィリアント国の南に位置する大きな(ルディア)は色鮮やかな民家が立ち並び、港も近い為、漁業、他国との貿易が盛んな街である。


 ラティアとディークがそんな(ルディア)に着いたのは昼過ぎ頃であった。


 お洒落なカフェテリアに入り、一息ついていたラティアとディークの耳に後ろの席に座り、会話をしていた若い男性二人の声が届く。


「俺の従兄弟がさ、宝石病にかかってしまって、一週間前亡くなったんだ」

「そうだったんだな。宝石病って、治し方が解明されていない病だったよな?」

「ああ、身体が全て宝石になってしまったら、身体が割れるように痛みだし、最後は……」

「跡形もなく消えてしまうんだろ?」

 

 男の言葉に従兄弟が宝石病にかかり亡くなってしまったと言った男は強く頷く。

 ラティアとディークは頼んだパフェとパンケーキを口に運びながら、その話に耳を傾けていた。

 


 お昼を済ませ、カフェから出たラティアとディークはまた歩き始める。


 ディークは店内の中で話していた男二人のやり取りをラティアが気にしているかもしれないと思い、そっと隣を歩くラティアの顔色を伺う。


 そんなラティアは隣を歩くディークが、自身ラティアのことを心配して顔色を伺いながらこちらを見ているとは知らずにいた。

 

 ディークの思っていた通り、ラティアは気にしていた。

 それは自分が犯されている宝石の病が命に関わる極めて危険な病であるとそう再認識したからでもあり。


 もしも治せるという希望がなくなってしまったら自分は近い将来、死ぬということを受け入れて、生きていかなければならない。

 そう改めて思い知ったからでもあった。



 その日の夕方。

 ラティアとディークはフィリアント砂漠に着く。


「着いたわね」

「はい。今からフィリアント砂漠に入っても、日が変わる前には着けますが、どうしますか?」

「そう、じゃあ、行きましょう」

「わかりました」


 フィリアント砂漠からラティアとディーク。そんな二人の目的の他であるベルンまでは、然程、離れていない為、今からフィリアント砂漠に入れば、日が変わる前には着くことが出来る。


 大体、約1時間ちょっとくらいの距離だろう。

 ラティアとディークはフィリアント砂漠に足を踏み入れた。


 茜色に染まる空の下、二人の影が砂漠の地にゆらゆらと揺れ動いていた。


✴︎


 フィリアント砂漠に入ったラティアとディークは歩きながら他愛のない会話をしていた。


「他国から見る夜空も綺麗だけれど、やっぱりラピティーア国から見る夜空の方が私は好きだわ」

「わかります。自国の夜空が一番綺麗に見えますよね」

「ええ、そう言えば、ディーク、貴方は何処出身なの?」


 ラティアは隣を歩くディークを横目に見ながら問う。


「俺は、サティアーヌ帝国の帝都出身です」

「サティアーヌ帝国。人前で肌を見せてはならないという風習がある国ね」

「はい。よくご存知でいらっしゃいますね」

「ええ、知っているわよ。私を誰だと思っているの?」


 ラピティーア国の第一王女であるラティアは、王族として恥がないように幼き頃から武芸、作法、学問、芸術など。

 様々なことを学び、身につけてきた。


 その中に他国との交渉の際、頭に入れておかなければならない必要最低限のことは幼き頃に徹底的に入れ込まれたのだ。

 

「はは、そうですね。知っていて当たり前のことでした」


 ディークは可笑しげに笑う。

 そんなディークに釣られるようにラティアもくすくすと声を漏らす。


「目的地に着いたら、私の病は治るのよね」


 ラティアは不安が少し混じっているであろう落ち着いた声色でそう呟く。

 ラティアの病が絶対に治ると言える程の自信がディークにはなかった為、推し黙ってしまう。


 治せるとは思うが、もし、治すことが出来ない状況に陥ってしまったら、その時は。


 ディークはもしもの事を考えて決めていたことが一つあった。けれど、それは今、目の前にいる彼女に言うべきことではない。


「ディーク?」

「え……? あ、はい。何でしょう?」

「この、フィリアント砂漠の砂に混じっている白い砂には、女神の祈りが込められているという噂が存在するみたいなのだけれど、貴方は知っていた?」


 ラティアの問い掛けにディークは足を止めて首を横に振る。


 そんなディークを見て、ラティアも足を止める。そして、ラティアはその場に座り込み、砂漠の砂を両手で掬い上げる。


 ラティアの両手の隙間から溢れ落ちる白い砂。

 そんな白い砂が夜の月明かりに照らされて、きらきらと光り輝いている事に気付き、ラティアは声を漏らす。


「綺麗……」

「ですね」 


 ラティアとディークの声は心地良い夜の風に溶けるように消えていく。


 そんな二人の姿を見守るように夜の空に浮かぶ月は砂漠の砂とラティアとディークを姿を照らしていた。


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